no20...計画

 コックとマグルディン様の会話が信じられなくて、思考が停止していた私の元へ、リトルラビットから念話が届いた。 


 ピョン!


 ミクロホークの元に着いたらしい。すぐに《シェアセンス》を切り替えると、二人のヒソヒソ話しがリトルラビットの耳を通して、ハッキリと聞こえた。


「この毒、どれくらいの効き目なんですか?」


「そうだな。食べてから五分ほどで死ぬ」


「なるほど……。でしたら毒の分量を調整して、違和感に気付かない味付けにします」


「頼んだ。狙いはネルフィムだぞ。間違えるな」


「わかっております。マグルディン様」


 やはりこれは毒殺計画だ。しかし、なぜマグルディン様がネルフィム様を……。理由を考えても仕方ない。すぐにネルフィム様に……。


 いや、待って。私がこの計画を話せばネルフィム様は助かるけど、毒殺計画をどうやって知ったか問われてしまう。そして、レティーナ城の中でモンスターを使役して盗聴や盗撮をしていたことを、追求される可能性が高い。


 王都内でのモンスター使役や他領の情報の盗聴などは、かなり罪が重い。ネルフィム様には言えない。ならどうすれば……。


「……サ様。ベネッサ様」


「きゃあ!」


「ど、どうされました?」


 ふいに肩をトンと触られて声をかけられた私は、驚きのあまり《シェアセンス》を切ってしまった。


「あの、終わりましたが……」


「あ、ああ。そう、シファありがとう」


「大丈夫ですか?」


「……いえ、なんでもないの」


「そうですか、何かありましたら何なりと」


 嬉しいけど、シファに言っても仕方ない。ルインには言うべきか……。いや、彼に言ったところで同じだ。むしろ私がネルフィム様の毒殺を阻止しようとしたら「関わるなと」その私を全力で止めるのがルインだ。


 誰にも言えない……。こうなったら、ネルフィム様が毒を喰らった瞬間に殴ってでも、吐き出させるしかない。まだ試作段階だけど、この毒消しの指輪を使えば、後遺症なども少ないはず……。


 この指輪を押し当てて魔力を流すと、触れた者の体内の毒を文字通り消す事ができる。ただ完全に実験の終わっていない試作品で、どの毒に効果があるのか未知数だ。私もそろそろ舞踏会に行かなきゃいけないし、とりあえずモンスター達は一度フェルトグランに戻そう。


「《リバースサモン》」


 二匹をフェルトグランへ戻すと、支度の終わったルインが声をかけてきた。


「ベネッサ様、何かありましたか?」


 先ほどの私の驚きようを見て不信感を抱いている事が、すぐにわかった。「なんかあったなら言え」と、側近としてではなく、幼馴染のルインとしてその瞳が訴えている。


「いえ、特にはなにも」


「そうですか」


 納得していない顔だがそれ以上は聞かれなかった。


 舞踏会では、なるべくネルフィム様が見える位置にいて、食事の際には細心の注意を払おう。最悪、様子がおかしかったので助けた。で済むはずだ。


「ベネッサ様、そろそろ舞踏会へ」


「わかりました。行きましょう」


 私はお気に入りの藍色のドレスをひるがえすと、領室を後にした。


―――――――――――――――――――――


この作品を読んで頂きありがとうございます


執筆の励みとなりますので、フォローと★で応援お願いします。

「面白い!頑張れ!」と思ったら★3を

「まぁまぁかな」と思ったら★1をお願いします。ペコリ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る