第93話 遠征準備とそれから……
クリスの為に、一晩宿でお泊まりした紗耶香ちゃんをライ君が迎えに行って帰って来た。
一度連れ帰る事も可能だったけど、数日後はまた危険な旅が待ってるし、バタバタしちゃうし、何度も別れのシーンをやるのもしんどい。
なので、可哀想だけど、クリスちゃんは赤星のおばさんにまだ預けておく。
紗耶香ちゃんも戻ってきたし、コウタが報告事項があると言って、リビングに私達を集めた。
「騎士の人選と遠征準備に多少時間がかかるので、しばらく待機してそちらも準備をしていなさい。
七日ほど。と、アーシェラお嬢様のお達しだ」
「りょ」
「では、私は自らのポケットマネーで冒険者を一人雇う事にする。
いえ、騎士様達を信用してない訳じゃない、私も精神安定のために見知った人をね」
「あ、カナデっち、ラウルさんでしょ!?」
「うん」
当方の目論見、バレバレである。
「ポケットマネーで好きな男雇うってかっこいいー! セレブっぽい!!」
「うちのコウタなら50円で雇っていいよ」
「はあ!? 安すぎだろ! 何だよ俺が50円て! 最低賃金を守れ! 時給800円は要求する!」
「コヤツ時給800円で雇えるらしい」
「んー、タイムカード無しでめんどいから一仕事で金貨5枚とかにして」
「待て、待て、リアルな数字を出さないでくれ、冗談だから。
そもそも俺の用事で行くんだから、金を払うならむしろ俺だろう」
「サヤの報酬はキャワワなレースでいいよ」
「こ、ここにもレースを欲しがる人が」
紗耶香ちゃんも可愛いドレスが欲しいのかな?
こっちの世界に転移してからは日サロに行って焼けないし、小麦色の肌が白くなってきてるから、きっとドレスも似合うだろう。
「私はバジリスクの巣穴にあると言う錬金釜でいいわ」
「一番凄いの欲しがるやついた!」
「両親と村正以上の何を望むのか、少年よ。お前の刀の為にドラゴンの素材全部突っ込むんだぞ」
「そうだった……分かったよ。でもカナデ、お前が錬金で良いの作れそうな時には俺のも頼むぞ!」
「よし! 成立!」
元々錬金釜は皆で使うつもりだったけど、冗談で要求したら通ってしまった。
まあ一旦私預かりでも、他の人が使いたい時に貸す事も出来るだろう。
多分。
話はひとまず終わったので、紗耶香ちゃんはお風呂に行った。
私は既にお風呂は済ませていたので、伝書鳥の白雪をギルドに飛ばし、ラウルさんの予定が空いているか、指名依頼でバジリスクの森への同行が可能か聞く事にした。
その間、スキルショップを開いて食材を選ぶ。
騎士様達もそれなりの食料を持って来るだろうけど、好感度稼ぎにこちらからも食事を出す。
やっぱ肉が好きかな?
冬支度用に買ってる食材以外にも何か……美味しい物を追加で適当に選んでおこう。
* *
ギルドから連絡を受けたラウルさんは、同行すると承諾し、翌日には直接家に来てくれた。
「もしかして忙しかったかもしれないのに、すみません」
「ドラゴン討伐とか大仕事した後だから、しばらくのんびりしょうと他の仕事は入れて無かったから、大丈夫だ」
「あ、のんびりしたかったのにすみません」
「準備期間があるから、この間はほぼ、のんびりてきるだろ、薬なんかはドラゴン討伐の時に集めた物があるし、着替えも重くなるからあまり持って行かないし」
「ま、魔法の収納あるので、良ければ私でもコウタでもいいから持って行きたい物が有れば、預けてください」
「ああ、そうなのか」
下着とかは私よりコウタの方が良いかな? と、思ってコウタの名前をつい出したけど、よく考えたら、剥き出しのまま預けるんじゃなくて、なんか袋的な物には入れるよね。
数日間、ラウルさんは無料で貸した離れで過ごしつつ、必要な物を集めた。
そして出発の日の前日の夜の夕食後のリビングで、コウタがお風呂に行ってる隙に、私はラウルさんに言った。
「騎士様のご機嫌取りにおべっか使うことがあると思いますが、ラウルさんの方が魅力的なはずなので、そこは勘違いしないでください。
遠征を無事になるべく快適に波風立てずに過ごす為の行為です」と。
「はあ……」
一瞬、あっけに取られたような表情をしていたラウルさんだったが、その後で、おかしそうに笑った。
それを爪を磨きつつ、しれっと聞いていた紗耶香ちゃんが、会話に混ざって来た。
「サヤも騎士達のご機嫌取りに、愛想振りまこうかな」
「騎士が本気になるとヤバいから、魅力80超えの紗耶香ちゃんには推奨はしない」
「えー、騎士だってどっかいいとこのお嬢さんを狙うんじゃない?」
「ワンナイトの遊び相手なら、その限りでは無いんじゃないかな」
「うーん、じゃあ様子見で、臨機応変に!」
「そうだね」
* *
かくして、出発の朝を迎えた。
神殿前に集合との事で、そこで騎士達と顔合わせとなった。
かっこいい!!
やっぱ騎士ってかっこいい人多いわ! 背の高い鍛えてがっしりした体型のイケメンが多い。
おべっかとかじゃなくて、普通にかっこいいわ!
27人の騎士と三人の魔法使いさんが来てくれてる。
「バジリスクの森に同行する、隊長を任されたエドガルドだ。よろしく」
爽やかな笑顔で、ホントに感じの良い男性騎士だった。
「「「こちらこそ、よろしくお願いいたします!!」」」
私達三人はそう言って頭を下げ、ライ君は無言で頭を下げた。
奴隷出身は高貴な方にはなるべく直接話しかけないものらしい。
「エドガルド、絶対に死なせないように頼むわよ。貴重な品が手に入らなくなるから」
「もちろんです」
神殿まで来てくれたお嬢様に見送られ、私達は出発する。
「では、皆様、転移陣へどうぞ、バジリスクの森の最寄り神殿まで、ゲートを開きます」
神官さんの案内で転移陣にて、数回に分けて移動する。
荷物もあるので、一度に全員が入らない。
私はまたも、ラウルさんの左腕につかまらせて貰って転移した。
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