第63話:山田の日常その2

さてと、そろそろ出かけましょうか?

花子のご希望だから430で出かけるのはいいとして、問題は警察ね。

毎回停められるのよね。悪いことしてないのに。

あらかじめ連絡しておこうかしら?


待っていくものも特にないし、スマホと財布があればいいかしら?

免許を忘れるとシャレにならないからね。

よし、行ってくるんだよ!


『そこのフェラーリ停まりなさい』

はいはいはい、わかったわよ・・・

「免許証の確認をします」

何も違反はしてなかったと思うけど?

「はい、確認出来ました。問題ありません」

まったく、これだから・・・

だいぶ時間を食ったわね・・・お昼を食べる時間あるかしら?


よし、到着!

時間は12時30分。昼休み中かしら?

どこかにお弁当を食べるところはあるかしら?

中庭とか屋上とか・・・ベンチでもないかしら?


花子にメッセージを送ってみようかしら?

『花子、お弁当を食べる場所ってない?』

うーん、電源が入ってないのかしら?既読にならないわ・・・

受付とかで聞いてみることにしましょう。


「嬢ちゃん、迷子か?」

いいえ、今日の授業参観に参加する保護者よ。

「保護者?学校の見学じゃなくてか?」

ええ、2年A組の山田花子の保護者よ。

「マジかよ、若く見えるとかそういうレベルじゃないな・・・」

免許証を見せて納得してもらった。


「どこか弁当が食えるところ?」

ええ、ベンチとかがあればそれでいいんだけど?

「別に学食を使えばいいんじゃないか?」

学食があるの!?

だって、給食を食べてるんでしょ?

「中等部はな。高等部にはあるぜ?」

でも、私が用があるのが中等部よ?

「食堂を使う程度なら問題ないぜ?」

で、それはどこにあるの?

「向こうの建物の1階だ」


なるほど、ここが学食?テラス席もあるのね・・・

まあ、目立っても仕方がないからすみの方で食べましょう。

一番端の人気のない席で持ってきた弁当を広げる。

ああ、やっぱり佳乃のお弁当はおいしいわね。

冷めてもおいしい組み合わせになってるってのもあるけど・・・

うん、量もぴったり。完璧なお弁当ね!


きーんこーんかーんこーん


あら?

チャイムが?予冷よね?

もう時間かしら?

でも、次って5時限目よね?

授業参観は6時限目。1時間ほど時間があるのね・・・

何をして時間を潰そうかしら?

スマホがあれば時間はいくらでも潰せるけど・・・

図書館でも見てみようかしら?でも、勝手に入って怒られるのも嫌だし。


それよりも、ここっと高等部の敷地だっけ?

中等部の校舎に戻っていた方がいいわね?

ここの敷地結構広いし。


ぽてぽてぽてぽて・・・


あれ?どこから来たんだっけ?

確かあの建物だったはず・・・

ふっふっふ、さすがにこの程度では迷子になんてならないんだよ!


いつの間にか残り10分だけど、まあ問題ないわ。

2年A組の教室に行かないと。

3階まで登るのよね・・・

目の前にそびえる階段。これを攻略しないといけない。


ひぃはぁひぃはぁ・・・どうにかたどり着いたんだよ。


きーんこーんかーんこーん


5時限目が終わったね。どうにかぎりぎり間に合ったかしら?

さてと、A組の教室なんだけど・・・うん、花子も中に居るわね。

教室の後ろに居ればいいのかしら?

他の保護者の人も居るみたいだし、準備完了!


-ねえ、かわいい子がいるよ-

-誰かの妹かな?-


きーんこーんかーんこーん


「はーい、授業を始めるよ!今日は保護者の人たちが見てるけど気にしないでいつも通り頑張ってね!」

結構若い先生だね。

「あら?なんでお子様が居るの?誰かの妹?」

花子が手をあげる。

「雛森さんの妹?」

いいえ、花子の母親代わりよ。

だから私のことは気にしないで授業を続けて。

それにしても先生も雛森って呼ぶのね・・・


「じゃあ、次ここのところを訳して!」

花子が手をあげる。

「はい、雛森さん!」

さすが勉強が得意なだけはあるわね!佳乃だったら手を上げることはないと思うし・・・


「我が命尽きるまで汝の剣となり盾となって従うことをここに誓おう」

え?

「雛森さんは原作を読んでるのかしら?確かに原作ではそう書かれていたわね」

先生の指摘に対して花子が訂正する。

「教科書の訳としては、『私の寿命の限りあなたの剣及び盾として一緒に居ましょう』が正しいと思う。セリフが改変されている」

うわぁ、めんどくさいヤツだ・・・

だけど、花子っぽい。

「ええ、まぁ、そ、そうね・・・」

先生もしどろもどろだ・・・かわいそうに・・・やりづらいだろうなぁ・・・

それにしてもどんな教材使ってるのよ!?


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