第340話 ◆課長と呼ばれる存在
薄暗い巨大な一室。
壁一面のモニターの光だけが一人の男を照らす。
男の名は【
七海建設の社長であり、日本建設業界の第一人者。
七海の名は世界的にも有名で、民衆もまた七海建設を日本の企業として誇りに思っている。
「――それで、一体何の用だ?」
部屋に響く歪な声。
その声は加工され、男とも女とも判別が出来ない。
ノイズの波が人型を形成し、モニターに映っている。
モニターの前では七海が足を組み替え、アルコールの入ったグラスを片手に言う。
「KWNが動いたのだよ」
『ほぉ、それで?』
「おそらく荒神の婆も動いている」
『ふん、お前は目立ち過ぎだ』
「君らの組織は目立たな過ぎだと思うんだが、【
『当然だ、我々はアノ国と貴様を繋ぐだけ。目立ったところで何の得にもならん。何の用だ? 世間話をしたい訳でもなかろう?』
「KWNの川奈が、私の調査に向けて依頼を出したのが【
七海がその名前を出すと、
七海がグラスのアルコールを一気に空け、口から漏れる雫を拭いニヤリと笑う。
すると、ようやく課長の声が部屋に響いた。
『…………【
「あぁ、【命謳】だ。そちらの動きをことごとく邪魔した、あの【魔王】伊達玖命が代表を務めるクランさ」
『そこに貴様の思惑がなかったとは言わせんぞ』
「何を言っている。邪魔な土地にモンスターを引き入れる。町は壊れ、人は消える……土地は安くなり、
『発見も早かった……木の上の
「それだよ」
『何?』
七海は再度グラスにアルコールを入れ、モニターに映る課長に向かって言った。
「とある場所に
『とある場所?』
「今座標を送る」
言いながら七海はスマートフォンを操作する。
『…………これは』
「あの伊達とかいう男、そろそろ痛い目をみないとわからないらしい。自分がどれだけちっぽけな存在なのか、私がどれだけの高みにいるのか……それを知るにはまだ若いが……まぁ、無恵の秀才とまで呼ばれる男だ。教訓としてしっかり自分の立場を理解するだろうね」
『……趣味の悪い男だな』
「まぁ、麻衣の市場価値も上がってきた頃合いだ。適当な理由を作ってKWN堂を辞めさせ、私との再会を演出。ふっ、完璧だろう?」
『手配をするにも魔石がない。少なくとも
「問題ない。
『では、魔石の用意が出来次第、受け渡し方法を連絡する。予定にない設置だ。金はいつもの三倍。それで文句はないだろうな?』
「ははは、クオリティをあげてくれるなら五倍出そうじゃないか」
『その話、嘘はないな?』
「私を誰だと思っている」
『ふん……そうだ、例のプロトタイプ、都合がついてな。使うか?』
課長のその言葉を聞き、七海の目が見開かれる。
「本当かっ!? よこせっ!」
その変わり身に、課長の笑みがこぼれる。
『ふふふふ、余程欲しかったと見える』
「いつだ……いつになる……!?」
『では、魔石を用意出来次第……』
そう言って、通信が切断される。
「ま、待てっ!」
言うも、七海の言葉は虚空に響くばかり。
「……ちぃ、仕方ない!」
そして、窓の外を見下ろしニヤリと笑う。
「……伊達玖命。私に盾突くとは愚かな。麻衣もその内に気付く。地位も、金も、力でさえも……! この私に敵う者などいないという事に……!」
拳を握り大きく笑う七海――そんな七海総一郎を遠くから視認する存在。
「おーおー、すっげぇ顔だな。【
人差し指と親指で輪を作り、その中心に七海を捉えて離さない。
熱き魂を持ったリーゼント男――鳴神翔。
「ありゃ、何か企んでる顔だな……? 一応、
鳴神がスマホを取り出すと、そこには大量の通知があった。
スマートフォンを操作し、
【命謳】のグループチャットを起動すると、そこには――、
――四条棗さんが写真を添付しました。
「んあぁ? 【
四条棗――――ららの運転
Rala―――私がやりました……。
水の谷の結莉―ビルで休憩してたからビックリしちゃったよ
たっくん―――
玖命―――――既にガラスの張替えは完了し、【ポ狩ット】や、周辺の店舗。派遣所への謝罪は済ませました。
天使ちゃん――伊達が請求書見て青ざめてたのマジ笑ったわ
「天使ちゃんって……? あぁ、こりゃ斥候の
鳴神がブツブツ言うも、それは長く続かなかった。
口がピタリと止まり、視線が鋭くなる。
「……俺様の背後をとるたぁ、中々やるじゃねーか?」
鳴神が振り返ると、そこにいたのは――、
「よぉ、鳴神……翔……!」
ニヤリと笑う大男。
その男を見、鳴神は指を差して驚きを見せる。
「て、てめぇ、
そう、そこに現れたのは、【インサニア】の代表、【
◇◆◇◆◇◆◇◆ 後書き ◇◆◇◆◇◆◇◆
WEB雑誌【COMICユニコーン】発!
コミカライズ版『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』第一巻の発売日となりました。
漫画:はやさかめばゑ
原作:壱弐参
皆様、是非手に取って読んで頂ければ幸いです。
下記、特典情報です。
◆電子書籍特典画像
背中合わせの伊達兄弟に加え、デフォルトイラストの水谷と相田さん。
◆書店共通(紙媒体)特典ペーパー
⇒コミック一巻では登場しなかった【川奈らら】ちゃん。
◆メロンブックス特典ペーパー
⇒エネルギーチャージする【相田好】さん。
◆書泉・芳林堂書店特典ペーパー
⇒一巻では大活躍の【水谷結莉】くん。
◆ブックファースト新宿店特典ペーパー
⇒八南高校の制服姿の【伊達命】ちゃん。
サンプル画像を見られるので下記、COMICユニコーン公式HPのリンクをご参考くださいまし。
⇒https://unicorn.comic-ryu.jp/blog/tensaihakenjo01/
では、また18時にお会いしましょう٩( ᐛ )( ᐖ )۶
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