転生者と貴族
@Suzakusuyama
第1話プレイヤー
木金太陽。それが俺の名前だ。
俺は元いた世界で殺された。ホストしてた俺が食いつぶした狂ったストーカーの女に夜道で刺されたのだ。
そして目が覚めると、なにもない森の中だった。
辺りを見渡しても木や植物以外見当たらない。所持品は死ぬ前に着ていた服とすべての指にはめられた指輪だけだった。
ここが天国か?などと考えていると、右の人差し指の指輪から声が聞こえた。
「こんにちは木金太陽くん。僕は
機械的な音声だから、何やら指輪に仕掛けがされたのだろう。
「どういうことだ?」
俺の質問を聞くと、機械は
「君は元の世界線で、幼い頃にお母さんがホストを刺して捕まり、保護施設行きになった。そして中学3年の頃、その大人びた容姿を買われ大嫌いなホストになり、数々の女性を騙し、紆余曲折があり刺されて死んだ、と。僕はそんな君の人を騙すスキルを買って、僕達が君を転生させたんだ」
紆余曲折、ね。俺の苦労をそんな言葉で落とし込まないでほしいな。
「なるほど、大体理解した。それで、俺に何をしてほしいんだ?」
「うんうん、そうだよね。面倒くさい話は聞きたくないよね。じゃあ簡潔にいわしてもらう。君にはこれから七つの世界のミッションをこなしてもらうよ。ここは一つ目の世界”魔法の世界”だ。魔力を消費すれば炎も出せるし、呪いも使える。ただ、魔力量には個人差があるよ。後、魔法の使用には魔法陣と詠唱が必要なんだけど…うーん、まぁ絵本の中の世界だと思ってくれて構わないよ」
ライが一旦話を止める。俺は一旦思考をまとめ、
「続けろ」
と催促をした。ライはまた話し始める。
「基本は何をするのも自由。ただ、死んだらそこでGAME OVERだから気をつけてね。この世界のミッションは魔法学校バルバトスの校長の殺害だ。殺す期間に制限はない。ただし、寿命はあるから気をつけてね。なにか質問はあるかな?」
「この指輪はなんだ」
俺が即答した。
「うんうん。いい質問だね。その指輪は一つにつき一つだけ願いを叶えてくれる指輪だよ。どの指輪を使うかは自由。左の小指が白、右の小指が黒で、色が濃くなるほど願いの効果が強く現れるよ。他に質問はあるかな?」
なるほど、流石に装備がなしということではないそうだ。
そして願いを叶えられる指輪…面白い。
俺は躊躇なく一番黒い右の小指の指輪を差し出した。
願い事は
「俺にトップクラスの魔力と全ての魔法陣と詠唱の記憶をくれ」
「うん、賢い願い事だ」
アウトかと思ったがまさかのセーフだった。
瞬間、指輪が色を無くし、鮮やかなエメラルド色になった。
そして俺の頭に大量の魔法陣と詠唱文言?が流れてくる。
「あぁぁぁあぁぁぁあぁああ!!!」
頭が割れそうになる。
「当然だよね。記憶をねじ込むことをそう簡単だと思わないでほしいな」
ライの声が聞こえたのを最後に気を失った。
「…あ?」
明らかに地面とは違う感覚に目を覚ます。
「ここは…?」
あたりを見渡す。しかし、何も居ない。
しばらくして、部屋に老人が入ってきた。
「おや、おきたかい。暫くここで休むと良いさ。なぁに、取ってくおうってわけじゃあないんだ」
老人は軽やかに笑うと、ドアを閉めて去っていった。
「なんか、悪い人じゃなさそうだな…」
俺が呟くと、ライの声が耳元に聞こえた。
「これはまずいね…」
「うぉ!?」
思わず驚く。さっき一番強い指輪を使ったからだろうか?この感覚…多分ピアスかなにかに擬態している。
「それってどういうことだ?」
俺が聞くと、
「まずここは最初にいた悲惨な森という場所でね、ここでは危ない怪物たちが襲ってくるんだよ。そしてその中でも彼はトップクラスに残虐と噂のクロウという化け物だ。森に迷い込んだ人を助けて、いっぱい優しくした後に殺す外道中の外道だよ」
ライが説明してくれる。あれ?もしかして俺…
「やばくないか?」
あいつがいない内に逃げようとするが、窓がなく、壁もかなり硬いことに気がつく。
(詰んだァァァァァァッッ!!!)
