第2話 レイモンド・チャンドラー『リトル・シスター』
毎度恒例ですが、チャンドラーファンの方は読まないでください!!
☆前おき
本作は、レイモンド・チャンドラー作品の中では最大の失敗作だと見られている。
何せ、チャンドラー自身がこの作品の出来に納得していないと公言しているのだ。
本人がそう言っている以上、更に鞭打つのも酷な話である。
擁護というわけではないが、個人的には、
前回取り上げた「大いなる眠り」に比べると幾分かマシ、という印象を受ける。
しかし
相変わらず事件は膨れ上がっており、またチャンドラー自身の(ほぼ)確実なミス(ひょっとしたら僕の誤読)もある。
何より、主要女性登場人物3人のうち2人(メイヴィスとドロレス)の書き分けが出来ていないのは痛すぎる。
一応メキシコ系のドロレスは『アミーゴ』という単語を連呼するのだが、
メイヴィスが『アミーゴ』を連呼するシーンもあったように思われるのである。
本来は、メキシコ系であるドロレスのみが、スペイン語の『アミーゴ』を使うのが妥当で、
メイヴィスが言うのは、ほぼ確実にチャンドラーのミスなのだが。
(友人ドロレスの口癖が移った、真似したという苦しい言い訳は可能だが、紛らわしいにも程がある)
また、チャンドラー作品が分かりづらい理由の一つとして、
文の主語や、描写で「メイヴィスは~」とか「ドロレスは~」と言った具体名ではなく、「彼女は~」という文章がずっと続くこと。
しかもキャラクターが立っていないため、会話内容を注意深く読まないと、誰と話しているのかがわからなくなる。
これは多分、チャンドラー作品のほぼすべてに共通する文章の書き方であり、個性や魅力の強いキャラクター以外の区別がつかないのはこれも原因の一つである。
性格付けもしっかりしていないため、どちらと話しているのか、なんなのか、もはやわけがわからない。
オーファメイはきちんと描き分けられているが、残りの2人の重要女性キャラが同じに見えるんじゃ、とても・困る! 多分大丈夫だが、僕が書いたドロレスは~とかメイヴィスは~というのも、一か所ぐらいは間違っているかもしれない。責任は追えない。
さて、あらすじに行きましょう。
ただし、このあらすじが合っているか、自信はありません。
☆起
マーロウ探偵事務所に一人の女性が訪ねてきた。
田舎から出てきた金髪三つ編み眼鏡っ子のオーファメイ</sp</span>an>。
警戒心の強い彼女は、まず電話をかけて事務所に入ってこようとしない。
しかしマーロウが冷たくすると、オーファメイは勇を奮ってやってきた。
兄のオリンが失踪したため、その捜索を20ドルで依頼してきたのである。
オーファメイは、警戒心も露わに、自らの連絡先も知らせずに帰って行った。
(小動物系純朴娘キターーーーーー)
マーロウはオリンの捜索を始めた。
まず、オリンが先頃まで住んでいた住所へとやってくる。
そこで、柄の悪い輩レスターに絡まれる。
この住宅は、麻薬密売が行なわれている場所だった。
オリンが住んでいた場所には、カツラを大事にするヒックスという男が住んでいた(カツラをいじるマーロウの台詞が面白い。ヒックスは明らかにキャラが立っていたと思うのに、あまり活躍できず残念である)
ヒックスは、別の部屋に住んでいたが、オリンの部屋が空いたので移ってきたとのことだった。
そして、レスターはアイスピックで殺されていた。
レスターは、死ぬ直前、誰か(後にDrラガーディと判明する)と電話をしていたようだった。
☆あらすじ 承???
オーファメイが夕方やってきた。
マーロウは疑問を口にする。
・なぜ、警察に頼まないのか。
・なぜ、オリンが行方不明になって4カ月も経ってから探しに来たのか。(心配はしなかったのか)
マーロウがオーファメイの眼鏡をはずすと、オーファメイが抱きついてきた。
オーファメイは媚びる調子でマーロウにキスをした。
(眼鏡を取ったら急に美少女展開&純朴そうに見えて実は積極的なキス魔キターーーーー)
オーファメイが帰ると、怪しい男から電話がかかってきた。
貸金庫代わりに品物を預かるだけで100ドルが手に入るというのだ。
名前も言わずに彼は電話を切った。
彼のいるホテルで、受付の人間(フラッグ)に尋ねるも埒が明かない。
ただ、ドクター・ハンブルトンという名前で投宿している事はわかった。
部屋に入ると、突然謎の女(金髪。オーファメイ? 後述のメイヴィス?)に襲われる。
ベッドでは、ドクター・ハンブルトン(正体はヒックス)がアイスピックで殺されていた。
(この作品で、僕が好きなのはオーファメイとヒックスだけなので、既にモチベーションが半分以上下がったw)
受付のフラッグにヒックスが死んでいる事を伝えた。
☆
ヒックスの死亡を確認するため、警察がやってきた。
ヒックス(ハンブルトン?)の正体はマーストンという小物の悪党だった。
一体いくつ名前持ってんねん。
ちなみに、後に出てくるスティールグレイヴも別名を持っているし、
オーファメイの姉のメイヴィスも別名を持っているし、
しかも名字で呼ばれたり、名前で呼ばれたりするから、わけがわからなくなるよ!!
