第169話 目を離した隙に
ダンジョンの再現し、それをプレゼントする。蒼唯からの提案は衝撃的なものであった。提案された柊も蒼唯がダンジョンを造れると言うことに疑う気は更々無い。実際、ダンジョンを研究所にプレゼントすれば安全面を言い訳にしていた研究所も実績を上げざるを得ないだろうし、研究所内にいるであろう真面目な研究者たちも目の色を変えて研究し出すだろう。
ダンジョンを研究所にプレゼントし、そのダンジョンを使い真面目にダンジョン研究に勤しみ結果が出る。こうなれば最善だ。しかし安全面から研究が出来ないという話からプレゼントの話が出たと言うことは、ダンジョンをある程度コントロールが可能という事だろう。
今の研究所にダンジョンを渡したら、ダンジョンを私物化するおそれがある。となればあくまでも所有者は蒼唯で、研究のため提供するだけという形等が適切である。そんな面倒な事を蒼唯が了承するとは思えないが。それならどのような形式での提供とするか協議する必要がある。
他にも、今でも蒼唯の価値は高騰を続けていると言うのに、ダンジョンを造れるとなればこれまで以上に注目が集まってしまう危険性や他国からもダンジョンの提供を求められたり等、様々な懸念点が存在する。
そんな状況では、流石の柊も気軽に返答は出来ないため、探索者協会に意見を求めるのであった。
リリスが、蒼唯の暴走を知ったのは、彼女が掌握した探索者協会上層部を使い、日本以外のダンジョン災害について調べさせている時であった。
【……】
「『リリス様? どうかなさいましたか?』」
【いえ、何だか凄く嫌な予感がしただけよ、続けて】
「『分かりました。此方がダンジョンブレイクが発生したダンジョンの分布となります』」
【ありがとう。これから犯人の足取りを追える――】
「失礼します協会長! 今お時間…? あ、来客中でしたか?」
「『そうだ、すまないが後に』」
【火急の用件なのでしょう? 私は構いませんよ。『ここで話しなさい』】
「「『分かりました』」」
リリスの夢魔的勘が何かを感じたのか、入ってきた職員を魅了し話させると、その勘は見事に的中していた。勿論悪い方で。
【ダンジョンをプレゼント? 蒼唯様からほんの数日目を離した隙になぜそんな話に?】
「『提案をされた来馬氏も様々な観点から判断を仰ぎたいと』」
【取り敢えず検討するから少し待つように伝えて下さい!】
協会長と職員に指示を出し、リリスは急いで蒼唯家に帰還するのであった。
――――――――――――――――
柊から返答には時間が掛かると言われた蒼唯は、ただ待つのもあれなので、プレゼント予定のダンジョンを製作しつつ待つことにした。
「さて、ダンジョン3分クリエイトの時間です!」
「まく~」
「ここにぬいたちに採ってきて貰った新鮮なダンジョン核があるです」
「ぬい」
蒼唯がこれまで造っていたダンジョンは、ダンジョン機能の一部を再現したものである。実用性を重視するため余計な機能は排除した結果であるのだが、研究用として渡すためには、実用性は無視してダンジョンの機能を十全に揃える必要がある。
しかし蒼唯はダンジョンの全ての機能など当然ながら把握していない。そのためそれらの機能が全て揃っているダンジョン核を改造した方が早いと蒼唯は判断し、まっくよに頼んで『吉夢の国』からダンジョン核を採取して来て貰ったのであった。
「このダンジョン核を少量の魔力で運用可能な小規模ダンジョンの核にするため改造してくです」
「まく~」
「いつもは核が暴走をしないように『
【有りに決まってるでしょう!】
蒼唯が何やら危険な事を言い出したくらいで、漸くブレーキが戻ってくる。
「あ、リリスです。さっきダンジョン核一つ貰ったです」
【私の半身と言っても過言ではない存在を採るのですから、事後報告は止めてください! とそんなことはどうでも良いのです! ダンジョンをプレゼントすると聞いたのですが】
「耳が早いですね。研究用にプレゼントするんです」
【そうですか…】
リリスと会話しながらもダンジョン核を弄る手が止まる様子は無い蒼唯。流石のリリスでも蒼唯が一度造る気になったモノを止めさせるのは容易ではないため、ここからどのように軌道修正すれば丸く収まるか頭をフル回転させるのであった。
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