第66話 死と再生の大地母神はもっとも古くから人間に崇められた神様の一つ
さて、春から初夏にかけての季節が穀物や豆などの収穫の季節だ。
この時代の新年はいつなのかというと、麦の種まきを行う時期。
そして春と秋には収穫祭だな。
実際には世界各地では春分や夏至、冬至などを正月とすることが多かったんだ。
しかし、グレゴリオ暦ではキリストの生まれた12月25日から数えて8日目が一年の始まりの1月1日とされたので天文学的にも農業的にも中途半端な時期になってるんだけどな。
この時代において雨が降る冬から春が生命が生まれる時期で、麦などを収穫した後に大地が乾燥する季節は生命が死を迎える季節となる。
収穫祭は麦などが無事に収穫できたことを祈る祭りでもあり、その後乾きによって死にゆく大地の再生を祈る儀式でもあるわけで、初夏に大地に落ちた種はそこで一度死を迎えてから冬の雨で蘇って再び命を得て芽を出して再生するというわけだ。
それとともに冬の間に死んで土に帰っていった乳幼児などが再び産まれてくることを願うものでもあると思う。
狩猟が食糧確保の時代では季節は移動に関係するものの、さほどに気にかけれられるものではなかったが、どんぐりやナッツを食べるようになっって定住も行うようになった後は、食料確保のための季節などは重大な関係性が出てきたわけだ。
そして農耕を開始した後の人間が理解したのは植物の恵みが得られるのは日照や雨等による水、季節によって得られる食べ物が違うということがわかったあとは、
大地母神は人間女性の母性的な特徴の中でも、さらに臀部や乳房がその再生産出の源泉と想像されたため、臀部や乳房を極端に誇張した母神像として偶像化されるわけだ。
この時代でも粘土の大地母神はジッグラトに安置され
ている。
ちなみに地母神に生命を与える雨は天空の神として男性的に擬人化され、雨は精子として大地に降り注いで新たな生命を大地に宿らせるとも考えられている。
それはそれとして祭りの日はみんなでご馳走を用意して盛大に祝う。
すでに先に収穫されている大麦を使ったビールやワイン、ナツメヤシのヤシ酒などが振る舞われ、大麦をくわえて発酵させたパンや、発酵させていないチャパティのようなパンをみんなで食べる。
今では干し葡萄などのドライフルーツやナッツがくわえられていたりもするぞ。
「んーこの胡桃パンうまいな」
リーリスが焼き上げてくれた発酵させた胡桃パンはすごく美味い。
「おいちー」
アイシャもうまそうにパクパク食べている。
「あらあら、そんなに急いで食べなくても大丈夫よ」
息子をあやしながらアイシャの面倒を見ているリーリスはそういってアイシャをほほえみながら見ている。
「あー」
基本的に乳幼児は集団と一緒にしないのだが、病弱でなければ食べ物を食べることも出来る幼児は祭りに参加できる。
流石に生後一年ぐらいは難しいがな。
リーリスはチャパティに神への捧げ物とされた山羊を解体したものの肉を挟んで食べている。
飲み物は俺とリーリスはビール、アイシャは水、息子は母乳を水分補給のために飲んでいる。
「たまにはこういうのもいいわよね」
そして甘いメルスを食べる。
小麦粉に干しぶどうや干したなつめやし干しいちじくなどのフルーツや、ナッツのピスタチオ、コリアンダーやにんにくを加えて、焼いた焼き菓子だ。
「ん、あまくてうまいな」
「あまーい」
レンズ豆やひよこ豆に玉ねぎやにんにくに野鳥の肉をくわえて煮込んだ
まあこの時代調味料はないに等しいので味付けはあっさりしているけどな。
それにさまざまな種類のチーズ。
フレッシュチーズが多いがそこそこ熟成されているものもある。
「チーズはパンに挟んで食べるとうまいな」
「ヤー、くさーい」
アイシャはチーズは好きじゃないようだ。
そして踊りが始まった。
「いってくー」
「おお、がんばれー」
「がっばってねー」
子どもたちの輪が作られて、歌を歌いながら踊りを始める。
みんな楽しそうに踊っているな。
穀物や豆の収穫は無事に終わって、収穫という労働からの解放の瞬間でもある収穫祭はものすごく盛り上がった。
まあ、この収穫祭には、普段は大した農作業はしていないんだが、穀物や豆の収穫や脱穀は流石に大変だからと住民みんなへの慰労の意味もあるんだけどな。
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