18 2人の新人 4

ギルドの前で待ち合わせた3人は街の清掃業務に出かけた。

現場責任者に清掃場所を確認して清掃を始める。


「兄ちゃんはこの前魔法で綺麗にしてくれた兄ちゃんだよなあ。今日は2箇所にチャレンジして見てくれや。この前すげー綺麗になってて驚いたぜ。」現場責任者のオッサンがこの前の俺のことを覚えていて2区画やらないかと声をかけてくれた。


「2区画1度に清掃できればやれそうな気もするのですけれど〜、そういうのってやっても良いのでしょうか?」まとめて清掃した方が全体を1つに見られるので綺麗さのバランスがとり易いと思うキルである。


「お、おう。兄ちゃんなら構わないぜ。俺の一存で許可してやるよ。兄ちゃんのことを認めて特別にだぜ。」


「助かります。では2区画清掃させて下さい。」


「わかった。割り振るからついてきな。」


キルと、ケーナ、クリスの3人は現場のオッサンに付き従ってそれぞれの持ち場の範囲を指示された。


「この範囲を綺麗にしてくれよ。時間に関係なく俺が綺麗になったと判断できればそれでミッション終了だ。」オッサンがニヒルに笑って立ち去った。さて清掃作業の開始である。道具はかしだされるものをつかう。ケーナもクリスも自分の持ち場をシコシコと綺麗に清掃し出した。


キルは一通りゴミを拾い終えてから汚れの酷い順にクリーンの魔法を7発かける。そしてその他の汚れている所を人力で清掃だ。3人は8時間かけてミッションを完了できた。ケーナとクリスは8000カーネル、キルは16000カーネルを手にしてギルドに報告に行く。ついでにキルはゴブリンの魔石4つ、4000カーネルを購入。明日の予定を相談する。


「明日は狩りに行ってみるかい?」


「清掃より狩りに行きたいっすね。」ケーナは狩りに賛成のようだ。


「1日700カーネルでは生活できませんわよ?」現実的な意見を出すクリスである。


「明日は昨日より強い魔物を狩るつもりでいてくれよ。中型の魔物をターゲットにしてみよう。」


「わかりましたわ。」了承してくれるクリス。


「明日9時にいつもの場所に集合な!」


解散して晩飯の買い出しと蝋皮紙20枚を買い工房に帰る。ゼペック爺さんと話をしながらいつものように晩飯を食べる。


魔力はほぼ使い尽くしているので、魔石を粉にするだけで今日はスクロール作りは出来ない。明日に備えて早めに睡眠をとった。



翌朝ギルド前で落合い草原に向かう。


「キル先輩、今日は何を狙う予定なんすか?」


「ウルフは小さな群れなら良いが数が多いのは避けるぞ。大きさにもよるがスモールボアなら15000カーネル、モーモウも20000カーネルくらいで引き取ってくれるからその辺りを一頭狩りたいと思うな。ボアなら20000〜30000カーネル、いずれも取れる肉の量によって買取価格は違ってくるがな。往復2時間かかるから運ぶことを考えれば2頭が限度だな。」俺が深く考えずに答える。


「それってなんか、中型から大型の魔物に変わってませんか?」突っ込みを入れるケーナ。何気に頭良いなこいつと思うキル。


「そ、そうか。まあそのくらいの魔物なら狩れるんじゃ無いかとこの前の様子で思ったと言うことさ。細かいことは気にするなよ。魔物を見つけたらその場で指示を出すから。」


「わかったっす。」


「大型の魔物は遠距離攻撃1発じゃ倒れないかもしれないから近づくまでに出来るだけたくさん攻撃を打ち込んでくれ。剣の届くところまで近づかれたら俺が相手をするからその時は近づかれる前に2人は距離をとってくれ。」キルはザックリと作戦を指示した。


草原に入ると獲物を探し始めた。初めにケンケンを見つけたのでケーナに射殺してもらった。大物を運ぶために持ってきた天秤棒にケンケンを吊るして次の獲物を探す。


遠くに獲物を見つけて静かに近づいて行く。だんだんとその姿がはっきりと見えて来る。水牛のような姿をした魔物モーモウだった。


「モーモウだ。アイツは攻撃すれば向かって来るやつだから射程に入ったら攻撃開始だ。」キルの言葉に頷く2人。


キルを先頭にそろりそろりと近づく。右後ろにケーナ、左後ろにクリス、3人はほぼ正三角形の様な陣形を自然にとっていた。キルの手にはストーンショットのスクロールが2枚広げられている。


1番射程の長いケーナの弓の射程に入ると3人は攻撃の態勢に入る。

思いっきり弓を弾きビュンと放たれた矢がモーモウの尻に刺さるとモーモウは飛び跳ねてからこちらに向き直り突進を開始した。


第2射の準備に入るケーナ。


クリスがファイヤーボールを放ちモーモウの顔面にヒットして勢いが止まる。キルが両腕に持ったスクロールからストーンショットを連射し眉間と頸筋にヒットした。


キルが背中の両手剣を抜いたその時、モーモウは「ズシーン」という地響きを立てて倒れ込んだ。


「気を抜くな。剣でトドメを刺す。」キルがソロソロと近づいて両手剣を振り下ろしモーモウの首を落とした。


「よし、運ぼう。」天秤棒にモーモウの足を縛りつけケーナとクリスの2人で担ぐ。背丈の同じくらいな2人の方が運ぶのには都合が良かったのだ。キルはケンケンとモーモウの首を持ってギルドに運んだ。


買取額はケンケン300カーネル、モーモウ21000カーネルだった。


「よし、今日はもう一度狩りに行けるぞ。」


キルの声に疲れたと顔で訴える2人。


「もう一度行くぞ。」キルは2人の訴えを退けた。冒険者は稼げる時に稼いでおかないと稼ぎのない日が続く事だって多いのだ。2人は渋々ついて来た。

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