第30話 夜会スタートです
「待ってくれ、リリアーナ、僕とダンスを踊ろう」
なぜか私たちの元にやって来た殿下。この人は一体何を考えているのだろう。
「殿下、ファーストダンスはエスコートしてくださった殿方と踊るのが、この国のルールですわ。それでは失礼いたします」
殿下に頭を下げて、再びグラドル様の手を取り、ホールへとやって来た。そして2人でダンスを踊る。
「あの、リリアーナ嬢。殿下はもしかして、リリアーナ嬢の事を…いいや、すまない。ちょっと気になって」
「いえ、こちらこそ申し訳ございません。ただ…その…」
殿下の気持ちを私が勝手に伝えていいものか分からず、言葉を濁す。
「やはり殿下はまだ、リリアーナ嬢に未練がおありなのですね。ずっとこちらを見ていらっしゃいますし。それにここ1ヶ月、全ての夜会に顔を出しては、すぐに帰って行かれるそうで。もしかしたら、リリアーナ嬢が参加していないか、確認していたのかもしれないね。そこまでするだなんて、すごい執着だな」
そう言って笑っている。チラリと殿下の方を見ると、確かにこちらをずっと見ていた。さすがにあそこまで凝視されると踊りにくい。
曲が終わると
「リリアーナ嬢、今度は僕と踊ってください」
「いいや、僕と」
「俺と」
有難い事に、沢山の殿方が私の周りにやって来たのだ。
「相変わらずリリアーナ嬢の人気はすさまじいね。リリアーナ嬢、今日はありがとう。また機会があったら、ぜひエスコートさせてほしい」
「こちらこそ、ありがとうございました。ええ、またぜひ」
グラドル様、紳士的で素敵な殿方だったわね。他の殿方の事を考えて、1曲で身を引くだなんて。謙虚なところも素敵だわ。
さて、次はどなたと踊ろうかしら?有難い事に、沢山の殿方が集まって来てくれている。
「リリアーナは、次は僕と踊る事になっているのだよ。悪いが君たちは諦めてくれるかい?」
令息たちの前に立ちはだかったのは、殿下だ。グラドル様とは対照的に、他の令息たちを威嚇している。
「お言葉ですが殿下、リリアーナ嬢は今フリーです。色々な令息たちと交流を持つ権利があるのです」
「そうです。僕達はずっとリリアーナ嬢と踊りたくて、ここで待っていたのです。殿下もリリアーナ嬢と踊りたいのなら、順番に並んでください!それとも、殿下ともあろう男が、順番抜かしをするおつもりですか?」
「分かったよ…ここに並べばいいのだね」
令息たちの凄い勢いに負けたのか、殿下が大人しく並んでいる。ざっと見たところ、6人程度並んでいるわ。私の体力、持つかしら?
そう思いつつ、令息たちとダンスを踊っていく。もちろん、ダンス中は色々と会話をする。さすがに踊りすぎて足が痛くなってきた。次は殿下か…断ってもいいかしら?でも、ずっと待っていてくれたし…
どうしようか考えていると
「リリアーナ、ずっと踊り続けて疲れただろう?僕とのダンスはいいから、少し休んだ方がいい」
なんと、殿下の方から休憩を提案してくれたのだ。
「ありがとうございます。それでは、少し休ませていただきますわ」
殿下に頭を下げ、彼の傍から離れようとしたのだが…
「リリアーナ、こっちに椅子があるよ。ここに座って休むといい。今飲み物を持って来るから待っていてくれ」
私を椅子に座らせると、急いで飲み物を取りに行く殿下。さすがに王族に飲み物を取りに行かせる訳にはいかない。
「殿下、お待ちください。自分で取りに行きますから」
そう言って立ち上がった時だった。
「あら、リリアーナ様。お久しぶりですわ」
やって来たのは令嬢4人組だ。この子達、毎回私に絡んでくるのよね…また面倒なのに捕まったわ…
「あの、私は急いでおりますので、ごきげんよう」
さっさと撒こうとしたのだが
「お待ちください!今日も令息たちを従えて、随分といいご身分ですわね。その上、殿下まで。お可哀そうに、ご自分の意思であなた様を傷つけた訳ではないのに、あなた様にあれほどまでに気を使われて…殿下も被害者なのに」
「本当ですわ。それにしても、リリアーナ様はラッキーでしたわね。マルティ様が殿下に魅了魔法を掛けて下さって。そのお陰で今、大人気ですものね」
「もしかして、わざとマルティ様に魅了魔法を掛けさせたのですか?まあ、恐ろしい」
そう言って笑っている。いくら何でも、これは酷すぎるわ。
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