稀代の魔女と魔法学園

白雪ミクズ

プロローグ

第1話 目に入ったもの

 __許さない…お前だけは絶対に……


______


 起きると、汗をびっしょりかいていた。日の差し込まない部屋で、ただ1人、目覚めた。

 服を替えて水を飲むと、視界が安定してきた。ガラス細工の多い部屋は、なんだか冷たい印象だ。

「……もう眠くないや」

 口に出してそう言うと、私は鏡の前に立った。

 紫の髪がボサボサだ。そっと髪にブラシを当てると、バリバリ、と音がした。少しだけ痛い。

「ティナ?起きたのか?」

 そう言って入ってきた褐色肌の人は、私の顔を覗き込んだ。

「まだ朝だぞ、朝飯食うか?」

「…貰う、キリさんも食べない?」

 キリさんは頷いて、部屋の電気を付けてから出ていってしまった。

 朝ごはんを食べ終わると、私はキリさんにこう告げた。

「私、王様に会いに行ってくるよ」

 目を大きく見開いたキリさんは、次第に微笑んで私の頭を撫でた。

「大丈夫なのか?体調は?」

「体調は平気だよ、うん…大丈夫。」

 王城に連絡するために部屋を出たキリさんを横目に、私は着替え始めた。

「どうせ着替えるんだったらさっき服替えなくてよかったじゃん…」

 水色のフォーマルなドレスを着たあと、髪を結い上げた。手がもたつく。

 緑色の瞳がしっかり見えるようになった。

 色々、物を準備していると、ノックの音が聞こえた。

「ティナ、そろそろ行くか?」

「そうだね、じゃあ行ってくる」

 そう一声掛けてから、私は外に出て箒に跨る。クリスタルでできているその箒は、新品同然だ。


 しばらく飛んでいると、街のあちこちから声が聞こえてくる。

「おい、見ろよ。ティーナ・エフェクターだぞ。」

「マジで紫の髪で緑の瞳なのか」

「(後で土にでも埋めてやろうかな、アイツら)」

 私が物騒な事を考えてるだなんて、どうせ分からないだろうな、と鼻で笑った。


 視界には緑の髪や金髪などが入ってきた。紫の髪なんて1人も居ない。

 視界には紫の瞳や赤い瞳が入ってきた。緑の瞳なんて、1人も居ない。


 ネックレスに触れて、そっと握った。葉っぱ型の銀飾りに、緑色の宝石が埋め込まれているそれは、何故かとても冷たかった。


 __この世界には、魔力というものと、神々の祝福というものが存在する。


 魔力は髪色、神々の祝福は目の色に反映される。


 髪は紫が1番強く、紫、赤、オレンジ、金、青、緑。瞳はその逆だ。


 紫の髪と、緑の瞳どちらも持つ魔女は、歴史上に2人のみ。その1人が私だ。

 なので前はローブを被ったりして出来るだけ隠していたのだけれど、生憎ドレスに隠れられる要素はない。


 やがて、王城が見え始めた。

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