いよいよビルドの本領発揮!
ザワザワ森へのダンジョンアタックを繰り返し、十分にステータスが上がってきたと思う。
そこで、今回はボスに挑むつもりだ。アルラウネ。植物型のモンスター。
大きな花弁から人が生えているかのような姿をしている。定番だよな。
可愛い女の子の見た目をしているのだが、油断したら普通に死ぬ。
というか、強敵すぎて可愛いとか言っていられなかった思い出がある。
「みなさん、今日はボスに挑みましょう。大丈夫、ボク達なら勝てます」
「分かった。ザワザワ森を攻略すれば、魔王討伐も見えてくるな」
ソルの言う通りではあるのだが、見えてくるだけでもある。
魔王はその名にふさわしい強さがあるからな。魔王城だってやっかいなダンジョンだ。
幸い、魔王城は中ボスも魔王も復活しない設定だ。裏ボスに上位互換はいるが。
設定的には、裏ボスは安全というか、挑んできたものと戦うだけの存在だからな。
魔王を倒しさえすれば、俺はこの『エイリスワールド』を楽しむことに専念できる。
世界の危機がなくなったのなら、後は自由に遊んでいれば良い。
トリでのダンジョンアタックで、生涯収入くらいは稼いでいるからな。
楽しいことだけやっていれば、それで十分なんだ。
「まだまだ先は長いですが、アルラウネを倒せば次は魔王城です」
「そうだね。でも、今まで誰も魔王を倒せていない。大変な大仕事だよ」
「わたしはどんな傷でも癒やしてみせますね~」
みんなと一緒に魔王を倒せたら、どれだけ最高の気分を味わえるだろうか。
その瞬間のためにも、しっかりと壁としての役割を果たさないとな。
俺一人で魔王を倒すことだってできるだろうが、さびしいからな。
「では、行きましょう」
ザワザワ森の道中で、しっかりとHPを減らしておく。
ボスであるアルラウネと戦う前に、万全の状態にしておきたいからな。
普通なら、HPが減るなんて悪いことだ。だが、俺のビルドでは価値が逆転する。
そのおかげで、ボスを討伐することに適したビルドになっているんだ。
ダンジョン道中での消耗を、メリットに変換できるのだからな。
「いました。アルラウネです」
「準備はできてる。行くぞ!」
「そうだね。絶対に勝つよ」
「負けませんよ~」
アルラウネは主に植物型の部分に生えているツルのようなもので攻撃してくる。
他にも、花弁から状態異常にしてくる花粉をまいてきたり、ツルの先から種を飛ばしてきたりもする。
遠距離攻撃、近距離攻撃、状態異常と一通りの行動を備えており、いよいよ本番といった感じだ。
「行きます。イヴェイドエンド。アピールタイム。ペインディヴァウアー」
無敵スキル、挑発スキル、低HP時のメイン火力の順で発動していく。
切りつけていけば、それなりに苦しんでいる様子だ。
ペインディヴァウアーの火力があれば、ヘイト管理は気にしなくて良い。だから、楽なものだ。
イヴェイドエンドの無敵は、敵の攻撃を回避すれば発動した扱いにならない。
だから、できるだけ攻撃を引き付けた上で、それでもなるべく回避するのが基本だ。
重ねがけすれば一定回数まで無敵をチャージできるから、こまめにかけ直しておきたいな。
「行くぞ! パワーチャージ。メガスラッシュ!」
俺が敵の攻撃を引き付けているので、ソル達は逆側から攻撃していく。バフをかけて、強力な剣の一撃を放つソル。
ヘイトというのは便利なものだよな。普通なら、敵が四人いれば全員に警戒するものだが。
だからこそ、スキルの強力さを実感する。普通ではありえないことを現実にできるわけだからな。
俺の挑発スキルが有効であってよかった。ソルたちに攻撃が集中すれば、大変どころではないからな。
「私も合わせるよ。クイックスペル。ダブルマジック。メガファイア!」
セッテもソルに続いて攻撃していく。詠唱の時間を短くして、上級魔法の二連撃。
