第82話 審査結果

 狩りから戻ったコウタに経緯を話していざ、解体と料理。

 そして審査の時となった。


 解体はリックさんや冒険者の方が手伝ってくれたので、追加の特別審査員になってもらう事にした。



「この変わった色の角の鹿、なかなかさっぱりとした赤身です。ヘルシーっぽい味です」



 紗耶香ちゃん! ここでヘルシーと言っても通じないよ!

 周囲の人が首を傾げてる!



「この角ウサギは……鶏肉に似てしかし、サッパリとしつつも確実に旨味は有りますね」



 異世界のウサギの味ってこんなんなんだ、と、私は思いつつ感想を述べた。



「この大きな鳥は鑑定によればホロロックイと言うのですね」



 コウタはサラッと名を鑑定して鳥肉を口にして、感想を言った。



「うん、これは……美味い。甘辛のタレも試したくなる」



 婚約者の令息と令嬢がよっしゃとばかりに拳を握った。



「巨黒熊……お肉、硬いですね」



 紗耶香ちゃんのシンプルな感想には一人の令嬢が絶望顔をした。

 隣の婚約者も青い顔をしている。



「アーシェラ様、この巨大キノコと青オオカミはどちらを判定に出しますか?」


「きのこは森の珍味と言われておりますが、肉判定が出ないならオオカミを」

「では、山の肉として今回はOKとしますが、きのこでよろしいですか?」


「や、やっぱり青いオオカミにいたしましょう。きのこが肉に勝てるとは思いませんわ!」


 アーシェラ侯爵令嬢は不安に思ったらしい。オオカミを出す事にした。


「では青オオカミを審査食材と致します」

「ええ、よくってよ」



 ジュウジュウと美味しそうな音を立てつつ肉を焼いて、ふりかけるだけで肉が美味しくなるスパイスをかけた。


 ゴクリ。

 どこからともなく生唾を飲む音が響く。



「ほう、これは……野趣溢れる風味だな」



 リックさんがそう評した。


 では、冒険者の皆様、一番美味しかった料理の前に並んで下さい。

 解体を手伝った5人の冒険者が移動を開始。

 忖度無しなので、案の定、熊肉は一人も選んでいない。


 私達三人も好きな料理を選ぶ。


 ぶっちぎりで大きな鳥のホロロックイが一位。

 二位が角うさぎ。

 三位がシオンエルクと言う鹿。

 四位が青オオカミ。

 五位が巨黒熊。



 我々と冒険者五人の審査結果はこのような結果である。


 ちなみに残りの肉は狩りを頑張った男性達が食べた。



 侯爵令嬢アーシェラの婚約者は青オオカミ肉を出したので、レースを選ぶ優先権は低かったのだが、レースは10種類あり、一人二種ずつ選べるので、アーシェラ侯爵令嬢の不興を買いたく無かった一位の令嬢は、アーシェラ侯爵令嬢が欲しがっていた白とピンクのレースは避けた。


 他の令嬢も、結局アーシェラ侯爵令嬢が怖かったのと、全部可愛いレースだったし、ソフィアナ様が棄権し、二種ずつゲット出来たので、それなりに満足そうだった。

 ホットサングリアで使った耐熱カップもお渡ししたし。



 加えて、コウタが無事戻ったので、冒険者の方がお肉解体中にテントの裏で紗耶香ちゃんが人気のレースを伝えて、似た雰囲気のレースが有れば仕入れてと言われて慌てて、手を洗いに行くついでに仕入れをした。


 こっそりと一位の令嬢から望みの色を聞いて、お時間の有る時に店舗に新しいレースをお出ししますので、良ければお越しくださいと鳥でお伝えしたら、後日必ず行くと返事がきた。


 婚約者や令息方は急に変なことに撒き込んだお詫びとして、私からお酒と酒のツマミ系の乾き物と、チョコレートをお渡しした。


「このチョコレートは女性に大人気ですので、一緒に仲良く食べれば、令嬢の機嫌も良くなるかもしれません、寛容さと気使いを見せるチャンスです。名誉挽回です」


「わ、分かった」



 空気を読まずに熊を狩って来た男性も、これで令嬢と仲良く出来ますように。



 *


 「ふう、慌ただしい試食会だった」

 「なんか美味いもん食えて得した」


  ソフィアナ様の事を影から見守っていたらしいリックさんは満足して帰った。

  忍者か……。


 「あ、そう言えばアーシェラ嬢、きのこはどうしますか?」

 「今更きのこなどいりませんわ、そのきのこはそこな商人に渡して、青いオオカミの毛皮だけ下さいな」

 「はい」


 「え、きのこ下さるんですか!? ありがとうございます!」


  帰宅してきのこをシチューに入れて食ったらめちゃくちゃ旨味が出て絶品だった。

  試しに焼ききのこも試して例のスパイスをかけて食べてみたら、これまた本当に美味かった!


  最初からきのこを出せば良かったのにと、我々は思った。


  令嬢達は後日またレースを買いに来る事になってる。

  冬の市場は寒いので、お客様は自宅でお迎えする事になるから、緊張する。

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