第四章 <結> 決戦の時

第56話 大戦争 開戦



 魔の巣窟ギガダンジョン。




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093076367396715





 その第二層は超巨大な地下空洞。第一層の巨穴から真下へと光が差すより遥か水平へも闇の空間が続く。


 その天壁の岩肌には無数の巣穴が存在し夥しい数の魔物が飛び交う。第三層へと続く底部中心には、怪しく緋色に光って蠢く巨大な球状の魔塊が栓する様に鎮座。



 勇者による攻略直後、残党根絶の為の討伐隊を何度か結成、いずれも返り討ちされた。

 その内に生まれた最強の守護魔・マグマ怪物『スーパーラヴァ』。禍々しい闇の魔とマグマの精を数十年かけ錬成した地底魔の集合体で、遂に第三層への径1キロ程の出入口を塞ぐ迄となって完成。


 知る者はそれを『地獄の門番』と呼ぶ。 その熱で近接すら許さぬ正に難攻不落。その『生ける溶鉱炉』は耐熱系の魔物ですら無闇に近づけば取り込まれ養分にされてしまう。


 巨大な触手はその姿から太陽のそれになぞらえプロミネンスと呼ばれ魔物達でさえ遠巻きに警戒する。



―――そして遂に地下世界が動き出す。

 

 大侵略へ向け、続々と魑魅魍魎達がギガダンジョンから這い出て来て北の大地から南下を始める。



 ちょうどその頃、王宮付きサイキック部隊の捉えた情報が公にされ、政府は地下世界からの総攻撃の可能性について各国の国営放送から一般市民にも伝え始めていた。


 『魔法映像中継板リフレクスパネル』は延々と議論される様子を伝えていたが、次の段階に移行、連邦の臨時特別放送に切り替えられ、魔界の進出に備えるようひっきりなしに非常事態宣言を発し始めたのだ。


 狼狽うろたえ不安におののく市民。それに応じて地上の動きも急ピッチで進められていた。




―――最大国ラグレイシア。


 その一角、レイーズ特別自治区に連邦政府が設置されており、公的な軍人以外からも戦士の募集がかけられ、大陸全土から有志の者が存亡をかけて集まる。


 普段静かなこの区域も一気に色めき立つ。転生者達を軸として志願する兵士たち。

 ステータスアップ、仇討ち、娘の取り戻し等、行動を起こす者達……


 そしてやはり戦力の要はこの世界では魔法である。火、水、風、土、の四元素の各魔法部隊。転生者の多くはこのグループに勧誘され、その多くが戦列に加わる。


 しかし魔法撹乱ジャミング装置による魔術での戦局の複雑化に伴い新設された部隊、それがファスター率いるサイキック部隊である。

 それを含め『五大星』と呼ばれる様になった。


 だが従来勢力である魔法系戦士等からは疎まれていた。逆に魔法部隊も流派の事情により共闘の連携は不十分だったが、頂点たる四天星がドームシェルターの一件で意識を変え、急ピッチで再編を進めて連携。


 更に近年開発に力を入れて来た現代兵器部隊も装備を拡充。ジャミング機器に加え、各種大量に生産された従来型火力、爆弾そして良質な燃料鉱石が生むエネルギーによる電気の力の戦車、レールガン等が戦局を複雑にしている。


 また最も期待が薄い『はぐれオオカミ』と呼ばれるどこにも属さぬ転生者達。単なる自由人、目立ちたがり屋、様子見、など様々だ。


 ルナ達新参者もここに分類されていた。




 地上の敵の全掃討を掲げたルナ達だが、ルカのサイだけで市中の全ての敵を探し出す事に難航していた。


 その間、タブレットによる救助活動にも精を出していたが、人拐いが極度に急減し異常を肌で感じ始めた。それは敵の体制も戦争に特化したと推測出来た。



  ***



「ねえルナ、やっぱり最前線で戦う方がいいのかな。戦士の募集、全然足りてないって」



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093077095156279




「いや、セイカちゃんにお願いされたんだ。何か重要な依頼を受ける迄はまだ市街に残る様にって……

 セイカちゃんはあのジャナスの攻撃さえ先回り予知してた。多分あの子は戦闘力は無いけど、予知力は凄いのかも知れない。だから……ボクは信じる! 」


「う、うん……。分かった」


「それに強い転生者は殆どが最前線に行ってる。その間にもし内地が奇襲されたら大変。いつ有ってもおかしくない。

 だって人拐いが休止してるのにルカのサイで毎日残党が見つかり続けてる。これじゃ未だかなり潜んでいて危険。しばらく内地の全掃討してた方が……」



  * * *



 一方、万全とは言えぬ人類の体制を余所に、遂に地下勢力が本格的に動き出す。


 連邦政府への通牒、そして地下世界の自陣への宣言も今高らかに掲げた。



 宣戦布告である ――――







 〓〓〓〓 大戦開始 〓〓〓〓


 

 地下勢力は北の最果てギガダンジョンから一斉に南下。手始めに魑魅魍魎ども数千万の軍勢が送られて来る。



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093076877129155



 これを迎え撃つ連合正規軍と魔法軍四天星の傘下たち。正規軍は人の住む最北地域に集結し、更に北上して無住の緩衝地帯で相まみえる。


 戦いは現代戦車部隊、約千台の一斉砲火と地底オーク軍の巨大投石機の乱射により戦いの狼煙が上がり、同時に兇暴な咆哮と共に鉛色の濁流が戦車目掛け雪崩れ込む。



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093077095139381


 

 現代火力の一斉砲火で白兵オークの屍の山を累々と築くがそれを遥かに凌駕する数で、物ともせずに乗り込んでくる。

 懐へ飛び込む数十万のオーク軍を戦車の砲撃と踏み潰しで掃討するが、際限無く現れる地下兵共にひっくり返されて蹂躙される。


 更には空から無数に降り注いで来る巨石に潰されてゆく。


 一方、正規軍が援護する火器隊による機関銃乱射、ランチャー砲、中小型ミサイル、焼夷弾などでオーク先発隊どもは寸時その数を減らしてゆくが後方から幾らでも湧き出してくる。

 乱射する長距離ミサイルでさえ地を覆う程の群れには徒労に資源を費やしてるかの様だ。しかし超大型爆弾だけは敵の魔導師も警戒、魔術で空中分解させられてしまう。


 一方、後方で控えていた八ッ足・八ッ目の地底獣が一斉に解き放たれ、投石機の石と変わらぬ速さで走り回り、岩陰に身を隠す砲撃手をニオイで嗅ぎ付け、巨大なアゴ牙で屠ってゆく。



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093077095145386



 だが魔力の強い存在ほど通常は魔に頼る拝領はいりょう系だ。よりジャミングを忌避する為、必死に照射し戦意を散らし魔力を削ぐ。


 莫大なジャミング機が数の差を埋める。




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093077095151514



 闘いは熾烈を極めて行く。








< continue to next time >


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総力を挙げた戦いが開始される。ルナ達はどう行動するのか。こんな厳しい未来にも諦めず応援頂けるなら ☆・♡・フォローのタップにて宜しくお願いします。

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イメージBGM (youtube)

▼ United We Stand , Divided We Fall

https://youtu.be/6O6Q1OiF6LI

(正に命懸けの大混戦にはこの曲しかない)

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