(ここまで比較的てきぱきと進んできた物語だが、
警察官やフラッグあたりのやり取りはちょっとダルく、いよいよチャンドラー先生の悪癖=僕の苦手な部分が発揮され始める。
ここまでのストーリー紹介は、割と自信を持って理解できていると思う)。
ヒックスは写真を撮って(持って)いたらしい。それが原因で殺されたのだ。
☆チャプター11あたり
(ホテルの受付、フラッグとのやり取りがだるいため、
テキトーに読んでいたら、話の筋を見失ってしまったw)
フラッグは金髪女を、何かの映画で見知っていた。新人女優なのだ。
マーロウは女優のミス・ウェルド(メイヴィス・ウェルド)という女を訪ねた。
(オーファメイが出てこないと、突然読んでて面白くなくなるw)
応対に出たのは、同じ女優志望のミス・ゴンサレス(ドロレス・ゴンサレス)だった。
酔ったドロレスにマーロウはキス(というかべろちゅーされる。今回、展開はえーなおい!)。
イチャついていると、メイヴィスに目撃されてしまう。
メイヴィスはホテルでマーロウを襲った女だった……んだと思う(自信なし)
この辺りから、メイヴィスとドロレスとマーロウのやり取りが長くなる(話が見えづらいので、退屈である)
家に帰ると依頼人が来ていた。
「おとといきやがれ」しか言えない、ヤク中のアルフレッドと、保護者のトードである。
(「おとといきやがれ」しか言えないキャラとか、「てめぇでファックしやがれ」しか言えないキャラとか、こういうキャラ、チャンドラー好きねぇ。俺は大嫌いだけど)
「オリンを探すのをやめろ」と脅迫しに来たが、マーロウは突っぱねた。
(ちなみにこの二人組は、結局何者だったんだっけか???)
電話が鳴って、オーファメイがやってきた。
「オリンから連絡があった」と彼女は言った。しかしそれは嘘だった。
マーロウに媚びにやってきたのだ(ほんとか?)
マーロウが、映画女優のオーファメイの姉リーラについて尋ねるとオーファメイは怒って帰って行った。
(なぜオーファメイの姉がリーラという名前で、映画女優だとマーロウはわかったんだろう??? というかリーラが本名で、メイヴィスが芸名??? 紛らわしい)
メイヴィスが男と密会している写真をマーロウは入手する。
(別に面白いシーンじゃないけど、この小説のターニング・ポイント!)
Dr・ラガーディという男が死ぬ前のレスターと電話をしていたのがわかり、マーロウはDr・ラガーディを訪ねる。
警察から連絡が来て、ホテルの受付フラッグが雲隠れしたことを知らされる(単に金を持ち逃げしただけっぽい。こういう枝葉のエピソードいらねぇ)。
メイヴィスとスティールグレイヴ(相手)の密会の場は、スティールグレイヴ本人が経営している酒場の『ダンサーズ』。
スタイン殺害事件当時、刑務所に入っていたらしい。
(スタインって誰だっけ??????? 唐突に出てくるなや!! 唐突じゃなくて読み飛ばしてた可能性の方が高いけど)
マーロウはメイヴィスに電話をかけるが、冷たくあしらわれた。
マーロウはメイヴィスのタレント事務所にやってきて、写真を持っている事を伝え遠回しに脅しをかける。
この写真を巡って、人が何人も死んでいるというのだ。
その後、タレント事務所などでマーロウ(チャンドラーが乗り移った)がメディア業界をこき下ろすが、この部分がとにかく長い。
ストーリー上関係ない部分なので、要らないと言えば要らないのだが、
当時のレイモンド・チャンドラーの愚痴のオンパレードを聞かされている感があって、
一周まわって面白い。
ここは真面目に読まず、酔っぱらったチャンドラー先生の介抱をする気分で読もう
(別に本筋が面白いというわけでもないしな)
_______________数十ページ経過
☆あらすじ続き(転、なのか?)
スティールグレイヴとメイヴィスのゴシップ写真について、ようやくマーロウはメイヴィスと話し始める。
しかしメイヴィスはスティールグレイヴの事を詳しくは知らないようだった。
(ちなみにスティールグレイヴは、クリーブランドでヤンチャをしていたヤクザでモイヤーという名前)
オーファメイから再び「オリンから連絡があった」という電話が来た。
オリンは、Drラガーディの家にいるという。
どこかのギャングが彼を追っているという。
今度の情報は本当のようだった。
Drラガーディの家に行くマーロウ。「メイヴィスの写真を撮れたのは、メイヴィスがオリンの姉だから」だと推理するマーロウ
(あれ、オリンの姉・オーファメイの姉はリーラじゃなかったんかい! メイヴィスかリーラが、源氏名って事?)
