補足資料:映像2 タイトル:関係者、怪異に対抗できる人間以外絶対に見るな
録画映像再生
<20XX年7月22日 13:20>
以下は映像の書き起こしである。再生すると直ぐ40代後半くらいの男が映像に向かって話しかけ始めた。場所は不明だが、恐らくK町の何処かだろうという確信はある。映像に映るのは画面の下側から順に雑草の緑、アスファルトの道路と続き、映像中央でやや上は茶色い土がむき出しなった未舗装の道路があり、その奥には鈍色のフェンス、そしてそれ以外の全部は緑色だ。男が座るのは画面中央付近の未舗装道路のど真ん中。ソコには人が座れる程度の岩があり、男はソコに腰かけている。耳をすませば水の流れる音を捉えた。どうやら近くに川があるらしい。
男:色々調べて分かったことがある。願わくば、もう俺達の様な不幸な人間を出さない様にして欲しい。そんな一縷の望みを託し、この情報を映像に残す。行方不明の元凶はG県の奥まった場所にあるK町という山間の田舎町の奥まった場所に建つ古びた神社だ。小さな町にあるごくありふれた神社の名前は口に神社と書く。誰もが恐らく"くちじんじゃ"って呼んじまうだろうが、正しい呼び名は違う。"はこじんじゃ"、コレが正解だ。(空中に指で四角を描きながら)はこ。そう、箱だ。中身が空の箱は得体の知れない何かを封じる為のハコだ。
男は言葉を止め、ズボンのポケットから煙草を取り出すと一息入れた。手元を見れば細かく震えている。
男:口とかいて箱と呼んだりと、この辺には特に他とは変わった独自のルールがある。日本の何処にも無い、まるでこの場所だけが日本から切り離されている様な気さえしてくるが、そいつは間違いじゃない。これは呪いだ。超特大の、表に出ちまったらアウトな超ド級の何かを封じる為の呪いだ。あの村は代々、そうやって何かを封じる為に生きて来たんだ。なのに誰かが興味本位でつついたか、あるいは自然現象により綻んだが……とにかく、得体の知れない何かの封印が解けた。
男が煙草を足元に捨て、足で揉み消した。極度の緊張からか、足が震えている。
男:コイツの特徴は……多分、最悪な特徴だ。これ以上なく最悪なんだ。だから何も情報は教えられない。謎かけみたいになっちまうが許して欲しい。答えは
カラン カラン――
男は不意に話を止めた。画面外から小さく響く下駄の音に男は周囲をキョロキョロと見回し始めた。様子が明らかに変わる。狼狽え、立ち上がるが、何か覚悟を決めた様に再び腰を下ろした。
――こんにちわ
映像に女の声が混ざる。声色から年齢は相当に年若く、牧歌的な田舎町には似つかわしくない。恐らく~20代半ば程度と推測される。男が石から退くと女に座るよう促す。女が指示に従い座る。映像正面に和服女の姿が映るが、赤い和傘に隠れて顔は見えない。辛うじて覗く肌は極端に白く、髪の色も同様に白く見える。が、一般的な老化による白髪とは違い滑らかで光沢があり、生まれながらの白い髪、いや銀色の毛の様にさえ見える。
――今日もお仕事ですか?
男:え、えぇ
――まぁ。大変でしょう?
女が語り始め、男がソレに答える。内容は雑談が中心。この地域、恐らくG県K町か?に伝わる昔話の他、久方ぶりにこの街に戻って来たといった話をしている。特に異変らしい異変はなし。重要度の低い雑談の為、割愛。
異変確認。映像の時刻は13:34 他愛ない会話の最中、女の和服が奇妙に揺れ動いた直後、腰部と臀部の間から巨大な白い毛に覆われた何かが出現した。形状から獣の尻尾と表現するのが一番正しいように思えるが、その大きさは女の1.5倍ほどはあるように見え、仮にこの女が獣であったと仮定しても酷くアンバランスだ。和傘の隙間から女の口元がほんの僅かに覗く。真っ赤な紅が引かれた唇は弧を描いている。笑っている。怖い、こわいこわいこわいをわいわいあうぃあ
13:35 白い尾のような物体が男の右腕を撫でる。直後、何かを咀嚼する音が聞こえ、同時に真白かった尾の一部が真っ赤に染まる。尾がゆらりと男から離れると、ソコに男の腕ないなんでkうああれあたうそだろ
1336 うでをくわれたのにおとこはなにもかんjんじてない。ぼたぼたと垂れ落ちる血が男の服を添えメモ、男は雑談を続ける以下その内容
男:なんだかさむい
――いしょうきしょうだそうですね。わたくしよくぞんじませんがだいじょうbですか?
男:はは、いやじびょうでね。うでのちょうしがちょっと、アレ?なんでだろう?うごかない……
1337 おんなのしっぽがおとおのあしをなえでうr。やっぱり食べるおとが聞こえるたべてる。生きながらたばえてるたべられいれるなんdねどうしえ?
1339 村民が通りかかる。以下かきおkそい
――あんれ、こんなところでどうなさった?
男:いえ、いなかの……け、けしきがね。ホラ、まちはくうきとかきたない……んで、ね?
――ほーかほーか。まぁこんな田舎にはそれkるあいしかないわな。ハハハ
1340 むらびととおりすぎる。おとこのへんかにはまったくきづいていない。おんなのしろいをがおとこんからだをなでうr。ボリボリという嫌なおとおとと、なんでたべられおとがひさびき、おとこなからだがくずへおちすようひよこたわる
男:あぁ、ねmいなぁ
――てんいきがよいですものね
男:そ……だ……こ、えn……
しろいおに男のぜんしんがかくれるいやくわれている。そしゃくおn、なにかをかみくだくボリボリといういやなおと。なんだこれなんあだkろえなんでなんdね
1342 女がおをのえkるとソコにひとのすがたはなかったただそれらしいなにかがあったこんせきがおびrたたしいけっこんとしてのもっているだけだった。おんなはたちあがらい、えいぞうみぎがわにむけあるきはじめ
カラン カラン――
※※※
落ち着くまでにどれだけ時間がかかったrだろうか。誰もが暫くその音を無言で聞いていた。映像は最終盤に差し掛かり、下駄の音だけがしずあkに響く牧歌的な風景を映した弾纏まった。誰も何も言えなかった。あそこでおこたのは一体何だたたのか。マジックか?俺達はまたはめられたのか?そうだよな?そうにきまっている。その方がまだマシだと、誰もが何の根拠もなくそうやって高を括り、腹の底から冷える感覚を誤魔化そうと躍起になっている最中……
――ミタナ?
映像から女の声が聞こえた。さっきと全然違う、酷く冷めた声だ。全員がビクッと肩を震わせ、同時に意識を映像に向ければソコには目が映っていた。獣の様に細長い瞳孔が映像一杯に映っている。映像は、今度こそソコで途絶えた。
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