第8話 ワイバーン戦
「今日の任務はさっきも言ったようにワイバーン討伐だ。
「はっ!!」
「尚、ラギルスは初戦闘だが、スクラープの出力レベルは俺と同等だ。前情報通り近接部隊で戦ってもらうからよろしく頼む」
「はい!」
「アリナは大丈夫か?」
「大丈夫。ちょっとまだ引きずってるけどね〜」
手をひらひらさせてそう答えた。
アリナの口調はいつも通りだ。
「よし、車両に乗り込め。行くぞ」
「応ッ!!」
スクラープを纏った隊員が次々に車両に乗り込んでいく。
「今日は変異種が出ないでくれると助かるんだがな」
ルリはそう呟くと、1番最後に車両に乗り込んだ。
◇ ◇ ◇
「こちらベルハラ、標的を視認。運転を停止する」
今回の任務は前回よりも近かったため、1時間ほどで着いた。
「了解した。総員降車し、討伐の準備にかかれ」
「はっ!」
前回と同様、ルリの指示により全員が一斉に降車し、それぞれが準備を始めた。
◇ ◇ ◇
「ミーナ。ワイバーンは?」
ルリは今回の作戦会議を始める。
「地上で休んでるのが4体。飛び回ってるのが6体。ここからはかなり離れているからこっちには気づいてない」
「ベルハラ。地形は?」
「見た通りだ。今私たちが隠れてるデカい岩以外は何もない荒野だ。隠れることはできないな」
「そうか。なら近接部隊で陽動するしかないか。行けるなジャズ」
「ああ! 全員ターボグライドは問題ないぜ」
「それでも完全に陽動できるとは言いきれない。その時の動きは各代表に任せる。特にアリナ」
「……え、ええ! 任せて!」
「……よし。作戦開始だ。みんなは全員持ち場につくように伝えてくれ」
「はっ!」
ルリは作戦決行の合図をした。
◇ ◇ ◇
「こちらルリ。総員に告げる。予め離れた位置にいる狙撃手3人が、地上で休んでいるワイバーン3体を攻撃する。撃った直後、騎兵が主砲で追撃。そしたら近接部隊と砲兵は前進して作戦を遂行しろ。騎兵は副砲で攻撃、狙撃手も当てられる奴は当ててくれ。以上だ。第4小隊行くぞ」
「応ッ!!!」
ルリは各役割の動きを説明した。
「よし。狙撃手構え」
各ポイントで狙撃手が狙いを定める。
全員が息を潜め、聞こえるのはワイバーンの翼の音だけだ。
「…………撃て」
「ギャアアアアッ!!!」
3体のワイバーンが叫び声を上げる。
3体のワイバーンに3発とも当たったのだろう。
「よっしゃ! 騎兵撃ち込め!!」
ベルハラも騎兵に指示を出し、ワイバーンに手法を撃ち始める。
「ギャアアアアッ!!!」
爆発とともに、ワイバーンの叫び声と土煙が上がる。
「今だ。近接部隊行くぞ」
「応ッ!」
「ほ、砲兵も近接部隊に続いて! 射程距離まで前進!」
ルリは近接部隊に、アリナは砲兵に指示を出す。
土煙が立ち込めているため、ワイバーンはまだこちらに気づいていない。
「ギャアッギャアッ!!」
土煙の中から1匹のワイバーンが飛び出した。
休んでいたうちの1体だろう。
「ギャアッ!! ギャアッ!!」
飛び回っているワイバーンが騒ぎ出した。
どうやら接近している近接部隊と砲兵に気がついたようだ。
ルリはベルハラに通信を繋ぐ。
「こちらルリ。ワイバーンに気づかれた。直ちに騎兵に撃つのをやめさせて、群れを囲うように位置取りをしてくれ」
「分かった。ヤバかったら主砲ぶち込むからな」
ベルハラは通信を切った。
その後、ルリは近接部隊全員に通信を繋ぐ。
「近接部隊。まずは地表で飛べなくなってる3体を討伐後、3人1組で飛んでる奴らの陽動。高度が低くなった奴を1体ずつ確実に仕留めろ」
「応ッ!」
「ラギルスは俺と組め」
「はい!」
「何かあったらすぐ連絡を。各自攻撃開始」
「応ッ!」
ルリの合図により、2人組と3人組2つの3つのグループに分かれる。
「ギャアアアッ!!」
羽が使いものにならなくなったワイバーン3体はこちらに突進していきた。
