第27話 ウザい!
暫くしてから「部屋のご用意が出来ました」と側仕えの人が報告してきたので、王を先頭に謁見の間から部屋を移動するのだが、壁際まで飛ばされたヘリオが起き上がってくる様子が見えない。そしてそれを誰も気にすること無く謁見の間から移動する。
「ねえ、コータ。コータって呼んでもいいよね」
「ん?」
先を行く王に離されないようにと歩いている俺の隣に近寄ってきて馴れ馴れしく話しかけて来たのはマリオだった。
「なあ、冒険者なんだろ。冒険者ってどうなの?」
「どうなのって何?」
「だから、冒険者としてやっていくのはどうなのかを聞きたいんだよ」
「え~そういうのなら、冒険者ギルドに行けばいいじゃない」
「そう言うなよ。なあ、友達だろ」
「はい?」
いつの間にか俺はマリオから友達認定されていたみたいで、こちらのことはお構いなしにグイグイとこっちのテリトリーに入ってこようとするのは正直イラッとする。
「なあ、いいだろう。ケチらないでさぁ。友達だろう」
「……」
「なんだよ。いいじゃないか。なあって」
「……」
次の部屋に着くまでにマリオはコータの横でずっと喋り掛けていたが、俺はそれに応えることなくずっと無視していた。だが、アオイは我慢出来ないという感じで拳をギュッと握っていたので、俺はその手を上から握ることでなんとかアオイを宥めることが出来た。
だが、アオイがその手を見て、少し頬が赤くなっていた気がするが、気のせいだと思いたい。
なんだかんだで部屋に着き中へと案内されると、二十人掛けの大きなテーブルが部屋の中央に置かれていた。そしてその大きなテーブルの上座に王が座ると側仕えの人がそれぞれの席を案内していき、俺は王の右隣の席へと案内されようやく座れるとゆっくりとしていると、横からお茶が配膳されたので遠慮無く頂く。
「なあ、いいだろ。なあ、無視するなよ」
「……」
「マリオ様、そちらの席ではなくこちらへ」
「席なんてどこでもいいだろ」
「ですが……」
「どけ!」
「ん?」
「聞こえなかったのか? そこは俺に用意された席だ。分かったのならどけ!」
「お前、誰に向かって言ってるんだ?」
「誰にとは、また不思議なことを言う者だな。お前こそ、誰にモノを言っていると思っているんだ? お前もあの愚兄の様に壁にめり込まないと分からないのか?」
「……」
アオイがマリオに対し右拳を握って見せたことでマリオもアオイが自分の兄であるヘリオに何したのかを思い出したのか、素直に席から離れると「俺は諦めた訳じゃ無いからな!」とフラグを立てながら自分へと用意された席へと移動する。
「助かったよアオイ」
「ふん! あんな小物、いつまでも好きにさせとくからだ」
「まあ、そう言わないでよ。だって、アオイが王太子をぶっ飛ばしたのもあったから、弟までそういう目に合わせるのはどうかなと躊躇してね」
「ったく、そんなつまらないことを気にしていたのか」
「まあね。一応はこの国の王族だし」
「その割には、さっきまで好き勝手にさせていたようだが?」
「まあ……だね」
アオイに少しだけ苦言を呈されながら、回りを確認すると国の運営に関わっていると思われるオジサン達もガヤガヤとしながら席に着いたようだ。まだ一つだけ空いている席があるが、あそこが多分王太子であるヘリオにと用意された席なのだろう。
王は空席となっている横の席を一瞥すると「集まったようだな」と声に出しながら、席に着いた人達をぐるっと見回す。
「陛下よ。いきなりの招集で何を話し合うのかもまだ聞かされていないのですが……それとそこにいる少年と女性は?」
王に対し「一体、なんで呼ばれたのか」と質問したのは、先程の謁見の間での出来事を聞いていないのだろう。見ていたのであればそんな質問は口にしないだろうし、隣に座っているオジサンは俺を刺激するなと言わんばかりに隣で好き勝手に話しているオジサンを一生懸命に「余計なことを言うな!」と目で制しているが、それに気付く様子もなく王と俺達を見ている。
「そのことについて話す為に集まってもらったのだ。まだ揃った訳ではないが、先程謁見の間にいなかった者もいるようなので、先ずはそこで起きたことを説明しよう」
「では……」
王がそう言い終わると横に座る宰相に目で促し、宰相もそれを受け取り謁見の間で起きたことを事細かに丁寧に話し出す。
宰相が話したのは姫さんの襲撃から始まり、何故王妃達がそれを計画し、実行したのか。それを裏で操っていたのは誰なのかと話したところで王がそれを引き取る。
「……そういう訳だが、ジャミールは簒奪を計画した罪と余の妃達を裏で操り、ソフィアを害しようとした罪で既に捕縛済みである」
「ジャミール様が……」
「それではシャムザ様はどうなるのか……」
「では、ジャミール様は魔族と結託して……」
宰相の説明が終わり、王がジャミールを捕縛したところまでと話すと、ここで漸く「何故集められたのか」との理由に納得したのか、集められた皆の顔が引き締まったようにも見える。
「シャムザに関する扱いは今のところ保留だ。ジャミールとの関与がハッキリするまでは彼奴の地位などは停止させるので、下手に近付かない方がよいぞ」
「「「はっ!」」」
「それで宰相の説明で分かったと思うが、魔族の手の者が既にこの国に紛れ込んでいるのは確かだ。接触したのもジャミールだけではないと思うが、具体的なことを聞く前にそこの少年……コータ殿に魔族である
「魔族……」
「
「いや、まさかな……」
王が魔族との接触がジャミールの他にもいるだろうと話を締めくくればどこか思い当たる節があるのか、数名のオジサン達の様子が挙動不審となる。
「あ~やっぱり他にもいたんだ」
『肯定します』
「もしかして、全部
『肯定します』
「……聞いちゃいけないけど確認したいから聞くけど、やっぱり男の娘だったりするのかな?」
『……肯定します』
おうふ!
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