第10話 朝の学院
翌日
クロッグ率いるお貴族様から執拗な嫌がらせを受けながらもレオンが助けてくれたことによりなんとか初日を乗り切ったアレスは昨日と同じく朝早くから日課のトレーニングを行っていた。
一通りのメニューを終わらせると木陰に腰をかける。
「あっれーアレス君じゃん。やっほー」
ふぅと一息ついた瞬間、前方から赤く染まった髪をたなびかせながら笑顔で一人の上級生がやってきた。
「ああ、ミリー先輩ですか」
「はい。そのミリー先輩でーす」
背にある木のほうからひょこっと顔をだし元気よく告げる。
「朝早いんですね。昨日もこの時間だったじゃないですか」
ふと疑問に思ったことを口にしてみる。
昨日の話を聞く限り先輩は優等生らしいしそこらへんもきちんとしているのかもしれない。
「私ね。生徒会に入ってるんだーこの時期はやらなきゃいけない仕事が多くって……」
「それで早いんですね」
生徒会か……少し意外かもしれない。
先輩は確かに凛としているしそれっぽい雰囲気もあるがそれ以上にそういう活動は消極的なイメージが俺自身にはある。
けれども生徒会活動をやっている先輩を想像したら結構様になってるかもな
「今、意外とか思ったでしょー。まぁ私ゆる〜い感じだし。けどやってみると楽しいんだよねーきっかけは先生に誘われたことだけど」
「へーその先生見る目ありますね。こんな優秀な生徒を誘うとは……」
と少し冗談めかして言う。
先輩は少しムスッとした顔で……
「揶揄うのは辞めてよー。でもその先生、学院内でも随一の実力者なんだよ。元帝国騎士団長とか一級指定の冒険者だとか色々な噂は飛び交ってるんだけど正体はわかんないんだよ」
「そんな人学院にいて大丈夫なんですか」
そんな怪しい人が学院内の教師をしているということはよほど信頼されているのだろうか。
「実はね。学院長の知り合いとかって言われてるんだ。」
「え!そうなんですか。」
思わず大声を出してしまった。
そうか……学院長の知り合いか。なら納得かもしれない。
と、先輩と話し込んでいたらかなり時間がたっていた。
気づけば8時前でもうすぐ自クラスに行かなければならない時間だ。
急がなければと思い俺は急いで立ち上がる。
「そろそろ時間やばいんで俺はいったん帰りますね。」
「おっともうこんな時間か。じゃあ私も寮まで帰ろうか。途中まで一緒に行こうよ」
そう告げると先輩は俺の手を取った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「おい。アレス」
教室について自分の席でゆったりとしていたらすぐそばにレオンがいた。
「お、おう。レオンか、どうした」
もしかして俺がミリー先輩と話し込んでいたのが知られたのかな。
あの人有名らしいし、広まってしまうと面倒だな。
「お前昨日は大丈夫だったのか」
「昨日?」
どうやら違ったようだ。
「ソフィアさんに絡まれなかったのか?あの人かなりプライド高そうだし、自分の誘いを断ったってのでなんか言われてないかなって」
「ああ、なんだそんなことか。大丈夫だよ。そんな心配することは何もないよ」
「そんなことって……素直に心配してるのに」
「すまん……」
まあ大丈夫ならいいが……とレオンはつぶやく
どうやらかなり心配させちまったらしい。
竜人のなかでもレオンは変わり者とクラス内で言われているがこいつはいいやつだ。
まあ竜人は偏屈な集まりであるし、人間味のあるレオンはだいぶ変わってるんだろうが。
「はーい。皆さん席についてください。」
気が付くとレイラ先生が教室内にいた。
「えっと今日は近々行われる合宿授業についての連絡です。日程は前々から言っていた通り一週間後に行われます。活動班は入学試験の点数をもとに教師側で決めます。活動は魔の樹海で行います。」
その言葉を聞いた瞬間クラス内が一気に緊張感に包まれる。
魔の樹海
それは帝国内領土にある5級から4級指定の魔物の生息地域だ。
魔物には1級から7級までの等級が存在している。
7、6級は帝国内の新米兵が倒せるほど
5級はある程度鍛えられた兵士
4級は鍛えられた兵士がある程度束になって討伐。または新米の騎士
3級は騎士団幹部が
2級は各騎士団の団長、副団長
1級は滅多に現れず、現存するだけでも一つの国を滅ぼせるほどの力を持つとされている
が各等級の討伐の目安だ。
ちなみに冒険者ランクも魔物の等級と同じような感じだ。
でレオン情報によると学院内の一年生は5級を束になってやっと倒せるぐらいらしい。
そう考えると魔の樹海に行くのは今の一年生とにとってはかなり無茶なのでは……
「えーとみなさん安心してください。各活動班には上級生が1人ずつ配置されます。で魔の樹海の奥のほうにはいかず手前のほうまでで活動するので4級の魔物はおそらくでません」
その言葉を聞いた瞬間教室内の空気少しが和らぐ。
ただ上級生が共に班員になる、手前のほうまででしか活動しないとしても人間というのはいつでも最悪の状況を想像してしまう。
教室内では合宿の詳細を聞いて全員が楽しみだったものが一気に不安、恐怖に感情がすり替わった
たった1人、アレスを除いて……
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