第84話 スワッグ作りと青椒肉絲

「「ただいま〜」」

「お帰りナサイませ」


 私と沙耶香ちゃんは朝から花屋に行ってドライフラワーを買いに行って、それから冒険者ギルドに寄ってラウルさんに護衛の指名依頼を出し、自宅に帰って来たとこだった。

 

 私と紗耶香ちゃんが玄関でコート代わりのポンチョを脱ぐと、ライ君が執事の様にささっと受け取りに来る。


 そこまでしなくていいのに、ソフィアナ様のとこでそのように躾をされていたのだろうか。


 お昼はまだ貰った巨大な赤いきのこも余ってるし、ピーマンとお肉で青椒肉絲でも作ってあげよう。

 お肉を多めに入れてあげよう。良い子なので。



 リビングに行ってみると、コウタは暖炉の前で武器の手入れをしていた。

 今後の予定を話しておこう。



「今度貴族を家に招くし、花屋の帰りにギルドに行って、冒険者を護衛に雇う依頼をして来たわ。

里子トライアルで男子チームのベッドも空いているし」


「しかもラウルさんを指名依頼だから、気心も知れてる相手だよ〜」


 紗耶香ちゃんが補足説明をしてくれた。



「貴族を家に招くのが怖いからラウルさんに護衛を頼むって事か?

何だそりゃ」

「いいでしょ、三人の予算からではなく、私のポケットマネーから出すから」

「あーね、コータ君さ、なんか理由つけてでも会いたいって乙女の気持ちを理解してあげなよ~〜」



「乙女ってカナデがぁ?」


 コウタは胡乱げな眼差しで私を見た。



「うるさい、バジリスク対策でおねだりしてきた乙女の涙を返して貰おうか?」

「嘘です! 冗談です! 乙女のカナデ様!!」


 慌てて機嫌取りをするコウタ。愚かな……。


「ちっ、言葉に気をつけなさいよね」

「が、ガラの悪い乙女様だ。舌打ちって……」



「ところで、コータ君、アタシ今からドライフラワー以外にも可愛い雑貨使いたいんだけど、ショップのリスト見せて〜~」

「いいよ」


 なんと! 沙耶香ちゃんはコウタの背後に回って肩に顎を置いた。


 背後から一緒にショップの画面を見る為なんだろうが、近い!


 羨ましい!

 可愛いギャルに顎を置いて貰えるなんて!

 ちょっと縁側で首だけ乗せる犬っぽいけど、そこもかわいい!



「あ! 砂糖入れ! そのガラスのかわたん! それと白い陶器のやつ、蓋にお花付いてるやつ!

買い! 七個ずつカートに入れて!」


「いいけど七個も?」

「売り物と自宅用!」

「まあ、たまに雑貨屋さんもしてるからいいか」


「あ、その皿もきゃわだわ! 花柄の数枚カートに」

「これ?」

「そう、お皿は何枚がいいかな、家族と使うなら、客を呼んだ時も想定すると10枚はあった方がいいかな」



 私もコウタの斜め後ろの背後に回り込み、リクエストを出した。



「コウタ、私にスパイス入れ見せて。

また胡椒を売ろう、せっかく貴族が家に来るなら、稼げる時に稼ごう」

「ん、ああ、胡椒か。この縦長のとかでいいか?」


「うん、容器が透明でシナモンスティックとかローリエを入れたらかわいいかも」


「さて、花も買って来たし、サヤはスワッグを作るね」


「私はそのスワッグ作りを手伝ったら、その後昼食を」

「昼食は何を作るんだ?」


 コウタは手入れしていた武器をアイテムボックスにしまい、私に問うてきた。


「昨夜寝る前にショップ見たら青椒肉絲の素が安かったから買っておいたの、

先日の貰った巨大キノコとピーマンとお肉ともやしで作ろうかと」

「なるほど、青椒肉絲な。俺が作るから素とかくれ」

「ありがと、じゃあよろしく。それとライ君、良い子なのでお肉多めでよろしく」



 私は先日買った材料をアイテムボックスから出し、コウタに手渡しながらこそっと耳打ちした。


「なんだ? 贔屓か?」

「ライ君は何も言ってないけど、ポンチョ脱いだら受け取って、干してくれたの。気が効く良い子なの」

「はあ」


 気の利いた行動をする子供を褒める私に対して、気の抜けたような返事のコウタ。

 戦闘系以外で役立つ事しても感動しないタイプか?


「そう言えばコータ君、クリスちゃんは?」

「水木さんと一緒の子供部屋でまだ寝てるよ」

「そっか、アタシの部屋ね、ちょい様子を見て来るわ」


紗耶香ちゃんが様子を見に行った。

コウタは青椒肉絲の材料を私から受け取ってキッチンへ移動した。


自室から戻って来た紗耶香ちゃんは問題無しと言って、広いテーブルの上で早速作業に取り掛かる。


紗耶香ちゃんはスワッグ作りのワークショップの先生みたいに作り方を教えてくれた。



「一旦ここを輪ゴムで止めるでしょ」

「うん」

「ここをこうして、こう……花束みたいにして……」

「かわいい〜〜、そして楽しい」

「かわいいの作るとテンアゲするよね。分かる分かる」


程よい所まで進んだ所でキッチンから香る良い香りに誘われたのか、クリスも起きて来た。


「よーし! お昼ごはんが出来たぞ〜〜」


コウタがリビングまで青椒肉絲を運んでくれた。

私と紗耶香ちゃんは急いで作ったスワッグと道具をアイテムボックスに入れ、片付ける。


「わーい! 美味しそうな青椒肉絲だ!」


 子供のように喜ぶ紗耶香ちゃん。


「ピーマンの緑色とキノコの赤色が鮮やかでいいね〜〜」


 思った通り、彩が良い。


「うん、美味しい」


 作った本人のコウタも満足そうに美味しいと言った。


「このピーマン苦くないね」


 子供のクリスちゃんでも問題なく食べられる味。


「ピーマンの生産者の努力の成果よ」

「ピーマン農家だな」

「そう」


 それとメーカーさんの青椒肉絲の素がそもそも美味い。


「そう言えばさっきリスト見た時、ステータスも見えたけど、コータ君はもうレベル48までいってるんだね」

「俺だけこまめに修行に行ってレベルアップしてて、すまないな」


 私と紗耶香ちゃんは商売もやってるからね。


「全然いいよ! パーティーに強い人いた方が安心だし!」

「薙刀はカナデに絵を描いてもらって、俺が修行の帰りに鍛冶屋で依頼出してくるから」

「カナデっち、武器とか描けるの? 凄いね!」

「薙刀はスマホに巴御前の絵が残ってるからなんとかなると思う」


 二次元キャラの方だけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る