第13話

「なるほど。そういう事か。バルセご令嬢によくお礼を言っておきなさい。ご令嬢が困った時は君も助けになってあげるんだぞ」


「…ええ…お義父さま。」


に…睨まれなかった…。

アイリスが来たあと、もし何か言われたらと考えておいて良かった…。シャンドラが睨んで来ないことには不思議に思うけどやり過ごせてほっとする。


「メイシー…私のために手を加えてくれたのに申し訳ないんだけどあのドレス…念の為に元に戻して置いて欲しいの」


メイシーは悔しそうに今にもまた何かを吹き込みそうな雰囲気だったけれど先手を打った。


「……かしこまりました」

静かに部屋を出ていった。

多分あのドレスはもう元に戻してはくれないだろう。


その後はお母様も「さっそくいいお友達が出来たのね。」なんて言ってくれて普通に食事を済ませ部屋に戻った。



"ナーシャ、言ってやったわね♪"

ティエラは嬉しそうにナーシャの周りを大きな猫の姿でスリスリとしてくる。


"ふふ。こんなに普通の食事がみんなで出来るなんてびっくりしたわ。けどメイシーにちょっと冷たすぎたかしら…"


"そんな事ないわ。けどあの雰囲気…なんだかシャンドラをそそのかしてるのはメイシーって感じよねぇ"


"うん……私もそんな気がしてきたの…"


"まぁあの女には気をつけるに越したことないわね。シャンドラにも今後はきっちり思ったことを言うべきよ?何かあったら私たちがいるんだから"


"うん…これからは自分の気持ちはきっちり伝えてみるわ。ありがとうティエラ。"



コンコン「お嬢様。ドレスなんですが…散りばめた宝石がレースに引っかかってしまって…元に戻らなくてなってしまったんです…本当にごめんなさい…」


「……そう。いいわ。どうにかしてみるわ。いつもメイシーに頼りっきりでごめんね」

あなたは何故わざとわたしを困らせるの?

そう言いたくなった。けど今言ったところでとぼけるはずだからこれ以上は何も言わなかった。


「…お嬢様」

うるうるとするメイシーにいつもならぎゅっとハグをして大丈夫よ。何とかなるはずとでも言っていただろう。

けれどメイシーの本性に気がついた今もう何も言う気にはなれない。

「お嬢様本当にごめんなさい…お嬢様は…もうわたしに呆れてしまいましたか?」


呆れた?…もうそんな言葉では片付かない所まで来てるわ…。


「ううん。そんなことないわ。メイシーいつもありがとうね」思ってもない言葉を言うのは慣れてるはずだけどどこか素っ気なくなってしまう自分がいる。

メイシーのことは出会った頃から今までずっと…信用してたから。


「お嬢様はあのお茶会の日から変わりましたわ…お友達が出来たら…もうわたしなんか必要ありませんか…?」


…メイシーの言葉1つ1つがモヤモヤして仕方ない。


「そんなことはないわ。メイシーはちょっと敏感になりすぎよ。今日は朝からアイリスの訪問に久しぶりの家族との食事もあったしちょっとひとりで湯舟でゆっくりしたいわ」

ニコッと微笑んだ。



「私の考えすぎですね…何だかお嬢様が遠くに行っちゃったみたいに感じてしまって…今お風呂の準備をしますね。今日はバラでも入れましょう」


「ふふ。そんなの大丈夫よ。今日はバラ風呂の気分じゃないから辞めておくわ…。そのままで大丈夫。気を使ってくれてありがとうね」



「わ…分かりました」お風呂の準備だけして名残惜しそうに部屋を出ていった。


メイシーの思い通りにならない私が面白く無いと顔を見れば分かる。



何がメイシーをこうさせたのか…。



その日は深夜にシャンドラが部屋に怒鳴りに来ることも無く

平和な1日を過ごすことが出来た。


アイリスには話を合わせるためにお茶会でリベラに改めて謝罪をしたくてあのドレスは私が用意するからみんなで着たいということを手紙で送った。


返事はもちろんOKで提案もアイリスがという形にしてもらいこの間お話していた4人に伝達してくれることになり久しぶりに部屋を抜け出しティエラと2人でお出かけすることにした。


"2人で出かけるなんて久しぶりねー"


"ふふ。最近なんだか忙しかったものね"


"今日はドレスを用意したらたくさん遊ぶわよっ"


"ふふ。そうね"



ブァァァ


「なに!?なんだか凄い風だわっ」


"この風…来たわね!"


