第2話 十一夜の祝い
この国には、子供たちの成長を祝う節目の年があります。
三歳、五歳、七歳。
髪置き、袴着、帯解き。
昔は子供が生まれてきても誰もが大人になれるわけではありませんでした。だから、節目 節目でその成長を祝い、子供の幸福と健康を神様に願い、感謝するのです。それは今でも親たちの一番の願い。
星刻町には、この節目の祝いがもう一つ。
それは十一歳。
三歳、五歳、七歳の祝いの表す数字とはと違い、一に寄り添う 十のくらいの一。
そう、一と一が、寄り添う様に並ぶ十一歳と言う歳が、親のもとから少しずつ巣立ち、寄り添う人を探し始める歳。大人の階段に踏み出す歳とされ、星刻町ではお祝いしているのです。
星刻の子供が十一歳の誕生日を迎える日。 子供たちは、星刻教会までの坂道を自分の夢を心の中で唱えながら一人で黙って登りきる。
そして教会で神父さまから金糸、銀糸で編まれた手のひらに乗るほどに小さい巾着をもらう。
すると自分の夢が叶うのだと。
宣教師がオランダから渡って来た時からの言い伝えだそうで、星刻町では今でもこの節目の小さな祝いを大切にしているのです。
金糸銀糸の巾着の中には、教会のステンドグラスと同じキラキラと光るステンドグラスの小さなかけら、アミュレットグラスが入っています。
入っているアミュレットグラスの色は人それぞれですが、星刻町の人たちは自分の大切な守り神としてペンダントヘッドのようなアミュレットグラスを、ネックレスやブレスレット、アンクレットにして大切に身に着けているのですぐに星刻町の出身だとわかります。
町の人たちは、少し誇らしくあり、他の町の人はうらやましい。
星刻町の十一歳のお祝いには、もう一つ隠された言い伝えがあります。
十一歳のを迎える日が、満月の夜の子。
そして金糸銀糸の巾着に入っていたアミュレットグラスの色が赤だった子。
その子のところにだけ刻の女神のもとから遣わされた刻の執事がやって来ると言うものです。
十一歳の誕生日が近づいて来ると子供たちの間では
「本当にそうなのかな、刻の執事って」
「シルクハットをかぶってるんだってさ」 「言い伝えでしょ」
「そうなのかな」
「そうだよ、誰も会ったって言わないじゃん」
「私、先月の満月の日が誕生日だったけど、何も起きなかったよ」
「アミュレットグラス、赤だったの」
「赤じゃなっかけどね」
「なーんだ、でもさ、言い伝えだよ 言い伝え」
誰も会ったことがない執事。
それでも、刻の執事の存在は長い間噂されていました。
会えた子は自分のこと。そして自分の将来を考える大切な時間をもらうのだと。
執事ってどんな人なんだろう、どこからやって来るのだろう。
怖いと思う気持ちと会ってみたい気持ちで 神父さまから巾着を受け取ると、その日が満月の夜ではないと分かっていても 皆そっとアミュレットグラスの色を確認せずにはいられないのです。
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