その街で暮らす

第6話 住居は大事

住居は大事


〜〜〜マリィ


 先ほどのことが嘘のような、一部が直線状に剥げているが青々した野原を尻目に、

諸々の街に入る検査を済ませる。


 どうやら、後でささやかな防衛協力金がもらえるそうなので、素寒貧な私は楽しみだ。


 ここはアレス、ガルト王国西にある戦士と戦いの大都市らしい。

 

 エレノアさんが所属する大通りの目立つ所に建てられたデカイお店にて。私たちは出迎えられた。


 総合商店と言う、日用品から武器まで様々なものを販売する新しい試みのお店らしい。


 真っ先にエレノアさんの父親である会頭さんが飛び出してお迎えしてくれた。


「エレノア! 無事でよかったよぉ!」


 ~~~


 交渉部屋にてソワソワしている会頭さんを無視し、エレノアさんが報酬の内訳を語りながら硬貨を積み上げていく。


書面には。

――――

・連携する特殊なB級の魔獣との戦いにて

 -緊急の救援       金貨3枚

 -速攻の討伐       金貨2枚

 -共同撃破の魔石買取   銀貨30枚(折半) 

  …合計 金貨5枚 銀貨30枚

――――

とあるらしい。

文字が分からないので、勉強が急務だ……。


また。

――――

・同行中と当店にて結んだ契約

 -マリィへの後見 

  …勉学の支援、補助

 -マリィへの投資 

  …依頼の斡旋、負傷の治療 宿泊提供


 -エレノアへの貢献 

  …依頼の完遂 必要時の護衛(長期有) 闘技場で商品のセールス

――――

という契約も結べた。


 依頼の斡旋は落ち着いたあとに、また後日と言われて金貨5枚と袋に詰められた銀貨30枚、輸送品の中に有ったアテナから輸入したらしい簡単な勉強道具や紙を渡されて交渉部屋を後にする。


「頑張る君を応援するかも!」


と、エレノアに送り出された。

護衛さん達も手を振っている。

(後から知ったが大金だと思う)


 総合商店から丁稚さんに連れられてこられ、エレノアさんの店の系列店である宿屋〜獅子の巣〜に契約中はタダで泊まれることになった!


 ゲームのタイトル画面の場所だァ!(ファン並感)


 タダ真面目に重大な話がある。


[確認]無しで、どうやって女の子の暮らしをしたら良い?


 今までは転生チートスキルと誤認していた。

だけど[確認]の無法具合には原作プレイヤーには覚えが有るんだ。


連発可能(クールタイム無い)の

高威力(未来予知)な

無詠唱(強く意識して見るだけで発動)


 完全に魔物の魔法です……本当にありがとうございました。

 

 スキルも罠か、厳しくない?


 魔法使いになれるかも?なのはテンション上がるが、本当に人の中で暮らせるのか……?


 人の中で生きて楽をして、健康で文化的な最低限度の生活がしたいんだが?

したいんだが!!!


 宿屋の1階はカウンターのある酒場になっていて店長が出迎えてくれる。


契約の話が伝わっているようだ。


「2階の一番奥のお部屋です。」


 と良さげな角部屋の鍵を渡される。

綺麗に磨かれた床にぼろい靴で歩くことに罪悪感を覚えながらそ〜っと部屋まで歩いていく。

 個室に入って鍵を閉め、一息吐くと精神安定剤な、自分への[確認]を使う。


 スゥと灰色の目が青く輝く。


[確認]マリィ_人間_戦士_レベル6



 レベルが一つ上がっているが防衛協力中に上がったのだ。

 この街の住人はレベルアップに積極的で、スタンピードの時は壁周りで配られた長槍を皆で突きこんでいたため。


 レベルアップでペカーと輝いた私はたくさんお祝いされたのだ。


 アメちゃんなんかをくれて子供扱いだが、私の見た目は子供そのものなので仕方ないことだと、自己暗示する。


「アメ甘いな〜甘味は文化の味よ」


 私自身は初体験の魔物の群れの圧力にビビりまくってた。


 ビビりまくっていたので、和やかな戦場に実はまた死んだのではと、危機感がマシマシになり必死に突いていたからアーマーボアの余剰分もあってレベルアップ出来たんだと思う。


 最後にエイレン氏が一切を切り払ったん、で和やかだった戦場に納得したが……。


と……それよりこれからの生活の事。


