第14話 少女たちはなぜ学校で勉強するのか
「うーん」
小さい椅子の上で動きが大きいので、よけいに椅子が小さく感じてしまう。
「いまの講演会の話?」
「ま、それもだけど」
と
「つまり、鳥にとって飛ぶのはつらいことだから、飛ぶ必要がなくなったら飛ぶ能力から退化してしまう、って話なんだけど」
言って、愛が軽く口をとがらせる姿が……。
……かわいい。
ちょっと目の焦点が合ってないような?
「まあおんなじ答えになるんだけど」
と千英は答えた。
「鳥ってもともと飛ぶために生まれてきたんじゃないんだよね」
「いや」
いきなりことばをはさんだのが、樹理。
いきなり雰囲気を険悪にするつもりじゃないだろうな?
「ために、って言えば、たとえば、わたしたちだって学校で勉強するために生まれてきたわけじゃないから」
……。
樹理の言ってることの意味が不明。
というか。
そんなために生まれてきたわけじゃないのに勉強するなんていやだ、とでも言いたい?
でも、まじめな樹理はそんなことは言わないだろう。
だから、かえって何が言いたいかわからない。
「そうそう」
ところが、その千英って子は、目を細くしてにこっと笑った。
「わたしたちだって、勉強するために生まれてきたわけじゃないけど、生まれてきたら学校で勉強できるようになってたから、学校で勉強してるわけでしょ?」
さらに言ってることが不明!
不明なうえに、長くなった。
千英は続けた。
「鳥もそう。もともと飛ぶために生まれてきたわけじゃないけど、生まれてきたら飛べたから、飛ぶようになった。たぶん、そういうこと」
これなら、わかる。
だったら最初からそう言えばいいじゃん……。
……と思ったが、よけいなことばをはさんで意味が不明にしたのは樹理だな。
それに、鳥に、「自分は飛ぶために生まれてきたんだ」なんて意識があるのかどうか?
いや、まず、人間みたいな意識ってものが、あるのかどうか?
つまり、何のために生まれてきたかとかには関係なく、生まれてきたら飛べたから、鳥は飛んだのだ。
千英が言う。
「鳥が恐竜の一種だっていうのは?」
女の子たち、何も言わずに、互いの顔を見ている。
朝穂は、樹理をちょっと見てから、
最後に愛と目が合う。
「うん」
と朝穂が言った。
「みんな知ってると思うけど」
言っておいて、信じられない。
「鳥は恐竜の一種」なんて、そんなにみんな知っていることなのか?
さすが偏差値の高い
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