第35話 銀色の髪の少女
「今日から、遅れていた魔法実習を開始しますが、まずは基礎のおさらい。魔法には、この世界を守護する精霊と同じ属性、火、水、土、風、光の五つの属性があります。これ以外には、種族特有の固有魔法、魔力そのものを用いる無属性魔法があり……」
いよいよ始まる魔法実習。
本来なら、『二人組になって』というぼっち系令嬢の私を地獄に叩き落とす言葉に恐怖するところだが、今の私は、むしろその言葉が楽しみでしょうがない。
「……」
だって私には、「授業は真面目に聞きなさい、殺すわよ」という氷の目線を向けてくる、どS系クラスメイトのアオイさんがいるから!
「では、得意な属性が同じ人を見つけて、二人組になってください」
来た!
今こそ、長年苦しめられた言葉に打ち勝つと……え?
……得意な属性が同じ人?
「アオイさん」
「何よ?」
「つかぬことをお伺いいたしますが、得意な魔法属性はなんでございますでしょうか?」
「言葉遣いがおかしくなってるわよ」
「今はツッコミ入れなくていいです! 切実な問題なので早急なご回答を!」
残念な人を見る目で私を見てくるアオイさん。
だが、切実な問題なのでこれはしょうがないのだ!
「……無属性ね。魔力を扱う度合いが高い魔法なら、一応、属性魔法も使えるけど」
「ということは、属性がさっぱり分からないアポカリプスとか、変な身体向上魔法を使う私と同じですね!」
……勝った!
何が得意属性だ! そんなものでは、私とアオイさんのペア結成を妨げる事なんて……
「何言ってるの。貴女の魔法は無属性魔法じゃなくて、固有魔法でしょう」
「……え?」
「無属性魔法は、魔力そのものを活用する魔法。貴女の魔法は明らかに、魔力だけでは再現できない効果をもった固有魔法だわ」
「と、いうことは……」
「貴女とは得意属性が違うわね」
……私に向けられる、絶望そのものともいえる言葉。
「アオイ様。私も得意属性が無属性なので、私と組みませんか?」
「ええ、お願いするわ」
そして追い打ちをかけるように、一瞬でペアが決まり、そのまま去っていくアオイさん。
終わった……全てが……
「……レムリアさん。あなたの固有魔法は特殊すぎるから、私が実習相手になるわ」
もはや、全てに絶望している私の肩に乗せられる、先生の手。
その手から伝わる優しさ……そして、私の中から溢れてくる申し訳なさ。
ふふっ、やっぱり私には、クラスメイトと一緒に過ごす未来なんて……
「……私の固有魔法も特殊。だから、私が組む」
「え?」
そこに立っていたのは、学校指定の体操着の上に少しぶかぶかのフードを着た、見たこともない少女。
小学生ぐらいの幼い容姿、銀色の長いツインテール。
そして、真っすぐに私を見つめながらこう言った。
「……グリム。よろしく」
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