ラガーディの家で、マーロウとラガーディは長い会話の末(マジでなげーよ)、マーロウは罠にかかり捕まった。
しかしマーロウは危害を加えられずに済んだ。ただ、一時的に動きを封じるガスを吸わされただけだ。
意識がもうろうとしている中、マーロウと共に倒れていた
オリンはアイスピックを手に死んでいた。
そこにドロレスが訪ねてきた。
ドロレスは『例の写真(メイヴィスとスティールグレイヴの密会写真を以後こう呼ぶ)』を返せと迫るが、マーロウはメイヴィス本人に返すと突っぱねる。
ドロレスが帰ると、警察から連絡が来てやり取りがある(どうでもいい)。
また、ドロレスが現れる。
メイヴィスが動けないので、代わりに動いているというのだ。
警官の警戒網などを突破した後、ドロレスが突然マーロウに銃を向けたりなんだりしたが、とりあえず無事に切り抜ける(つまらないのでテキトーに読んでしまった)
メイヴィスがやっと現れ、自分がスティールグレイヴを殺したと告白する。
弟のオリンを殺したかたき討ちということだ(これは偽の告白である)
マーロウは例の写真を隠ぺいしたかどで、警察に捕まる。
(ここからも長くてダルい)
☆あらすじ 結
やっと解放されたマーロウに、オーファメイからまた電話がかかってくる。
リーラはオーファメイの異母姉。
オーファメイが肌身離さず持っていた鞄には大金が入っていた。
マーロウが真相を推理する。
オリンはスキャンダル写真を撮影し、姉のメイヴィスを脅迫した。
しかし、レスターとヒックスが写真を強奪し、メイヴィスを脅迫しようとすると、オリンはアイスピックで2人を殺害した。
オーファメイの持っていた大金はスティールグレイヴの金。
Drラガーディとレスターが知り合いだという事を、警察に伝えたのはオーファメイ。
オリンの計画に加わりたかったオーファメイは、オリンを揺さぶるためにそうしたのだ。
金のためなら何でもする悪女オーファメイの正体が明らかになった<のだ。
オリンの居場所をオーファメイはスティールグレイヴに密告し、その報酬に大金を手に入れた。
オリンとオーファメイは似た者同士の兄妹。
姉のメイヴィスを脅迫し、兄のオリンを金のために売る女こそが、
眼鏡っ子三つ編み田舎女オーファメイの正体なのだった。
長姉メイヴィスはそんなオーファメイを赦すのだった。
☆エピローグ
マーロウはドロレスを訪ねる。
ドロレスは夫を捨ててハリウッドにやってきた。
ドロレスは「オーファメイが、スティールグレイヴを殺した」と話す。
そしてオーファメイに、「私が殺した」と姉のメイヴィスに言わせるように仕向けた。
スタインが例の写真の恐喝に加わろうとしたため、スティールグレイヴは彼を殺した。
そしてスティールグレイヴは事件当時、警察に捕まる事でアリバイを手に入れた。
しかし、刑務所からこっそり出てきてスタインを殺そうとした日、
スティールグレイヴはなぜかメイヴィスと昼食を取り、それをオリンに盗撮されたのだった。
なぜ、こんな偶然が起こったのだろう。
それは、もちろんドロレスがオリンやメイヴィス、スティールグレイヴを操ったのだった。
更にスタインを殺したのもドロレスだった。
オリンを殺したのもまたドロレスだった。
ドロレスは、スティールグレイヴに片思いをし、彼を他の女(メイヴィス)に取られたくないと思い、
ほぼすべての事件を操ったのだった。
(いやいや、いくらドロレスに操られたとはいえ、スティールグレイヴくんドジっ子にも程があんだろ)
マーロウはドロレスを警察に通報する。
警察がやってくると、ラガーディ(ドロレスの夫)は舌を噛みきって死んでいた。
ラガーディはドロレスをナイフで刺し、その後自殺したのだ。
以上!!
……これで、合ってる??? 全く自信がないんだがwwww
☆感想
本書の読みどころは、「かわいいふりしてあの子 わりとやるもんだね」の悪女オーファメイの存在に尽きる。
後は、チャンドラー先生のハリウッド業界への愚痴。
それ以外は話が混線して意味がわからない、いつものチャンドラー節だけれども、
とりあえず『アミーゴ』を使うのはドロレスだけにしてほしい。
本作が最大の失敗作、だそうだが、個人的にはチャンドラーファンではないため、「いつもこんなもんじゃない?」という感想。
オーファメイ悪女かわいいよ、オーファメイ!
オーファメイの姉で、天使のメイヴィスさんをもっと魅力的に描いてほしかったんだけど、メイヴィスさんはドロレスと区別つかなくなったりするようなキャラなんで勿体ない。
そういえば女性キャラで唯一マーロウとキスしてないしな!!
……頑張ってあらすじをまとめたんだけど、自信はありません。
複雑なのと、退屈で集中力が切れるのと、書き方が不親切の三重苦。
次回は『水底の女』(7/28 13:05投稿予定です)
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