第21話 これもレベルアップの恩恵、いや努力か

「これよりアレス式強化訓練その3、実戦訓練を行う。これは諸君らの卒業訓練でもある。今までの訓練での知識、経験をもとに頑張ってもらいたい。」


「ついに実戦か....。」


「実戦て、なにと戦うのよ。」


「まさか....アレスさん....。」


「そのまさかだ、今回の実戦訓練は俺と行う。」


『っ!?』


全力は出さないが、こいつらは仮にも勇者パーティー。

それなりの対応をさせてもらおう。


「安心しろ、1人ずつではなく3人同時に行う。君たちが3人で協力して戦っても何も問題はない。」


元々こいつらは連携が取れていた。

きっとうまく連携できればこの試験は突破できるはずだ。


「そして今回の訓練を無事クリアできれば、報酬をやろう。」


『報酬?』


「お前らの言うことを何でも1つ聞いてやろう。」


俺をパシらせるということが可能になる。

こいつらのやる気も上がるはずだ。


「アレス君がなんでも.....。」


「絶対に勝ってやるわ。」


「ふふっ、負けられませんね。」


俺はブーヴィーを構える。

お前たちの実力見せてもらおう。


「さあ、いつでもかかってこい。」


「っ、アリサ、ヘレナ、行くぞ!」


「ええ、アレスに敗北を教えてあげるわ。」


「アレスさんには悪いですが、勝たせていただきます!」


俺からは仕掛けない。

こいつらの出方をうかがおう。


「この者たちに祝福を、『身体強化』!」


なるほど、まずはバフをかけて戦力増強といったところか。


『サンドウォール!』


「そこ!」


俺の視界を遮り、そこをセリスで攻撃しようとしたといった作戦か。

だが甘いな。


「っ!?」


俺はセリスの攻撃を避け、ブーヴィーの風圧で砂壁を吹き飛ばす。


「作戦が安直すぎるぞ。それでは俺には勝てん。」


「二人とも、次の作戦だ。」


「わかったわ。」


「了解です。」


さあ、次はどう来る?


「『重力操作』!」


これは....アリサのやつ重力操作魔法を使えるようになってたのか。

3倍....いや、4倍か。

なるほど、やるな。


「『ホーリーショット』!」


ほほ~う、攻撃のためではなく目くらましのために光魔法を使うか。


「グラビティスラッシュ!」


俺はよけずにあえて受け止める。


ガキィン!


!?これは.....

なるほど、アリサのやつセリスの剣にも重力操作魔法をかけたのか。

セリスの重力剣振り訓練も無駄ではなかったか。

なかなかに重い一撃だが.....


「俺には効かないな!」


「ぐっ。」


剣を受け止めながら、セリスに蹴りを入れる。

まあ、女の子だから優しくね?


「今度は俺から行くぞ。」


俺はヒーラーであるヘレナへの距離を一気に詰める。


「『月華一閃』風圧バージョン。」


「アリサ、ヘレナの援護を!」


「わかったわ!『コンポジィムァジィック、ファイヤーサンドウォール』!」


ほう、ここで複合魔法を使ってくるか。

砂壁で風圧を消しつつ、火で俺を近づけさせないということか。

やるじゃあないか。


俺は一度距離をとる。

さてどうしたものか、そう考えていると。


「アリサ、ヘレナ!アレス君の攻撃は速度を基礎としている!」


「わかってるわ、でも重力操作魔法も効かないし....。」


「わたくしにできること.....。」


俺の戦い方を知りながら、対抗手段がなくて悩んでいる感じか。

だがこの戦い、面白くなってきた。


「さあ行くぞ俺を止めてみろ!」


今度はセリスと剣を交える。


キィン!


「くっ!」


「前にも言ったはずだ、1つの構えに執着するなとな。」


「今だ!アリサ、ヘレナ!」


「光よ集え!『ライトニングコンバージェンス』!」


光魔法がセリスの剣に収束していく。

聖剣エクスキャリバーンは元々光属性武器。

なるほど、こいつは喰らうとなかなかヤバそうだ。

だが避けられたら意味がないぞ?


「『ウッドオブシタクル』!」


これは、身体拘束呪文か!

なるほど初歩的な魔法だが、今の局面では相性がいい。


「『神速』!」


まさかセリス『神速』を使えるようになっていたのか。

これはなかなかに面白い。


『セリス!いっけーえ!』


「はぁぁぁぁぁぁ!」


これもレベルアップの恩恵、いや....

ふっ、こいつらの努力か。

俺はセリスの一撃を正面から受ける。


ドガァン!


「うわー。」


ドサッ


「やった、のか?」


「私達勝ったの?」


「これは.....。」


『ヤッター!』


ぶっちゃけまだ全然戦えるが、こいつらには色々と驚かされた。

その努力に免じて今回は負けということにしてやるか。



・・・・・・・・・・・・・・・・・



こうしてアレス式強化訓練は幕を閉じ.....なかった。

いやあ、完全に忘れてたわ、報酬の件。

おかしいなあ、記憶力には自信があるんだが、こういう都合の悪い事はすぐ忘れちゃうんだよなあ。


「さて、何をお願いしようかしらね。」


「お手柔らかに頼む。」


「アレスさんにお願いしたい事.....。」


「うーむ、どうしたものか。」


「屋敷の周り100周とかで良くないか?」


『ダメ!』


あっ、ふーん。

多分これ地獄だわ。




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