 日常での[確認]代わりのものが必要だ。

生きていくための常識もないし……。

常識は常識ゆえ、入手方法が限られていたりする。

聞いて回るわけにもいかない!

魔物のスパイ扱いされたら最悪だ!

……出てきた場所を思うと事実かもしれないけど、無実なんだ。


 私が知る有用な情報はゲーム知識のみ、しかも細部が違ってたりして頼り切りは危険。


う~む。


小さなリスクで楽に暮らしたいな~


 ゲーム時の仲間なら安心な気がする。


彼奴等、外国や海外も普通に同行するし。

裏切りイベントとか大層なものは存在しない。

 確か……開始から数日間の限定で仲間にできる救世主志望な女の子マリアがいたはず。

 ネットでは嫁扱いされてたけど、行動時や待機時の台詞が世話焼きだったから、今の私の仲間にピッタリではなかろうか?

嫁ってのは気になるがヒーラーだし、そんなもんかな? 必須の人〜みたいな。

 細部が違ってもゲーム知識は今のところ大体、多分、有利に働いている。


行動の大枠に、使える知識は使っていこう!


〜〜〜マリア


傭兵の酒場


 昼なのに満員のカウンターに眉を顰め、傭兵ギルドの酒場で酔って口の軽い傭兵たちの話に聞き耳をたてる。


――最近のダンジョン異常だが協商の連中の新技術らしいぜ?


――はあ?連中巫山戯やがって今度は対協商戦か?


――報復に双子の勇者が港を停泊した船ごと吹き飛ばしたってよ!


――連中穴熊になってるだろうし西方面の戦場はしばらくないだろう。残念だったな?


――ガハハ、流石の俺も同情するぜ。硬貨の勇者に乾杯!



 ひどい話、話半分でも民間人ごと吹き飛ばすなんてあんまりだと、個人的には思う。

 

まあ、この国の現状を思えば仕方ないとも言える。


 東西南北全ての国から攻撃されている上、西以外は生存競争、交渉の余地はない。


 唯一残った西も外国から支援を受けた傀儡だ。

その外国と交渉しようにもあの国王の攻撃スキル[弾道波動]は血統主義が過ぎて権力者が弱い他の大陸の連中には存在を許せないだろう……。

 これも交渉不可、そもそも勇者二人を同時に撃退した魔王が死ぬはずも無い。


やはり地道に在野の英雄を増やすしか道はないか……。


 幸いにもあたしの職は僧侶、戦うものを生き残らせ次の戦いに誘う者。


しかし、有望な人材が居ない……。


 そう考えている時に、酒場の入口にある簡易のドアがギイギイ開いた。


 傭兵たちが雑に扱い壊すので、簡単に付けられる簡易ドアなのだ。


傭兵たちがざわりと騒ぐ


――例の愛し子だ!噂に聞いてたがなんと若い!


――俺もな~あやかりたいもんだぜ。


――バッカか?お前は、神の愛は自分で掴むもんだ。


――幸運の兆しか、破滅の種か来たばかりの街で昇格とは。


――偽物じゃないナ、本当に街の匂いが薄いんだナ。


ふむ……。


 ……運命の導きを感じる。


 厳しかった師匠も僧侶のカンは信じろと言っていた。

セリフは温めてある、後はあたしの役割を果たすだけ!


「あなた、救世主に興味は無い?」


 レベルアップ直後なのだろうキラキラ輝く黒髪と灰の目からは強い意思を感じる。

あたしが何をしたいのかを知っているように言葉を返される。


「あるよ!」


 夕日に照らされた姿はレベルアップ後のためか。


歪に魔物の鉄甲を組み込んだ軽装の影響か。


夕日を受けて赤く全身が輝いている。


まるでその体自体が燃え盛る炎のようだ。


「話が早いのは良いことね、あたしはマリアあなたは?」


 あたしが不純な動機で支える事を許してほしい。


後ろめたさを隠すように手を差し出す。


「私、マリィ!似ている名前だね!」


 彼女は微笑み、私の手を取る。


カバンについている特徴的な魔道具が揺れた。



 その後、彼女の生活の壊滅具合を知り、その教育に手を焼く事になるということをこのときのあたしは知らない。


――確認――


[確認]わかる!国家方針!_紙製_アルテミス出版_記録可


[確認]できる!文字学習!_紙製_アルテミス出版_記録可


ハハハ!英雄メーカーさんめハハハ!

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