第23話 ロジータ、世界地図に驚く

 街を出るための地図は手に入れましたが、やはり世界地図が気になります。

 ちなみに、インベントリの中には『フロリンダ』時代の地図があるにはあります。しかし、この国の場所がわからなければ、意味をなさないのです。

 私は先程声をかけてくれた男性のところに行くと、世界地図はないか聞いてみました。


「世界地図ですか。それでしたら、資料室にありますよ。2階にあがって右手が資料室です」

「ありがとうございます」


 私は階段を昇り、言われた通りの部屋の中に入る。


「お、おお?」


 資料室には右側の壁際に本棚が並び、その向かい側に、世界地図が壁に貼られていました。

 日に焼けているせいか、少し色褪せた世界地図の前に立ち、ジッと見つめます。

 インベントリの中に仕舞ってある地図と大枠は同じ、東西に横に長い大陸です。

 ただ存在していた国の名前がいくつか違っています。

 

 ――レインデルス王国はまだ残ってるのね。


 大陸の中央にある、かつて『フロリンダ』が拠点にしていた国です。

 そして、最後に勇者たちに嵌められてボス部屋に閉じ込められて、ドラゴンに殺されたダンジョン……ライフォンダンジョンのある国でもあります。

 今私のいるワインハイツ王国は、この世界地図では東側の端の方にありますが、レインデルス王国は山脈を挟んだ反対側、いくつか小さな国を越えたところにあります。


 ――思っていたよりも近かった。


 すでに200年が過ぎています。しかし『フロリンダ』としての記憶がよみがえったせいか、引きずられるようにじくじくとした思いまでがあふれてきます。


 ――もう彼らは生きてはいないのに。


 勇者で剣士ゲイリーも、聖女でヒーラーのアリステアも二人とも人族でした。『フロリンダ』のような長命種ではないので、当然、もう死んでいるはずなのです。

 苦笑いをしながら世界地図を確認していきます。

 そして気が付きました。『フロリンダ』が生まれたエルフの国、アークライ王国はなくなっていました。


「魔の大森林?」


 レインデルス王国から見て北西に位置していたアークライ王国。その跡地には大きな森が広がっています。

 確かに、木々に囲まれた土地ではありましたが、たった200年でここまでになるのは、おかしいです。『フロリンダ』が死んでから、何が起こったというのでしょう。

 ずっと地図を見て考えていたせいか、先程の男性が様子を見にきました。


「大丈夫ですか」

「あ、すみません。ありがとうございました……あ、あの」

「はい?」

「この『魔の大森林』って何ですか?」


 私はせっかくなので、聞いてみることにしました。


「ここは元はエルフたちの国があった場所だったんですが、ある日突然たくさんの木々に飲み込まれてしまったそうです」

「え?」

「それ以来、誰もその国に入ることが出来なくなったとか……不思議ですよねぇ」


 そういう言葉で済むような話ではない気がするのだけれど、この男性もそれ以上のことは知らないようです。

 かつての母国のことも気になりますが、まずは街を出ることを優先しないといけません。

 この街を出た後、どこに向かうべきなのか考えながら、私は階段を降りていきました。


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