魔王城は強敵ぞろい!
イーラ魔王城に挑むことにした。俺がいるのだから、最悪でも逃げることはできる。
だから、まずは経験してみるのが大事だろうとの判断だ。
実際のところ、最終ダンジョンだけあってかなり難しいからな。
ソル達は魔王討伐も近いと考えているかもしれないが、まだまだだ。
「では、魔王城に向かいましょう。まずは雑魚に慣れるところからですね」
「ああ、分かった。ちゃんと魔王を倒せるまで、成長しないとな」
「そうだよね。私達の実力で勝てるくらいまで、強くなりたいよ」
「みなさん、素晴らしいです~。仲間になれてよかった~」
今のままの強さでは、魔王の相手はできないからな。
俺一人で挑んだら勝てるのも、事実ではあるが。
それでも、みんなで魔王を倒した喜びを共有したい。せっかくできた仲間なんだから。
ただ、魔王城はこれまでのダンジョンとはレベルが違う。極端な調整と思える程度には。
具体的には、ザコ一体一体がアルラウネに匹敵するバランスなんだ。
救いとしては、複数体のグループになっている敵とはエンカウントしないところ。
だから、しっかり準備すれば勝てるようにはなっている。
それでも、今のパーティでは苦戦を強いられるだろう。
「頑張りましょうね。かなり遠い数歩ですが、目の前に魔王が居るんですから」
「ああ。しっかりやるさ」
「最後まで、気を抜かないでいかないとね」
「魔王を倒したら~。美味しいものがいっぱい食べたいです~」
俺達は魔王城へと向かった。
まず出会った敵はゴブリン。昔なつかしのザコだ。緑の小人であることには変わりない。
だが、強さはアルラウネ並み。ゲーム時代に油断して死んだ記憶がある。
ちゃんとやれば、アルラウネを倒したパーティなら問題ないのだが。
「ゴブリンですけど、油断はしないでくださいね」
「ああ。魔王城で油断するほどバカじゃないつもりだ」
「全力で戦うよ。クリスくんにばかり負担をかけられないもんね」
「しっかりと治療しますね~」
「では、アピールタイム。カースウェポン」
俺が敵に挑発して、一撃を与える。即座に反撃が返ってくる。
どこかで見たことのあるような剣の動き。つまり、スキルだ。
「ウソだろ!? メガスラッシュをゴブリンが使うのか!?」
「ソルさん、そんなことより攻撃をしないと! クイックスペル。ダブルマジック。メガアイス!」
「メガホーリーです~」
落石注意とでも言われそうな大きい氷がゴブリンに降っていき、遅れて地面に魔方陣が描かれ、強烈な光が放たれる。
だが、まだまだ敵は倒れない。本当にボスみたいな強さをしている。
俺は敵の攻撃から仲間たちをかばいつつ、いいタイミングを待つ。
ここからが本番だ。『肉壁三号』の本領を発揮したら、どんな敵だってザコでしかない。それを思い知らせてやる!
「ダンスマカブル。さあ、来てくださいね」
敵はもう一度メガスラッシュを放ってくる。ダンスマカブルで防御力が0になったまま攻撃を受けていく。
さあ、セカンライノ以来のお楽しみと行こう!
「これで終わりです。フェイタルカウンター」
食いしばりでギリギリHPが残っただけの大ダメージに、ダンスマカブルのバフで倍率がかかった一撃だ。カウンター技の本領発揮。
剣を振り下ろすだけで、ゴブリンは真っ二つになっていった。
さあ、HPを減らすと同時にザコを片付けられた。次に行こう。
「クリスくん。すぐに癒やさないと~」
「いえ、必要ないです。HPが減っている方が、スキルが強くなるので」
「でも、危ないですよ~?」
「大丈夫です。これまでだって、ボクは生きていたでしょう? 保険だってありますから」
本当に気をつけなくちゃいけないのは、ユミナ達の方だからな。
俺が死ぬような事態なら、みんなのほうが危ない。
だから、無用な心配ではあるんだよな。気持ちは嬉しいとはいえ。
「それで、どうする? まだ進むか?」
「そうですね。みなさんのMPにも余力がありますし、もう何体か倒していきましょう」
次の敵はオオカミだった。ただのザコにも関わらず、ボスだったナダラカウルフよりも強い。
「ボクが壁になりますね。イヴェイドエンド。アピールタイム。ペインディヴァウアー」
HPが減っているから、いつもの流れだ。簡単なものだよな。
狼はひっかいてきたり噛みついてきたりするが、全部よけていく。
これまで積み重ねてきた経験が生きているのを実感できる。
やはり、攻撃を回避する練習を繰り返してきて良かった。
「今度はアタシも! パワーチャージ。メガスラッシュ!」
「続くよ! クイックスペル。ダブルマジック。メガファイア!」
「メガホーリーです~」
いつものようにソルが斬りかかり、セッテが炎の竜巻をぶつけ、ユミナが光魔法を放つ。
さあ、順調に進んでいる。ザコくらい楽に倒したいが、まだまだみんなの成長も必要だな。
かばうことを考えなくて良い分、一人のほうが圧倒的に楽ではある。
それでも、今のパーティが一番好きだからな。みんなで勝ちたい。
オオカミも問題なく倒せて、次の敵であるスライムも倒せた。
スライムは上級魔法を撃ってきて、みんな驚いていた。
「はあ!? なんでスライムから上級魔法が飛んでくるんだよ!?」
なんてソルが言っていたり。
「魔法なら、私が負ける訳にはいかないよね。メガアイス」
なんてセッテが張り合ってみたり。
結局勝てたとはいえ、消耗も大きかったのでそろそろ帰ることにしよう。
「では、今日はここまでにしましょうか。魔王討伐までは、もうしばらくかかりそうですね」
「だな。敵の強さから考えて、無理はできないよな。一体一体が正念場だ」
「でも、少しずつでもいっぱい敵を倒していかないとね」
「クリスさんも、無理はしないでくださいね~」
「大丈夫です。では、帰りましょう」
それから、ミリア達の待つ宿へと帰っていった。
誰かが出迎えてくれるのは、やはり嬉しい。あらためて実感できた。
魔王を倒してしまえば、楽しいことだけに集中できる。
急がず焦らず、確実に。でも、かならず魔王を倒してみせる!
――――――
イーラ魔王城に挑んで、ソル達は自分達の勘違いを理解した。
魔王城までたどり着いたのだから、魔王討伐は目の前にあると考えていたのだ。
だが、ただのザコに苦戦する始末。これでは魔王を倒すまでが遠すぎる。
自分達の現状を理解して、誰もが悔しさに打ち震えていた。
あまつさえ、瀕死になったクリスを盾にし続けなければならないのだ。
宿に戻ってから、皆で苦しみを共有したいと考える程度には、ソル達は追い詰められていた。
「魔王を倒さない限り、クリスはずっと苦しみ続ける。なのに、アタシ達の力はまるで足りない」
「そうだよね。クリスくんを抜きにして魔王に挑んでも、結果は分かり切っている」
「わたしは、何のために僧侶になったのでしょう~。目の前の男の子を、ずっと癒やすこともできなくて~」
魔王は世界の脅威だ。だからこそ、誰かが倒さなければならない。その誰かがクリスだと理解していても、だからこそソル達は苦しかった。
結局のところ、世界の命運はクリスに託されたまま。
自分達のやっていることは、ただクリスの活躍を見ていることだけ。
あらためて理解できた現状が、ソル達の心にいくつものトゲを突き刺していった。
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