第12話 武器商にて ~伝説の名器と出会う ?!



 案内しながら解説を始めるレイ。


「ジャミング装置は魔法のアクセスを妨害するノイズマシン。元々味方の軍が魔物から身を守るために開発し大量生産されて来た。

 でも魔に取り込まれた者が横流しするせいで近頃は敵味方問わず濫用されてる」


「魔法使いには厄介なんですね一」


「でも一部の聖剣等は神や魔の精を直接宿す物があって、それを手にすれば直通だから殆ど邪魔できない。それが俺らのジャミング対策のひとつ」


「なるほどー、この剣なら邪魔されず凄いパワーで敵をなぎ倒せるのか、アニメとかで見た事あるな……

 エクスなんとか――って叫んでた。やっぱ剣撃って人気あるもんな~」


 どこを見て回っても弟・メイはルナとレイの間に嫉妬混じりの憮然とした表情で割り込んでくる。それを苦笑いで見守る店のマスター。


「でもまあ遠隔魔法に比べて攻撃範囲は狭いし、自分も敵の間合いに入ってリスキー。敵数が多いとメンドーだし、体力がものを言うからなるべくは避けたいね」


 そこへ突如目に止まったひと山もある『それ』にルナの目がギラリと輝き釘付けに。ざっと百個以上は有ろうか。古真鍮色に鈍く光るそれはワゴンセールの様な雑な扱いだ。


「おお~! マスター、これはボクの大好きなヌンチャク?!」 


「ああ……沢山有るでしょ、これは『かの伝説の勇者』が作り、使ったと言う武器。スゲーだろ」


 早速手にするルナ。ズシッとくる金属製だ。


「《ロッドヌンチャク》 って言うんだ。

 だけど全く人気が無いんだよね~、この店の死蔵品デッドストック


「えっ! なんで? そんなスゴい物なのに?」


「そりゃ当然だよ。どの地の伝説でもヌンチャクで戦った英雄の話しなんて聞いたことも無いでしょ。やっぱ剣は武人のロマンだからね!」


 ま、オレも販売してやっと気付いたんだけどさ、と口先もスネたように尖っている。


「フ~ン、でもこの世界では伝説の勇者が使ったんでしょ? ボクはこっちがよっぽど……」


「ならお姉ちゃんに二束三文で売ってやるよ、どーせホコリ被ってるし」


「ええ?! ラッキー! ありがとう。でも何でそれ程の物が見向きもされないの?」


「だろ~っ、キミもそう思うよなぁ? オレもそう思って必死にかき集めたのよ、 何せ、あ・の! 伝説の! 勇者の使ってたプレミア付きだよ~?! なんで売れないのよっ!」