「え、なに??」


"ナーアシャー♪"


「わああウィンじゃない!この世界に来たってことは誰かと契約できたのね!!」


"うん!やっと契約者が現れたんだっ"


「…はじめまして。私はルーク・エイダンと申します。カルノスご令嬢はお噂は通りお綺麗なお方で…なーんて(笑)」


「俺の事、覚えてないか?ナーシャ。よく遊んであげたルーお兄様だよ」


ルーお兄様……ルーク?ジェノシーにいた頃お父様の仕事関係でジェノシーの隣のアルフォードからよく一緒に遊びに来てた…


「思い出したかい?久しぶりだね。ナーシャのお父様が亡くなってしまってジェノシーに遊びに行くことが無くなって…でも君と読んでたあの絵本をずっと忘れられなくてね。ずっと調べて、精霊がいることを知ってリーツを出せるようになって精霊召還できたんだ。

軽い気持ちでジェノシーに行ったら夫人はカトセルーラのカルノス家と再婚したって聞いてさ。そしたらまさかウィンとナーシャが知り合いだって。びっくりしたよ」


「あのルークも精霊使いになるなんて!!」


「はは。こんな再開の仕方をするなんて想像つかなかったよ」


「本当に!!ルークは…今何してるの?」


「僕は今は父の跡を次いで1級騎士になったんだ。今はほんの休憩時間でウィンにナーシャの元へ連れてきてもらったんだよ」


「そうだったの。ルークに会えて嬉しいわっ。ねえ。妹のルシアは元気!?」


「ルシアは…色々あったけど。今は元気だよ」


「そう…元気で良かったわ」


「ナーシャ。ここまで来ておいてあれだけど時間が無くて…また会えるかい?」


「もちろん!ルークにこんな形で会えるなんて思いもしなかったわ。また会いましょう。」


「ありがとう。また近いうちに遊びに行くね」


「うん!またね」


まさかあの優等生気質でみんなの憧れだったルーお兄様があの絵本を信じて調べていたなんて。ふふ。こんな再開思ってもみなかったわ。


"ナーシャ!早くドレス買って食べ歩くわよ。ウィン達が来たせいで時間が無くなっちゃう"


"ふふ。そうね。行きましょ♪"


私たちは早速ドレスショップに入り色違いのドレスを4着アイリスに送って貰うことになった。


今回は私は青じゃなくて着たことのない黒いドレスでかっこいい雰囲気にしてみようかな。


やることを済ませティエラも人間の姿に変わり食べたいものをたくさん食べ歩いた。

「もうおなかいっぱいで何も食べられないわぁこれ以上食べたら太っちゃう」


「ティエラも体型がかったりするの?」


「気持ちよ!気持ち!」


「まぁ(笑)羨ましい発言。世の女性を敵に回したわよ」


「私、永遠の美貌の持ち主だからね。妬まれても仕方ないわっ」


「ティエラったら(笑)」


「そうだ!ソランにもお土産買って帰りましょ」


「ソランなら実は後ろにいたりして?」


「え!?」


「ほらっソラン見っけ」


「ソラン、着いてきてたの?声を掛けてくれたらよかったのに」


「いや…俺は…」


「ソランはマカロンが食べたかったのよねえ~」


「ティエラ…」

恥ずかしそうにソランは早足で早く行くぞと後ろから見ても耳が真っ赤になりながら先を歩いた。


"ふふふ。ソランにも可愛いところがあるのね"


"でしょう?あの顔でマカロンよ?"


"………俺に聞こえないと思ってるのか?"


みんなで笑いながらマカロンをたっぷり買って屋敷に帰った。



今日も忙しかったなあ。

まさかルークお兄様と会うなんて、ましてやウィンが契約するなんて思いもしなかったしドレスも用意したし。



メイシーにはドレスはアイリスからの提案だからアイリスが

準備してくれることになったわ。とだけ伝えておいた。


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