第三章『精霊の森』

第19話 精霊の森

 銀の杖を柔らかい布で磨き、少しずつ魔力を与えていく。本当はメンテナンスの専門店に出したかったけど、時間が本当にない。

 基本的に、任務は出されてから二ヶ月以内にこなせばいいと決まっているけれど、早く終わらせたいというコリンにあれから10分ほどで連れ出されたのだ。

 絶対許さん。

「ローブ着て杖と箒さえあれば良いじゃん…」

「そりゃそうなんだけど。任務続きだからさ」

 間隔が一日だから疲れも取れていない。胸元に飾った輝く花…エリカの部屋にあったその花に触れた。これにも僅かに、魔力の流れを感じる。

「ティーナは国王陛下に気に入られてるんだろ。」

「…なら任務与えないでずっと寝てて良いって言ってくんないかな〜」

「実際数日前までそうだっただろ…」

 そういえばそうだった。申し訳ないけど、引きこもり期間の話をして良いのか迷ってたりみんなするけど正直迷わなくて良いんだよね。地雷じゃないし。

 ホタルもコリンもまあまあ踏み込んできてくれるから気持ちは楽なんだけど、前に比べたら。

「で、精霊の森で異変だっけ?」

「そう、ちょっと窓の外見てみな」

 今は馬車に乗って移動中。私馬車苦手なんだけどね、箒あるのにどうして馬車を使うのか本当にわけわからないし、ちょっと酔いそう。

「…精霊の森…には見えないね!」

「それが異変だよ」

 窓の外の森は真っ暗で、至る所に蜘蛛の巣があったり毒沼があったり。私が前にみた精霊の森とは真逆だった。前はそれこそ、沢山の精霊がいたしもっと美しい景色だった。

 これはこれで味はあると思うけど。

「成程ね〜、確かにこれはまずいね」

 私には関係のない話だけれど…魔法がうまく使えない人や魔力が少ない人は精霊の力を借りて魔法を使う。基本的にCクラス以下は精霊を一匹は持っているものだし。しかし、精霊の力を借りるにはこの森に何度か通って借りる精霊に気に入ってもらわなくてはいけない。

 だというのに、森がこんな状態では通うどころではないだろう。

「精霊は魔力の化身のような存在だからな。森がこのままだと、下手したら魔物に滅ぼされるなこの国。」

「そもそも魔法使い志望の子も少ないからね…だから異界から人呼ぶんだろうけど」

 後半は小声だったからコリンには聞こえていないだろう。異界の話は基本的にタブー視されているし、あまりするべきじゃないんだよね。

 異界って、私からしたらこっちの方が異界なんだけど。

「コリン、そろそろ降りよ。このまま座ってたら寝ちゃいそう」

「マジか…ここ、さっきから嫌な感じするから油断全くできねえんだけど」

「へー、私ったら肝据わってんね」

「バカなだけじゃね」

「は?」

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