第48話
「人に懐くことがないアルビスの件も考えると、間違いなくユーニスは母君の言う、神の子……なのだろうな」
「……それは極力隠し通したいもの、ですが……無理、でしょうか……?」
母が隠しなさい、と言い続けたもの。いらぬ争いを起こさないためや、私を不幸にしないための、大切な言葉だった。母からはとにかく隠すことを言われたから、実際にはどの程度の能力が神の子にあたるのかは、わからない。
「イアンとも話をして、文献を探したんだが……異能、とも呼ばれる部分にも重なるところがあってな。厳密に言うと、どこからどこまで、と言った境も何もなかった。過去に異能を持った者たちが、神の子、と呼ばれていたのではないか、というのが俺たちの見解だ」
もう一度、最初から調べ直してくれたらしいレイフ様。忙しい合間を縫って、外国からも似たような話がないか、書物を取り寄せたのだそう。けれど、そうまでしても、出てくるのは似たような話ばかりで、ハッキリと記された事はなかったらしい。
そこまでして、過去の異能を持った人たちが神の子と呼ばれるようになり。年月が経つにつれて、徐々に数を減らしたために稀有な存在となったのではないか、と。以前は特殊な力を持った民族も存在した、とされているくらいだ。
「書物からは、文明が栄えだした辺りで激減したことを読み取った」
「便利な世の中だから、ですかね……」
数を減らしてしまうのも、自然界ではおかしくない話。信仰的な面も、少し関連はあるかもしれないが、人々の生活が便利になるが故の、減少なのかもしれない。
異能には天気を読み取るものもあったそうだが、便利な魔法が開発されれば、天気など読まなくともなんとかなる。畑も日々改良されているわけだから、天気に左右されないものが開発できれば、問題もなくなる。人も、雨に濡れても乾かせたら何も必要ないし、濡れないようにすればもっと、必要がなくなる。
「今回は動物たちが、手伝ってくれたのだろうな。森の奥深くにいる魔物が、動物に追われてこちら側に来た可能性もあったから」
「たしかに……魔物と言っても、元々は動物ですから……己よりも強い相手に遭遇すれば、逃げてその先に居を構えますし」
逆に逃げた先に、己よりも弱い相手の住処があったとする。今度はそれらを蹴散らして、自分たちの住まいにしてしまう。言葉としては弱肉強食、というのが近いか。捕食の有無は魔物によるので、すべての魔物が人間を襲うとも限らないけれど。
今回は聞いただけの話なので、実際は変わってくるかもしれない。ただ、自軍被害が出ないタイミングで魔物の出現など、動物たちはわかってやっているのは間違いないと思う。いや、私に優しくしてくれた、良き友でもあったあの子達の、お手伝いだと思いたい。
「レイフ様たちも、エインズワース辺境伯領に行ったのですよね?」
「あぁ、もちろんだ。さすがに変装して紛れ込ませてもらったが……」
「きっと、それですね」
もしや、と思い聞いてみる。レイフ様とイアン兄さまがその場にいるのは、動物たちにはわかる。変装していようが、それは彼らには関係がない。私をいつも心配してくれていた子達だから、レイフ様や兄さまを見つけて、私がちゃんとあの場所から逃れられたとわかった。
だから、兄さま達の手助けをしてくれたんだ、彼らは。言葉を交わすことはできなかったけれど、共に森で過ごした時間も思い出も、私には残っている。そして、それはあの子達もそうだったんだ。
「……そうか。また、今度会いに行くようにしようか」
「はいっ」
お腹をすかせて、どうしようもなかった時も。淋しくてたまらなかった時も。そっと側に寄ってきて、一人にしないようにしてくれた。木の実を分けてくれたりしたのだって、昨日のことのように思い出せる。
彼らに森で助けてもらえなければ、私はきっと今みたいにはいられなかった。もしかしたら、飢えて死んでいたかもしれない。いや、魔物に襲われて死んでいた可能性もある。
全部、今に繋がっているのは彼らの力添えあってのこと。私一人で得られたものじゃないし、神の子だから、という理由だけでもない。彼らが私と関わりを持とうとしてくれたから、この結果になったんだ。
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