第39話 大切な時間
三十九 大切な時間
テリーゼと再開を喜び合っている玻璃は、瑠璃の知らない玻璃でした。
(ママもあんな顔するんだ。そっか、ママは、生まれた時から瑠璃のママじゃないんだ。ママにだって十一歳の頃があったんだもんね。)
十一歳の少女のような姿になって、刻の間に玻璃は来ました。
でも今、目の前にいる母は、本当に十一歳の少女になってテリーゼと抱き合っている。瑠璃と紬のように、友達との時間を純粋な気持ちで過ごしている少女です。
玻璃の姿をじっと見ていた瑠璃に、刻の執事が
「瑠璃さん。玻璃さんに何も変わりはないですか?」
「ないよ。ただ本当に十一歳に戻ってるだけ。」
「そうですか。それなら、良かったのか?」
「ん?どうしたの?」
「いえ、、、」
歯切れの悪い返事にどうしたのかと思いましたが、それよりもテリーゼが玻璃を覚えていることや、カギを手にしたのにどうして刻にいるのかが、気になって、
「テリーゼ、どうして刻にいるの?カギをもらっても『時』には、行けないの?」
テリーゼは、微笑んで
「『時』行けると思うよ。」
「行けると思ってるのに、なぜカギをもらうのやめたの?」
「玻璃に、ラウムを置いて『時』に行くの?って言われたから」
テリーゼは、玻璃を見てイタズラっぽくそう言い、続けて
「カギをもらうのをやめて良かった。大切な人と一緒の時間は本当に素敵。玻璃、ありがとう。」
テリーゼの顔はとても穏やかで幸せが瑠璃にも伝わります。ですが、もう一つの大きな疑問が、瑠璃にはありました。
「テリーゼは、私の十一夜でまた、始まったのでしょ。」
「うん。」
「なのに、どうしてママを、えっと、玻璃を覚えていたの?」
そうです。十一夜の始まりにいなかった王の事をオルゴール達は覚えていませんでした。
それなのに、テリーゼは、マリではなく玻璃と、母の事を呼んだのです。
「女神様に、私がカギをもらわなくても玻璃は『時』帰れますか?って聞いたのよ」
「そしたら?」
「玻璃はちゃんと自分の夢を見つけたから帰れますよって」
「それで?」
「だから私は考えたの。ラウムのそばに居たいのかって。」
「うん」
「居たいと心から思ったのよ。だから、カギを置いて台座に戻った。」
「オルゴールに戻ったのね。でも、どうして玻璃を覚えていたの?カギをくれた人だから?」
「違うわ。玻璃が私とラウムの手を繋げるようにカギをかけてくれたからよ。カギを一度手放したからまた玻璃にかけてもらっても『時』には行けないけど。ラウムと私、玻璃の十一夜から瑠璃の十一夜の始まる時まで、ずっと心が繋がっていられたの。」
「だから、私の十一夜で始まったけど、記憶があった。」
「ええ。」
「じゃあ、ラウムも!」
「そうよ。」
瑠璃がそんなことも起きるんだと感心していると、突然玻璃が、
「瑠璃、聞いてほしいの。」
「何?」
瑠璃は、テリーゼの話に気を取られているのか少しうわの空でしが、暁が、強い口調で
「瑠璃、ちゃんとこっちを見て聞くんだよ。」
「何?どうしたの?そんな怖い顔して。」
「ごめん。そうだね、怖い顔になってたね。でも、パパとママの話をちゃんと聞いてほしいんだ。」
暁と玻璃の真剣な表情に瑠璃が頷くと
「瑠璃。『時』に帰ったら、おばあちゃんに必ず連絡して。そして、今晩起きた事を話して、家に来てもらいなさい。おばあちゃんは、十一夜の事わかってくれるから。」
「えっ」
「おばあちゃんが来てくれるまで、紬の家に居なさい。紬のママも十一夜の事わかってくれる。だから、ちゃんと話して大丈夫だからね。」
「うん、、、わかった。でもなんでそんなこと今話すの?」
「瑠璃、どんなに離れていても瑠璃のことが一番大切。パパとママの宝物は瑠璃なのよ。忘れないで。パパもママも絶対に忘れない。瑠璃、そばで守ってあげられなくてごめんね。」
「ママ?どうしたの?」
「愛しているよ瑠璃。離れてもずっと瑠璃を見守っている。パパもママも瑠璃を忘れたりしない。瑠璃、瑠璃、」
暁が瑠璃を抱き寄せて、玻璃もしっかりとその腕に瑠璃を抱きしめました。
「パパもどうしちゃったの?何言ってるの?」
瑠璃を抱きしめる二人にもっと抱き寄せられた時、何かにつまずきます。
「いたっ、何?」
瑠璃がその足元を見ると
「え、これって、、、なんで!どうして!何が起きてるの!」
玻璃と暁の足元に台座ができ初めていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます