第45話 商人ギルドに行く

 私たちはお日様の匂いのベッドで爽快な朝を迎えました。

 いい気分で食堂に行くと、少し遅れたのか、私たちだけしかいませんでした。昨夜と同じテーブルに座ると、おばさんがさっそく朝食を持ってきてくれました。

 お皿には焼き魚がのっていました。焼き魚と言っても、切り身ではなく、リバーフォックスの稚魚の姿焼きだそうです。『日本人』時代に食べた『いわし』や『ししゃも』のような感じでしょうか。これが、双子くらい大きく育つというのですから、不思議なものです。

 味は塩のみで、頭からぼりぼり食べる感じです。ちょっとした苦味が美味しいと感じましたが、双子にはどうでしょう。

 ……あの顔つきはちょっと、苦手だったようですが、我慢して食べたようです。

 これにキャン(きゃべつ)のソイスープに、黒パン。ちょっと辛めのソイのソースがついていて、それを黒パンにつけて食べるようです。

 初めての味に感心しながら、双子と一緒に黙々と食べていると、

 

「はい、あと、これもね」


 私たち一人一人に、掌サイズの真っ赤な実をくれました。皮の感じはちょっとざらついています。『梨』の皮に似ているかもしれません。


「え?」

「テーブルのお代さ」


 そう言っておばさんはパチリとウィンクをしました。

 昨夜、食事を終えた後に、残りの3台のテーブルにも『クリーン』をかけたのです(私が、という風に見せかけて、サリーがですが)。

 綺麗になったテーブルに気付いたお客さんもいたそうですが、忙しい時間帯だったせいか、詳しく聞いてこなかったのだそうです。下手に私たちのことを言われていたら面倒でしたが、そうならなくてよかったです。

 おばさん曰く、皮ごと食べられるそうなので、ありがたく頂いて、後で皆で食べることにしました。


 宿を出ると、私たちはさっそく商人ギルドに行くことにしました。心許なくなった軍資金を、ここで少しは増やしておきたいと思ったのです。

 商人ギルドの窓口が開いたばかりなのでしょう。建物の入り口は人がひっきりなしに出入りしています。

 車庫にはすでに数台の馬車が並んでいましたが、端に1台分空いていたので、そこに馬車を止めました。ダーウィよりも大柄な馬(たぶん、魔物の血が入っています)が大人しくしている様子に、思わず感心してしまいました。

 双子たちを馬車に残して、私だけで商人ギルドの中へと入りました。

 

「いらっしゃいませ。どういったご用件でしょうか」


 少し待っていると、ようやくカウンターの前の椅子が空きました。

 私の前に座っているのは、人族の若い女性です。にこやかな笑顔なのですが、なんとなく嫌な感じを受けるのはなぜでしょう。


「え、あの、素材の買い取りをお願いしたいのですが」

「買い取りですか? どういったモノでしょう」

「魔物素材なんですけど」

「あら、お嬢ちゃん、それだったら冒険者ギルドに持ち込んだ方がよくってよ」

「え、でも、商人ギルドでも出来ますよね」

「まぁ、できますけどぉ……お嬢ちゃんの持ってくるようなモノじゃねぇ」


 チラリと私を見る目が蔑んでいるように感じるのですが、もしかして、冒険者のような格好をしているせいでしょうか。

 

「一応、商人ギルドのギルドカードもあるんですけど」


 そう言ってカードを出そうとしたのですが、私のことを完全に無視して、「ベントリーさん、どうぞ」と、後ろにいた恰幅のいい人族のおじさんに声をかけてしまいました。

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