 ムキになり近づいた店主の顔には血走る眼。

 ツバも掛かりそうな勢いにのけ反りながらルナは苦笑しつつ


「……あの、ボクが聞いてるんデスガ……」


「おっと失礼、ついウラミ節が……理由はね、う~ん、一つには、誰も使いこなせなかったからかな。

 その作者であり使ってた勇者は、何せ妖精界の天才的錬金術師にして天才魔道具師であり、更に天才戦士だったのだから。その秘めた力を人間じゃ引き出せなくてね」


「フ~ン……あ、ボタンとかある……どうやって使うのかな?」


「まず一本に合体させて短棒や更に6尺棒、それ以上の長さにだって出来るんだ。更に超金属製で絶対に折れたりしない」


「絶対折れない……」


「ロッドから出てる超ワイヤーは魔力のある者が使えば好きな長さに伸縮出来るから振り出して弾丸の様に撃ったあと引き戻す事も出来る。ヨーヨーで戦う様にね」


「ほ一」


「そんでそのボタンはの下部から『死のかぎ爪』=リーサルクロウが出てきて、ムチの様に使うとその超振動のカギ爪で敵をズタズタに出来る」


「へーどうしてそんなのが?」


「例えば普通のムチ。達人にもなると先端速度が音速を超える程になる。だからあんなにヤワなのに武器になるんだ。

 それだけに勇者のムチときたら光速並みに超絶的に速過ぎてもう何でもキレイにスパッと分断しちまう。

 けどそれじゃ魔法治癒されやすく都合が悪い。そこで速く振る程に超振動するメカニズムのかぎ爪をつけて相手をバラせるようにしたんだって」


 そして一瞬、マスターの眼光が鋭くなり、敢えて声のトーンを下げてまことしやかに呟いた。





「―――今も語り継がれる伝説、このリーサルクロウを使った勇者のわずか一振りで、上クラスの魔獣千匹を瞬時にバラバラにした―――そう伝えられている」





 なっ……、と逸話に驚嘆するルナ。


 一振りで上モノ千匹……と柄部えぶの爪を摘まんでマジマジ見る。やたら気に入った様子で手に取ったまま放そうとしないルナ。


「で、他にも投げて闘ったりしたらしくてこんなにあるのさ。それも掻き集めて持ち帰ったホンの一部。これじゃプレミア感すら無い」


 それは勿体無い、チョイお試し、等と呟いて軽く回すと、


 ビシュシュシュ……ブオヮ―――――ッッッ!



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093074993964526



 猛烈な乱気流でマスターのヅラと服はハダケ散り、ワンショルダービキニパンツを手で隠し


『ヤメテ~ッ!』


「ちょちょ、ルナちゃんっ! 試すならここはダメ~ッ! その性能全部をキミが引き出せなくても物理フィジカルチートのキミがちょっとその気で回したら店がバラバラになっちゃうよ」


「エヘヘ~、残念……ってカゲキなパンツ!……ん? こっちのやたら沢山ある玉は?」


「ああ、魔法カプセルね。これに治癒魔法等を詰めて体力回復ポーションとか、傷口直しなど自他共に使える。そうやって各種の魔法の保存、配布など有用この上ないんだ」


「ボク、最大級治癒魔法を貰ったらしいよ! なら体力あればいっぱい放出出来るからカプセルあるだけ詰め込めるね。ここにある分全部に詰めてあげマスよ。

 えいっ……」


 掌から大量の光を放出、積み上がった全カプセルに瞬時に充填され、その魔威の輝きで満たされた。




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075681832124



 直後、マスターの目玉が飛び出てアゴが外れそうな顔で絶叫した。


「ぬおおお――――っ、なんとっ価値激増じゃん! こりゃメッチャ高く売れるよっ! あと4、5軒は家が建てられるぅっ! もうこのヌンチャク全部タダであげるよっ!」


「え―っ! いいんですかぁ~~!、ってか早くその下着を隠して下さいっ」


「ん、ゴメン! あ……そのヌンチャクで思い出した。

 その勇者、最強部族の王に再起不能級の深手を負わされてもなお討伐したんだが、残党がまだ徘徊してるらしい。

 遭遇して仲間を殺られた連中の噂を聞くから君達も気をつけて! その絶対強者に」


「絶対強者……」


「……それはで、いかに戦闘能力が高くても絶対勝ち目が無いのだと。万一出逢ってしまったらせめて闘う興味を持たれぬ様ににしろと。実際それで生き延びれたって」


 レイが反応し、俺もその噂を聞いたこと有る、雑魚は相手にしないらしい……と呟く。


「おっと、お礼。ヌンチャク全部タダでも足りなさ過ぎだ! そう、これから色んな所で戦うならコスチュームを最高級特殊素材のフリーオーダーでぜ~んぶ揃えてあげるよ」


 それを聞いた『親切お兄さん』のレイは思わず、

「ならデザインは任せてよ、普段はデザイナーを兼業してて。服専門じゃないけどね」


「レイ兄さん、それはやってあげすぎじゃ……」

 と不満げに袖を掴むメイ。だがルナは


「ウレシ~ッ! ぜひお願いしますっ! ボク空手意外めっぽう要領悪くて……」


 不器用かつ、ずっと兄の庇護の下にいた頼り癖が発動。そこへ無理して作った元気女子が不自然なキャラを形成している。


「あ、ここにあるヌンチャクを一杯持ち歩けるデザインでオネガイしま~すっ!!」


 だがそれ故、お節介親切お兄さんなレイに対してのそれは、むしろ甘え上手とも言える良い関係になっていた。








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