第113話 パピルス紙と布は兄弟のようなもののようだ

 さて、かなり時間はかかったが羊皮紙は無事にできた。


 まあ、祭りに時に生贄に捧げられた羊以外を潰すつもりはないので、羊皮紙を多量には作れないが、羊皮紙はけっこう劣化しやすく、特に高温は致命的で30℃以上で元に戻らないような変化が発生し、湿度の変化にも弱く、湿度は低いと乾燥して裂けやたわみが現れ、逆に湿度が高いと波打ちが発生したりと結構デリケートだ。


 さらにカビや虫食いなどにも弱く、日常的な使用にも弱い。


 なので石灰岩を擦って石板にしたものや粘土板を釜で焼成したものにも地図をかいてどれかが破損しても地図がなくならないようにした。


 ただ石板や粘土板も落として割れる可能性があるので、もう少し他の手段もほしいと考えた。


 まず思いついたのは古代エジプトで使われていたパピルス紙。


 しかし、スマホで調べてみたところパピルス、その正式名称は「シペラス・パピルス」、和名は「カミガヤツリ」だが、これらは本来コンゴやエチオピアのような熱帯アフリカが原産地で、ナイル川のあるエジプトでは手に入るが、ヨルダン川には存在しない。


 なのでパピルス自体が入手できないのでこれは諦めざるを得ない。


 パピルス紙自体は割と簡単に作れるっぽいけどな。


 パピルス紙の作り方としてはまずパピルスの茎を根本からカットし、作りたいサイズの紙の縦横の寸法に合わせて茎を切る。


 縦15センチと横10センチならそれぞれを何本かずつ。


 その後、三角形をしている3辺の皮を刃物で剥ぎ、2ミリの厚さにスライス。


 ちなみに無味だがパピルスの汁は結構エジプトでは飲まれていたらしい。


 で、2ミリスライスした茎を麺打ち帽のようなローラーでつぶし、水分を出してパピルスの繊維を薄くする。



 そして、水を入れた容器に、茎を浸けて柔らかくする。


 そしてそのパピルスを水から取り出しパピルスの水は絞らずに、そのまま隙間があかないように敷いた板の上に格子上に並べ、パピルスの上にも板をおいて更におもりを乗せてをパピルスをプレスし、ある程度時間をおいたら乾燥させて端をナイフなど切って揃えてトリミングすればパピルス紙はおおよそ完成。


 それから文字などを書くために必要な表面処理として軽石や貝殻などで磨いて鏡面を平らにすれば終わりだ。


 こういったようにパピルス紙は羊皮紙に比べれば作る手間自体はそこまでではないし、和紙のように植物を砕いたパルプをすいて紙にするのに比べると原材料の植物や水を多量に使うわけでもないので便利ではある。


 ただ歴史的に、パピルスが羊皮紙にとって代わられた要因は「作りやすさ」ではなく、原料であるパピルスの入手がアフリカ以外ではかなり難しかったことと、素材の丈夫さで羊皮紙のほうにメリットがあったかららしい。


 パピルス紙ではない和紙のような紙を葦の繊維で作ることはできるが、石器時代の技術や道具では植物のパルプを作ったり簀桁すけたを作るのはほぼ無理なので諦めざるを得ない。


 で、少し考えたが植物の繊維を縦横にに格子状にくぐらせて平面状にして作るものといえば布だな。


 なのでもともとパピルス紙は布や網の延長として作られたのかもしれないと思ったりもした。


 で、布で地図を作るとしたら白地に黒い糸で刺繍をして作ればいいんじゃないかと思いついた。


 亜麻の布を織って、煤で色を付けた糸でエリコから死海周辺のリゾート地の地図を作ってみたがこれならいい感じだろう。


 すでにエリコの周りはヨルダン川から溢れた水によって水に覆われているので、農作業や狩猟もできず春の収穫も終わって小麦や大麦は十分あるから皆のんびり過ごしている。


 そんな状態なこともあってマハマート・マインの温泉やエン・ゲティの泉などに向かってちょっとしたバカンスを楽しみに旅行に行くエリコの住人も増えてきた。


 キルベト・クムランは死海に塩を取りに行くついでに立ち寄るやつもいるようだ。


 今のところはまだいいけどももう少し人が増えてきたら死海西岸の真ん中あたりにあるエン・ボケックや死海の南端にあるエン・タマルを目指してみるのもいいかもな。


 エン・ボケックは21世紀ではリゾートホテルの林立する場所で、エン・タマル花にもないただの鄙びた田舎の農村らしいが、エンという泉を示す単語があるからそこにも水源があるんだろう。

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