第10話【レリックSide】

 カフェプレオープン当日の夜、私とソニアは父上に呼び出された。


「いったいどうなっている……。あの子はなに者なのだ?」


 予想はしていたが、さっそくフィレーネ殿に対する質疑応答が始まった。

 それだけ彼女に対しての評価が高かったのだろう。


「美味かっただけではない。なんとなくではあるが、あのコーヒーを口にしたあと、今までの疲労が消えていくような感覚があった」

「やはり父上もでしたか。実は私も初めて三姉妹カフェで飲んだとき、同じ現象が起こったのです」

「ソニア殿はどう思った?」

「私も同じです。特に普段慣れない掃除などを手伝い疲れもありました。しかし、紅茶を口にした直後、一気に吹っ飛びまして……」

「やはりか」


 予想どおりだ。フィレーネ殿の作ったものにはなにか特殊な効果があるのだろうと確信に変わった。


「高原の三姉妹カフェの噂は聞いていたが、まさかここまで素晴らしい飲み物を提供していたとは」

「もしも飲み物に元気になるような効果があるとすれば、国宝級ですわよ」

「そうだな。レリックよ、よくやった」

「私ではなく、フィレーネ殿に対しお褒めの言葉を進呈していただけると幸いです」

「おまえの推奨がなければこうはならなかっただろう。だが、後日その者にも感謝の意を捧げることにしよう」

「ありがとうございます」


 すべてはフィレーネ殿のおかげである。

 私からも改めて彼女に感謝したい。

 これで彼女の幸せな表情を見ることができるかもしれない。


「あの場所を無償で貸し出すと聞いたときには耳を疑ってしまったが、理由がようやく理解できた」


 これもソニアの協力があったからこそ父上の許可も降りたというものだ。

 私は、周囲の者たちに大変恵まれている。


「ところで、なぜ急に王都でカフェを開きたいと? 動機は聞いていなかったのか?」

「はい。なにやら訳ありのようでしたので、深くは聞かないようにしていました」

「ふむ……。どれ。ならばワシは三姉妹カフェに近々視察に行くとするかのう。久々に高原の空気も吸いたいと思っていたからな」


 父上は楽しみといった表情を浮かべている。

 おそらく王都でカフェが始まれば、環境の良い高原のカフェはさらに人気が高まるはずだ。

 これ以上三姉妹カフェが人気になる前に、父上も視察しておきたいのだろう。


 私ももう一度くらいは高原の三姉妹カフェに顔を出しておくべきだったな。

 しかし、私も父上も、このときは高原の三姉妹カフェの真実をしらなかったから呑気なことを言えたのだった。

 父上が視察という名の休暇を満喫しようとしたことで、自体は急変する。

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