第95話 バジリスク、王と呼ばれる者
美味しい食事休憩を終えて、また捜索をする。
途中、いくつもの魔獣、冒険者の石化したものを見た。
冒険者パーティーがここでバジリスクと遭遇して、全滅したのだろう。
七人が驚いた表情で固まり、物言わぬ石像と化している。
石像は多くが壊れている。
壊れてないものが少ない事に恐怖を覚える。
コウタの両親の石像がバラバラだったらどうしよう……怖い。
見つけた石像の顔を一つずつ確認していくコウタ。
両親とは違う度に首を振る。
不意に狼の魔物集団が現れた!
しかし、騎士達はやラウルさんは強かったし、コウタやライ君も強くなっている。
あっという間に斬り伏せて行く。
私と紗耶香ちゃんは下手に動くと邪魔になるだろうから、大人しく守られていた。
「流石お強いですね! 皆様反応早くて、かっこいいです!」
「マジで〜、いえ、本当に、狼の魔獣は動きも早いのに、本当に反応速度凄すぎて、見惚れるだけで終わっていました〜〜」
「ははは、これくらい当然ですよ」
私と紗耶香ちゃんが騎士達をチヤホヤする。
まんざらでも無さそうな表情の騎士達と魔法使い。
そして倒した魔獣から魔石など、必要な素材を騎士達は手際良く剥ぎ取って行く。
食事も美味しかったようだし、面倒臭い上に危険な仕事を押し付けられて不機嫌な様子は今の所無い。
この後も、洞窟内ではコウモリと蛇の魔獣と遭遇した。
思わず悲鳴上げる私と紗耶香ちゃん。
急に出てくるとびっくりするんだもの!
今の所、女子組は飯や飲み物出す以外は、足手纏いすぎた。
そんな時、妙に装備のいい、なんとなく高貴さを感じる石像を見つけた。
やんごとなき家の人もこの森に挑んでるのかな。
まじまじと見ていたら、急に寒気を感じた。
バジリスク!! 空想、想像上の生物。
それが数メートル先に現れた。
バジリスクの名はギリシア語で、小さな王を意味していて、全ての蛇の上に君臨する蛇の王。
だが、これはトカゲに似た姿をしている。
小さな王とか言われる割に、そいつは巨体であった。
『鏡面!』
バジリスクがコブラのように首を上げて、瞳を怪しく光らせる寸前に、紗耶香ちゃんが叫んだ。
水の鏡が私達の眼前に現れ、石化を防いだ。
石化の視線が効かなかった事で、バジリスクは一瞬戸惑った。
その隙を見逃さない。
「目を焼け!」
エドガルド隊長が叫んだ。
『炎槍! フレイムジャベリン!!』
コウタの炎を纏った魔法がバジリスクの頭部目掛けて炸裂し、続いて魔法使いの火魔法がバジリスクを襲う。
『ファイアボール!!』
『灼熱の息吹!! フレアブレス!!』
次々に炎の攻撃がバジリスクを強襲!
バジリスクが黒煙を上げて倒れた。
「敵、バジリスク、沈黙しました」
魔法使いのクールな声が戦場と化した森に響いた。
『鑑定』
「バジリスクの死亡を確認しました!!」
コウタの鑑定の後、皆が叫んだ。
「うおおおおおお!」
「勝ったーーっ!!」
「倒したあああああ!!」
騎士達も思わず歓声を上げた!
「さあ、次は周囲に燃え移った火を消すんだ!」
騎士隊長のエドガルドが叫んだ。
『ウォーターウェーブ!』
紗耶香ちゃんの水魔法は波のように広がって、草木に燃え移った火を消した。
紗耶香ちゃんが急にヘタリこんだ。
「はあ、魔力切れた」
「紗耶香ちゃん、お疲れ様、ちゃんとバジリスクが石化の視線を使う前に魔法が使えたね! 凄いよ」
私は紗耶香ちゃんを褒めながら疲労回復ポーションを渡した。
紗耶香はポーションを受け取り、ぐいっと一気にそれを飲み干した。
「部屋で一人で、ぶつぶつと言いながらとっさでも口から呪文出るように練習してた。
あと、今さっき、ピロロン音が、聴こえた」
えらい! レベルアップもめでたい!
「さて、後はまた石像を探しつつ、コウタの両親を探さないとな」
ラウルさんの言葉を聞いて、私はふと思いついて、魔法使いさんにお願いをしてみた。
「あの、魔法使い殿、さっきのダウジングのペンデュラム、私に貸していただけませんか?
私はコウタの両親の顔を知っているので、イメージを思い浮かべて探してみようかと」
コウタの両親はコウタの持っていた写真で見たことがあるから。
「そうか、では試してみるといい」
「はい」
魔法使いからペンデュラムを受け取った私は、コウタの両親の顔を思い浮かべて、探してみた。
ペンデュラムが動いた。
それに導かれて、私達は歩いていく。
途中、猿の魔獣が出て来たけど、ラウルさんが凄い速さで私の前に出て、袈裟斬りで倒してくれた。
更に行くと、冒険者風の服を着た男女の石像を見つけた。
「父さん! 母さん!」
コウタは石像を見て、そう叫んだ。
ついに見つけた!!
コウタの両親! 私達は石像に駆け寄った。
服の裾以外の部分は奇跡的に破損して無いようだった。
「例の秘薬の出番ね」
乙女の涙入りの。まずはコウタが赤ちゃんの涙入りの秘薬を母親にかけた。
しかし、何も起こらなかった。
コウタの手がブルブルと震え、顔は蒼白となった。
紗耶香ちゃんは宥めるようにコウタの背を撫でた。
「まだサヤのとカナデっち、いえ、カナデの分があるから。カナデ、一緒に、同時にかけてみよう」
「じゃあ私のはお母さんにかけるから、紗耶香ちゃんはお父さんに秘薬をかけて」
紗耶香ちゃんは無言で頷いた。
私はお母さんの頭の上に、紗耶香ちゃんはお父さんの頭の上に、秘薬を垂らした。
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