エルフ語でこっそりデレる美少女転校生エルフは、異世界帰還者である俺には筒抜けなことをまだ知らない
高野 ケイ
第1話 美少女転校生エルフと俺
「西暦2025年異世界とのゲートが開かれて、異世界人やエルフ、ドワーフなどの異界との交流が始まりました。これにより、わが日本国は異種族の学生を交換留学し、親交を深めています」
俺の隣の席からまるで歌声のように澄んだ音が響きわたっている。たかが教科書を読んでいるだけだというのにまるで、心地よい音楽を聴いているようだから不思議である。
「そこまででいい。座っていいぞ。佐藤」
「はい、失礼します」
先生の言葉に従って着席するのは、絹の様にサラサラの金髪に、きめ細かい肌の美少女である。モデルの様なスタイルとささやかな胸が何とも魅力的だ
そして、何とも特徴的なのはとんがっている耳……そう、俗にいうエルフ耳というやつである。彼女の名前はフィーネ=シュガー。日本での名前は佐藤フィーネと実に安直である。そして、今話題に出ていたエルフの交換留学生でもある。
「佐藤さん、エルフなのに日本語うまいよなー」
「それにあの声、美しいわね。我ら合唱部にぜひとも欲しい……」
「うふふ、みなさん、ありがとうございます。皆さんと一緒に勉強したくて一生懸命頑張りましたから」
佐藤さんと呼ばれたエルフの少女はすました顔でクラスメイト達の称賛にこたえると、男子からは喝采の声が、女子生徒からは羨望のまなざしが注がれる。
そして、席に座ると得意げにこちらに訊ねてくる。
「どう、神矢。私、ちゃんと言えたでしょう?」
「ああ、佐藤……じゃなかった。フィーネは本当にすごいよ」
「うふふ、このくらい当り前よ」
佐藤と呼んでじろりと睨まれたので慌てて、名前で呼ぶと彼女は……フィーネはちょっとどや顔でわらった。
かなり嬉しそうで何とも可愛らしい。こいつはなぜか、俺が名字で呼ぶと機嫌が悪くなるのである。
『えへへー、神矢に褒められちゃった』
「ぶっ……なんだって?」
エルフ語でぼそりとつぶやいてガッツポーズしているフィーネに思わず聞き返す。こいついきなり可愛いな!!
「私が可愛いからって人の顔をみてにやにやしないのって言ったのよ」
「お前な……」
澄ました顔でツンとしたセリフを言っているフィーネだが本音がわかってしまっているためついにやける。
俺がにやけたのはお前が可愛いからじゃなくて、お前が可愛いことを言うからだよ……と言いたかったが何とかこらえる。
「なによ、エルフ語で罵倒しただけなのに興奮でもしたのかしら? まったく変態なんだから。それより、唾がついているわよ、これで拭きなさいな」
「ああ、ありがとう」
フィーネは大げさにため息をついて、ポケットからティッシュを取り出すと口に当てる。嬉しいけど、クラスメイトの視線もあるし、ちょっと恥ずかしんだけど……
ちなみに俺とフィーネは名前で呼び合っているが恋人というわけではない。転校してきた彼女の世話係を俺が引き受けて、色々教えていくうちに他のクラスメイトよりも仲良くなっただけである。
まあ、誰が彼女の世話係をするかという話になって、エルフという存在にみんながビビっている時に率先して手を上げたことによって信頼を勝ち取ったのかもしれない。
そして、俺が手を上げたのには理由がある。フィーネが可愛いからというわけではない……俺は過去の経験から、異世界へきて不安であろう彼女を放っておきたくなかったのだ。
『ちょっと抜けている神矢もかわいくて素敵……』
「……」
再びにやけてしまいそうな自分の膝をつねって案とか耐える。さすがに怪しまれるからな。
そして、わかってもらえたと思うが、俺はエルフ語がわかるのである。なぜならば俺は一度異世界転移して帰ってきた人間なのだから……
これは異世界帰りの俺と、時々エルフ語で本音をつぶやくフィーネとの物語である。
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