第5話 武器の名前って短い方がいいよね

「セリス!そっち行ったわよ!」


「任せろ!」


道中、モンスターを倒しながら、俺たちはカンパイーン洞窟の中を進んでいった。


「今のところギルドで噂になってた、大型モンスターの姿は無いようですが...。」


「そうだな、いても精々Bランクの魔物といったところか。」


「本当にそんなモンスターいるのかしら?」


いやあ、流石勇者パーティー。

低ランクの魔物も油断せずきっちり倒していくな。

え?俺?俺はほら、荷物持ちだし?

さーせん、何もしてません。


しばらく進んでいくと、いかにも頑丈そうな大きな鉄の扉が現れた。


「これは...。」


「大きな扉...一体どうやって開けるのでしょうか?」


「鍵もなさそうだし...私の開錠魔法も使えなそうね。」


ふーむ、なるほど、これはなかなかでかいな。

さてどうしたものか。

切って開けるのは簡単なんだが、洞窟が崩れる危険性があるしなあ。

いや待てよ?

長年組織で活動していた俺の勘が正しければ、この手の扉は大体、合言葉的なので開く可能性が高い。

そんな中俺の頭の中に出てきたのは、あの言葉。

もし開かなければかなりの恥だが、やってみる価値はある。


「パインでカンパイーン!」


「アレス君、突然どうしたんだ?」


「あんた、やっぱりしょうもないこと考えてたのね...。」


くそう、やっぱり開かないかあ...。

ただ恥かいただけじゃん。


「みなさん!見てください!扉が開いていきます!」


「噓でしょ?まさかあんたこれを知っていてさっきの言葉を!?」


「流石アレス君だな。右のルートを選んだのも、この扉の存在を知ってのことか。」


え?マジ?

やったぜ、なんか開いたわ。

とりあえず無駄に恥かかなくてすんだわ。


俺たちは扉の中に入る。

すると、


ギィィー、バターン


扉は大きな音とともに閉じてしまった。


「ちょっ、扉閉じたんだけど!?どうやって帰ればいいのよ!」


それな!

俺も同じこと思ってたわ。

うーむ、組織で培った長年の俺の勘を基にすると、この手のギミックは、大体ダンジョンのボスを倒さないとなんだよなあ。


「みんな備えろ!何か来るぞ!」


セリスが武器を構え、みんなに警告をする。


「まさか、例の大型モンスター!?」


「戦うしかなさそうですね。」


うん、案の定俺の勘的中しちゃったね。

でもまあ、慌てることはないだろ、こいつら勇者パーティーだしな。


『グォォォー!』


うわあ、でっけえ虎だあ。

間近でみるのははじめてだな。


「こいつはまさか、グレータータイガー!?」


「アリサ、知っているのか?」


「本で見たことしかないけどね。S級のモンスターよ。まさかカンパイーン洞窟にいるなんて。」


「厄介そうですね....。」


へぇー、コイツS級なんだ。

まあデカいし、強そうではあるな。


「私が前に出る!アリサは魔法でサポート、ヘレナは身体強化を頼む。」


「任せて!」


「わかりました!」


見事な連携だな。

流石といったところか。


俺は最後方で勇者たちが戦っているのを見守っている。

そう、見守っている。


「この者たちに祝福を、身体強化!」


「食らいなさい!ファイヤーストーム!」


「二人とも援護感謝する!いくぞ、グラビティスラッシュ!」


なかなかいい攻撃だな。

だが....


『グォォォー!』


「こいつ、効いていないのか!?」


「魔法にもびくともしないわ!」


「参りましたね....。」


『鑑定』


うーん、なるほどなあ。

攻撃は悪くない。

だがレベル差がありすぎるといったところか。


「くっ、ここまでとは...。」


「悔しいけどあたしたちじゃ敵わない...。」


「わたくしたちにはもう手段がありませんね...。」


そうだなあ。

このレベル差じゃなあ...。

ん?何?なんでみんなして俺を見るの?


「すまないが頼んだ、アレス君。」


「あんたに任せるわ。」


「お願いします、アレスさん。」


え?俺がやるの?

あれ?俺荷物持ちじゃなかったっけ?

まあ、まだ何も仕事してないしなあ。


「わかった。任された。みんなは下がっていてくれ。」


『グォォォォー!』


いい加減やかましいと思っていたところだ。

俺は収納魔法から刀を取り出す。

この刀には一応、【妖刀デシュバリマリクシオーネテロリアンBV】という名前がある。

面倒だから俺はBVから名をとり、ブーヴィーと呼んでいる。


「月華一閃」


俺のブーヴィーの一太刀は見事にクリーンヒットする。


『グォォォォー.....』


ドサァン!


「任務完了っと。あ、ちげえ、これ探索だったわ。ふぅー、みんな、終わったぞ。」


みんなの方を見ながら言うと、みんなは驚いた顔をしていた。


「実戦を見るのは初めてだが、まさかここまでとは....。」


「確かに納得ね。」


「噂は本当でした。」


俺は脳内翻訳機を起動する。


セリス『まさかここまでクズだとは、キルパクとかないわあ。』


アリサ『キルパクするなんて、こいつなら納得ね。』


ヘレナ『キルパクするとか、噂は本当だったのね。』


俺泣いていい?

任されたからやったのにキルパク認定されるとか....。


ギィィィィーゴン


やっぱりダンジョンボス倒す系のギミックだったか。

色々あったけど、まあ、とりま扉開いたし帰れるしよしとするか。


「見てください!奥に何かあります!」


ヘレナが指をさした方を見ると、そこには剣があった。


「これはまさか、伝説の聖剣エクスキャリバーンか!?」


「この輝き、間違いなさそうね。」


「アレス君が右に行けといったのはこういうことだったのか!」


「流石にこれまでのことが偶然なんてことはないだろうし。」


「アレスさんにはすべてお見通しだったのですね。」


うん、なんか盛大に勘違いされてるけど、結果的によかったな。


「だが勇者とはいえ、私よりもアレス君がこの剣を使った方がいいんじゃないだろうか?」


いやいや、俺こんな大層な剣絶対に受け取りたくない。

失くしたり、折ったりしたら俺の命が危ないし。


「それはセリスが持ていてくれ。聖剣は勇者にしか真の力を発揮することはできないし、それに俺にはこの【妖刀デシュバリマリクシオーネテロリアンBV】、通称ブーヴィーがあるしな。」


「ブーヴィー、見たところ、聖剣にも劣らない業物ですね。」


「あんた、ネーミングセンス無いのね。」


ネーミングセンスなくて悪かったな!

てかこの刀つくった人に言ってくれ。


「わかった。アレス君が言うなら、ありがたく受け取らせてもらおう。」


「ああ、それが必ず世界のためになる。さあ、帰ろう、俺は腹が減ったんだ。」


「そうね、帰ってみんなでチョベリバーグでも食べましょ。」


「わたくしも流石にお腹がすきました。」



こうして俺たちは無事カンパイーン洞窟を攻略し、街に帰るのだった。




















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