普段飛んで狩りを行っているワイバーンが地上戦に持ち込んだところで、脅威では無い。
2つのグループは上手く連携し、易々とワイバーンを討伐する。
ルリとラギルスも向かってくるワイバーンを倒そうとする。
「俺が突進を止めるから仕留めてみろ」
「はい!」
「ギャアアアッ!!」
ワイバーンは、ラギルスがルリから離れたのを確認すると、ルリに狙いを定めて突進してきた。
「フンッ」
ルリはワイバーンの顎目掛けて、戦斧を下から上に振り上げた。
「ギャッ……!」
ワイバーンの顎からは青い血が飛び出し、動きが止まる。
「はぁあああッ!」
その瞬間を狙ったラギルスが、ルリの背後からジャンプして、ワイバーンの頭上を捉える。
宙を舞う白いスクラープの姿は見惚れてしまうほどだった。
ラギルスはあっという間にワイバーンの首をはねてしまった。
「フゥ……どうですか!」
「ああ、言ってただけのことはあるな」
事前に言っていた通り、ラギルスの戦力はかなりのものだった。
1振りでワイバーンの首をはねるなど、そうそういないだろう。
「ギャアッ! ギャアッ!」
飛び回っているワイバーンが次々に急降下を始めた。
「こちらルリ。近接部隊は散れ。アイツらは群れているようで個々で戦ってくる。連携もないから不規則な動きに注意しろ」
「応ッ!」
ルリは近接部隊に通信を繋げ、ワイバーンの攻撃が来ることを伝えた。
その報告を受けた近接部隊は、各々が散開し、ワイバーンの陽動を始める。
それと同時に、アリナからルリに通信が繋がった。
◇ ◇ ◇
「こちらアリナ。砲兵6名、ポイントに到達。銃撃を開始する」
「了解した」
アリナは、ワイバーンを撃ち落とすためのポイントに到達したことをルリに伝えた。
「砲兵構え! 撃て!」
伝えた後、即行動を始めた。
砲兵6人がお互いに間隔を空け、ワイバーンに攻撃し始めた。
「ギャアッ! ギャアッ!」
ワイバーンはかなり混乱している。
「そっち行ったぞ!」
「馬鹿! もっと距離取れ!」
しかし、統率が取れていないモンスターの群れは厄介なこともあり、現場は混沌と化していた。
「オラァ!」
余裕がある近接部隊のメンバーは反撃するが、まともなダメージは入っていないようだ。
「ギャアアアッ!!」
そん中でも、砲兵が撃ち続けた弾がワイバーンの翼を貫き、ワイバーンが徐々に落ちてきている。
「ワイバーンの高度が下がってきている。もう少し踏ん張れ」
ルリは近接部隊にワイバーンの高度が低くなっていることを伝える。
「ギャアッ!ギャアッ!」
陽動されていた1体のワイバーンが、砲兵の方に向かっていった。
「騎兵! 撃てぇ!」
騎兵の4人は、砲兵に向かってくるワイバーンに集中砲火を浴びせた。
こういうことがあった時のため、騎兵は準備していたのだ。
「ギャアアッ!!」
狙いを絞ったこともあったのか、撃たれたワイバーンはガクッと高度が下がった。
この調子だと墜落しそうだ。
「砲兵各員! 散開して!」
アリナは、墜落したワイバーンとぶつかると予想し、砲兵に避けるよう指示を出す。
「はっ!」
砲兵6名は、右と左に半分で分かれた。
「ギャアッ! ギャアッ!」
「え」
堕ちてきたワイバーンは軌道を変更し、アリナを含めた3人に向かってきた。
「このままじゃ……」
2人の後ろにいたアリナはこのままでは3人ともワイバーンに衝突されると察した。
「……」
そして眼前にワイバーンが迫ったとき、アリナは銃を投げ捨て、前の2人を突き飛ばした。
翼は当たるかもしれないが、直撃は免れるだろう。
「え!」
「一体何を!?」
突き飛ばされた2人は困惑している。
「ごめん。これしかないや」
そう言ったアリナは、全身の力を抜き空を仰いだ。
「……リサ、今行くよ」
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