死生之徒
ハヤシカレー
死生之徒《壱》
——死生之徒 《壱》
人は人から人と見られ人となる。
たとえ死んでいようと人に知られてりゃ、世界から見たらそいつは生きているんだ。
心の中で生きている——って台詞と同義だと考えてもらっていい。
それは人が己を人であると自覚して以来、この世に在り続ける当然の摂理なんだ。
けんどもさ、それだけ長く使われてりゃガバが見つかる。
肉体的に死んだ人間の存在が、人々から忘れられる事——これは問題無い。生物として死んだ奴が人間として死のうと何のトラブルも生じない。
バグの原因は忘却ではなく、忘却される存在の状態だ。
生きている人が人に人として見られなくなる。
生きているのに人として死ぬ。
こりゃ駄目だ。
このバグが見つかるのにゃー人が人を自認してから八千年はかかっちまった。
生と死の輪から外れた人が生まれちまう……だなんて致命的な欠陥を、八千年も抱えていただなんて、正直ゾッとするだろう?
そして、そんなバグが起こる度、生死の概念が吹っ飛んじまう前に、それを修正する為に働かせられているのが俺だ。
俺は、
「あんたの孤独を埋めれる
俺はそう言って、そいつの前に座り込む。
生きてるくせして生きていない、そんな矛盾そのものとなった人に向かい、
生まれてないくせして生きている、これまた矛盾そのものの俺は、目の前のそいつに語りかける。
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