彼女の憂鬱。
町の桜が咲き始めてからもう一週間弱が経過していた。
満開を終え、花びらが徐々に散り始めていた。
「よ、元気か? 今日も見舞いに来てやったぞ」
「何よ、別に頼んでないし。それより暇。外に出たい」
今日はどうやらご機嫌斜めみたいだ。
「今日はだめだ。検査の日は一日安静って先生と約束したんだろ?」
「そうだけど……」
病気自体はきれいさっぱりよくなったが、検査入院ということでまだしばらく入院中の彼女。
「暇つぶしに付き合ってやるから、今日は大人しくしてろ」
「……わかった」
そう言って大人しく頷く。
「でも明日は遊びに行くから。付き合ってよね」
珍しく素直かと思ったらこれだ。
「わかったわかった。ちゃんと付き合ってやるから」
「絶対だよ? 明日も明後日も、ずっと……ずっとだからね……」
それから窓の外を見つめた彼女は、どこか遠い目をしていた。
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