第40話 レベル確認と補給

「ええと。ちょっと待ってください。ねえ、タツ。空腹が満たされていないっていうことは分かったけど、命に関わるようなことじゃないよね?」

「は、はい――」


 いや、ちょっと。そんな風にうつむかれると心配になるんですけど。

 図体がデカくて威圧的に見えるタツだけど、しょんぼりした感じが伝わってくる。


「なんていうか、まあ。まずは隣国に行って、とにかく人のいるところで落ち着いて話しませんか」

「はあん?」


 どうしてシモーネさんがキレるんです?


「だってほら、キュウに鉄を買ってやりたいし。あと――ええと。何か必要な物があるかもしれないし」

「何が必要なんじゃ?」

「え? ええと――まあ、店をのぞけば思い出すかも――」


 バン! バン!


 右、左と往復するように枝を振ってから、シモーネさんは枝を地面に叩きつけて俺を睨んだ。


「いったたた。ちょっとシモーネ様。なんですかいきなり。もうー」

「こやつも、お主の従魔じゃろうが。スライムは猫っ可愛がりするくせに。それに、火山に行けば鉱物なんぞゴロゴロしておるわ」


 ……う。確かに。

 痛いところを突かれた。

 そうだよね。可愛くないってだけで優しくしないっていうのはひどいよね。


 あー。俺って結構嫌な奴だったんだー。ごめんよー。



「タツ」


 タツがビクッと震えた。

 わー。こんな俺なんかを怖がらないでー。


「あー。たっちゃん。ええと、たっちゃんは生まれたばっかりだから、ちゃんと必要な栄養? をとらないといけなかったね」

「……え?」


 タツが両手の鉤爪を胸の前で合わせて俺を見下ろしている。

 ひぇっ。

 なんか火の玉でも投げられそうな感じに見えるんですけど――これも偏見だよねー。

 重ね重ね申し訳ない。


「え、えっと。シモーネ様。その火山なんですけど――」

「キュウ! キュウも早く行きたいでしゅ。いっぱい食べたいでしゅ」


 もうキュウったら。鉱物がたくさんあるっていうのを聞いていたんだね。


「ここからどれくらいかかるんです? 絶対に隣国へ行くより遠いですよね?」

「当たり前じゃ。人なんぞが近寄るところではないわ」


 ええーー!! 俺、人ですよ? あなたもですよね? 


「お、俺たち、そんなところにどうやって行くんです? 行っても大丈夫なんですか!?」


 シモーネさんは、ニヤリと薄笑いを浮かべてタツに視線を投げた。


「いい具合に成長したんじゃ。なんの問題もない」


 ま、さ、か……?


「シモーネ様。それって――」


 シモーネさんはニヤついたままはぐらかした。


「まあ、昼飯を食ってからじゃ」


 もうー。また勝手に決めて。




「そういや、キュウとタツはどれくらいレベル上がったのかな?」


 キュウが誇らしげに、うにょんと両手をバンザイして応えた。


「キュウ! たくさん上がったでしゅ。たっちゃんも一人でいっぱい倒したでしゅ」


 ほっほう。どれどれ。

 え? え? マジで? 

 君たちって、ご主人様を置いてけぼりにしてない?



 キュウはレベル31、タツはレベル11。すごっ!

 いや、ドラゴンなんだから強いんだろうけれども! レベル上がるの早くない?



 おいおい。もう完全に置いていかれてる俺。まあ、レベル上げやってないんですけど。






 じゃ念の為、満タンにしてやる? 



 魔力ポーションをコピペっと。今、十本だから、とりあえず倍の二十本に。

 えーと。まず俺の魔力を満タンにするには――ちょうど十本か。また十本一気飲みか。



「よっし。まずはキュウからにしよっか。チューチューする時間でしゅよー。おいで!」

「キュウ!」


 魔力と体力の補給の意思を汲み取って、キュウは勢いよく俺の腕の中に飛び込んできた。

 うっふっふ。

 俺の方からキュウにぶにゅっと顔を埋めて補充してやる。


 うーん。まだ慣れないけど、キュウが、ぷにょぷにょと嬉しそうに動いているのは分かる。


「キュウも満タンになったでしゅ」

「そっか。よしよし」


 念の為キュウのステータスを確認すると、魔力も体力もマックスになっていた。

 じゃ、次は。うっ。いやいや。怖くない。怖くないぞー。

 いや。やっぱ怖い。タツに魂を丸ごと吸われるようで怖い!


 でも、まだ今のステータスなら、マックスいってもまあ大丈夫か。

 どうする? 俺が翼の端っこにでも触るか?

 キュウと逆で俺が抱きしめられるようなのは、マジ勘弁!



「ええと。たっちゃん? ちょっとだけ翼に触るから、じっとしててね」

「はい」


 タツは消え入りそうな声で返事をした。体の大きさと声とが合ってないから、なんか変な感じ。


 俺が翼に手を伸ばすと、タツも翼を俺に伸ばした結果――俺はタツの鉤爪を握っていた。


 ひぃっ! いやいやいやいやいや。ここで悲鳴を上げるとタツが泣くから! 絶対にへこむから!


 やっとの思いで悲鳴を飲み込んで、「タツ。俺と繋がってるのを感じる? 俺から魔力と体力を吸い取ってごらん」と、頑張って優しく声をかけた。

 ものすごく上の方にあるタツの顔。その顔がぱあっと破顔した。

 ……あ。嬉しいんだね。すごく喜んでいるのが分かるよ。


「はいっ」


 珍しく元気よく返事をすると、タツは一度に思いっきり吸ったようで、俺の体の中からズンっと肉を削り取られるような感覚がした。


「うっ。えっとね。たっちゃん。次からはゆーっくり、ちょっとずつにしてもらえるかな」

「す、す、すみません! すみません! 気をつけます! ごめんなさい!」

「いやいや。叱った訳じゃないから。そんな、謝んなくていいから」

「……はい」


 あー。また落ち込ませちゃった。そんなつもりはないんだよー。うまくいかないな。




 ……で。結局、俺の魔力を満タンにするために、もう一度、コピペして七本を一気飲みをする。


 もう無理。疲れるー。しばらくはやりたくない。

 

 ヘロヘロの俺と違って、体力が有り余ってるキュウは、タツに体当たりをして遊んでる。満更でもなさそうなタツを見ていると、ちょっとだけ気持ちが和んだ。



<俺のステータス>

Lv:25

魔力:75,960/75,960

体力:19,950/22,600

属性:

スキル:虫眼鏡アイコン

アイテム:ゴミ箱、デリバリー館、ウィークリー+、ポケット漫画、緑マンガ、これでもかコミック、ユニーク、武将の湯、一休み、無地、洗濯屋、魔力ポーション(13)、体力ポーション(4)、72,102ギッフェ

装備品:短剣

契約魔獣:スライム、レッドドラゴン


<キュウのステータス>

Lv:31

魔力:78,770/78,770

体力:1,490/1,490

属性:水

スキル:感知、水球、氷刃、水結界、???


<タツのステータス>

Lv:11

魔力:3,060/3,060

体力:2,150/2,150

属性:火

スキル:レッドファイアー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る