転生してカッコつけてスカした感じ出して、イキって、寝て、詰んだ。
やべぇよやべぇよ俺はクールな感じだと思ってるのに今なんてもう…壁に頭打ちつけてるもん。音でバレちゃうよ。止まれよ俺!!
だがしかし俺のキツツキ現象は止まらない。
「ま、まぁ落ち着いてよ太陽君…」
流石に少し引いた声のライが喋る。
「この僕が君を選んだんだ、できるはずだよ?君は持っているじゃないか。大きな力を…」
俺はそれを聞いてはっとする。
俺が転生できた理由。それは……
「任せろ。俺がアイツのことをきっちり騙してやる」
前髪を櫛で整える。
「え?あぁ、うん、そう…」
せっかくキメたのに、なぜライは困惑気味なのだろうか。
とりあえず俺はリビングに行き、席につく。リビングは俺が元いた世界と近い感じで、部屋の真ん中にこじんまりとした机があり、二人が向かい合う形で椅子が置かれていた。
老人は俺に気がつくと、
「もう良いのかい。待っていてね。今から料理を出すから。なぁに、心配しないでくれ。毒なんて入れないから」
老人がキッチンへ歩いていった。
まてよ?毒なんて入れない…?
俺はその言葉にハッとする。こいつ…もしかして毒を入れる気なんじゃあないか?
保証なんて無いし、理由の説明はできない。ただ、俺の脳みそがヤバいと警告をしていた。
「毒、入れる気なんだろ?」
俺が下を向く。
相手と目を合わせてははいけない。まだダメだ。
「……いいやぁ、そんなわけ無いだろう」
老人がこっちへゆっくり向かってきた。
「取ってくおうってわけじゃあないんだ」
確実に俺に近付いている。きっと正体がバレたから俺を食おうって作戦だ。
クロウの手が、俺の頭に触れた。
「おい、名無し」
俺が少し斜め上にあるクロウの顔を見る。
クロウと…目があった。
クロウはもう老人の形などしていなく、くたびれた植物の様な感じを受けた。
「ヒッ」
クロウが距離を取り、壁にぶつかる。
「俺の名前はあー…色々ある。とりあえず、お前、さっきまでの狼藉どう説明するつもりだ?」
俺が聞くと、
「すいません!すいません!」
と地面に頭を打った。
「謝罪も自傷も要らねぇんだよ。とりあえず俺は魔法学校バルバトス?に入りてぇんだ。どうすれば……んぁ…いいのぉ?」
めちゃくちゃ雑になってしまった。まぁいいや。
「ハイッ!バルバトスといえば超絶名門の王立学校でありますっ!ですので警備はガチガチ…入る方法は、教員免許や魔法免許を取り、教師になるか生徒として入試試験を突破するかしかございません!」
なるほど、そういえば学校か…俺は中2の頃からホストになって、青春なんてしたことがなかったな。
未成年で酒のんで、童顔で貫き通して、それで、それで…
思い出すだけでだんだん気分が悪くなってくる。俺は頭を振り、
「じゃあ入学だ。試験はいつだ?てかテメェが全部用意しろよカス」
「ハッ!仰せのままに!!」
異世界転生して早々従順な部下ができてしまった。俺は部屋に戻り、ドアを閉める。
「怖かったァァァァァ」
俺は枕に泣きこんだ。
「太陽君、今のは一体……」
ライが聞いてくる。俺のことを転生者にした割りにはあんまり俺のことを知らないみたいだ。
「あぁ、あれはなんかしらんけどガキの頃からある能力で…」
中学生なのに大人の世界に入り込み、大量のファンを持った秘訣。
「なんか、存在感大きく出来るんだよね、俺」
正直使えねぇしいらねぇと思ってた能力。こんなところで下僕を持つことに使うとは思わなかった。
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