魔法使いとしての基本を抑えている。高火力の攻撃を遠距離から放ってくれるのは非常にありがたい。
俺が守るべき相手がひとり減ったようなものだ。いちおう、油断をするつもりはないが。
「わたしはこれね~。コンティニューヒール~」
継続回復のスキルを使うユミナ。万が一ソル達に一度や二度攻撃が当たっても、コンティニューヒールの効果が続いていれば時間経過で回復できる。
俺が気にするべきことが、またひとつ減った。いずれはソル達も、俺抜きで十分な活躍ができるのだろうな。
そう考えると嬉しいような、さびしいような。まあ、魔王を倒してからの話だろうが。
「なかなかに素早い動きですね。でも、ボクには当たりませんよ」
アルラウネはツルをムチのように振り回してきたり、ツルの先から種を飛ばしてきたり。
だいたいの攻撃は避けられるが、たまに当たりそうになる。
イヴェイドエンドの効果があるから当たっても問題はないとはいえ、できるだけ避けておきたいよな。
当たったらカッコ悪いし、何より今後のためにも自分の腕を上げておきたい。
「クリス!」
ソルが大声を出していたので注意を呼びかけているのだと思う。
そこで、少し警戒しようと考えたけど遅かったようだ。
アルラウネはツルで別のツルを隠し、俺が手前のツルを避けたところに種を撃ってきた。
避けられずに当たってしまう。だが、イヴェイドエンドの無敵があるから問題ない。
とはいえ、カッコ悪いところを見せてしまったな。さっさと倒していくか。
「もう倒れてください。ペインディヴァウアー。ペインディヴァウアー。ペインディヴァウアー」
「アタシも合わせる! メガスラッシュ!」
「私も! メガファイア!」
「わたしも~。メガホーリー~」
俺達の一斉攻撃がうまくいって、アルラウネは倒れていった。
さて、今回のボスも無事に討伐できたな。まあ、分かりきった結果ではあるが。
「やりましたね、皆さん。これでザワザワ森も攻略完了です」
「ああ! トリのダンジョンを攻略できるようになるなんてな。想像もしていなかったよ」
「セカンでのんびり暮らしてた頃がウソみたいだよね」
「わたしもお役に立てたようで、何よりです~」
うんうん。みんなでボスを攻略できる感じ、とてもいいよな。
俺としても、パーティを組んだ楽しさを満喫できていると思う。
それから、トリの街へ帰ってミリアに報告して、宿で眠ることに。
さあ、次のダンジョンはイーラ魔王城だ。厳しい戦いになるだろうが、みんなで攻略したいよな。
ああ、楽しみだ! 平和になった後も、楽しそうなことはいっぱいある! まだまだ味わい尽くすぞ、『セブンクエスト』!
――――――
アルラウネとの戦いで、クリスはHPが減っているにも関わらず盾役として動く。
誰もが止めたいと考えていたが、そうしたところでアルラウネは倒せない。
クリスもろとも、当たり前のように全員が倒れるだけだ。
分かっていても、ソル達の誰もが現実に苦しんでいた。
そんな中、クリスに一撃が当たる瞬間がやってくる。
目をつむりたくすらなっていたが、自分たちの行いの結果だと目をそらさない。
結局クリスは無事だった。何らかのスキルの効果なのだろう。
理解していても、ソル達からはとある考えが消えなかった。
それは、自分たちをかばった結果クリスが死ぬという未来。
「あんなに傷ついていても、クリスくんは私達をかばっちゃう。どうしよう、クリスくんが死んじゃったら……」
「アタシ達が離れたところで、クリスは一人で魔王に挑むだろうさ」
「それは分かるわ~。短い付き合いだけど、クリスくんは優しいもの。悲しいくらいに」
自分たちはどうするのが正解なのか。誰にもわからないまま、ただ時間だけが過ぎていった。
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