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ミネルウァ邸に到着すると、ルフェルニアは一息つくまもなく、アンナとトルメアに引っ張られていった。

連れていかれた部屋の中には、とても素敵なドレスがトルソーにかけられていた。


白の花柄のレースを基調として作られた広がりの少ないAラインのドレスに、青空のような色のシフォンが所々薄く重ねられている。


ルフェルニアは思わずそのドレスに見入ってしまった。


「とっても綺麗ですね…!」

「喜んでくれてうれしいわ。まずは着てみてくださいな。」


アンナに促され、ルフェルニアは侍女の手伝いで着替えると、そのドレスのことがますます好きになった。

サイズはぴったりとルフェルニアにフィットしていた。

ドレスの広がりは控えめだが、動くたびにふんわりと舞うシフォンが美しく、ルフェルニアは思わずその場で何回もくるくると回ってみせた。


「本当に素敵なドレスをありがとうございます!」


これならば、国王の御前に相応しく気品のある格好で、なおかつ華美過ぎないので他の受賞者との釣り合いも取れることだろう。ルフェルニアはアンナのセンスに感謝した。


「アンナ様、娘にここまで良くしていただきありがとうございます。」


「とんでもないわ。ルフェルニア嬢のことは私も娘のように思っています。…ルフェルニア嬢、私も貴女をルフェ、と呼んでも良いかしら?」


アンナは照れたようにルフェルニアに言った。


その美しい表情はユリウスにとても良く似ていてルフェルニアは思わず魅入ってしまったが、すぐに我に返ると嬉しそうに破顔した。


「もちろんです、アンナ様。ぜひルフェとお呼びください。」

「ありがとう、これからも母子ともども、どうぞよろしくね。ユリウスに困ったことがあったらいつでも言ってほしいわ。」


(では、あの変な距離感を直すように言ってください。)


ルフェルニアはそっと心の中だけで呟くと、アンナに頷いてみせた。


その後、ルフェルニアはアンナとトルメアから明日の作法についてレクチャーを受けた後、明日の髪形とお化粧についてどのようにするか、侍女たちも交えて、執事が夕飯の声をかけにくるまで、延々と楽しく話していた。

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