第36話 お買い物と新しい服

 藁っぽい植物は鑑定眼で見るとヨズルという植物だった。

 結局いくつも椅子を作るのは面倒というか、円柱形の椅子を三個作ったら飽きたので、市場でフルーツの他に中古椅子と食器をいくつか仕入れた。


 今度やる休憩所用。


 貴族にツテがあるリックさんを頼って胡椒の販売もする。

 胡椒をサンプルも入れて、差し当たり小袋では有るけれど、7袋をリックさんに預けた私達だった。



 * *



「貴族と会うかもしれないので、綺麗目な服を買いたいって話だったな。

俺は何件かある候補の家のどれかを見て、写真を撮ってくるから、二人はゆっくり服を選んで来るといい」


 あっちの世界と違い、車が無いから離れた場所にある家を一日に全部見るのは難しいのね。


「りょ」

「はーい」


 家を見に行くコウタとはしばらく別行動になった。

 決定は後なので、ひとまずスマホで写真か動画を撮って来て貰う事にした。

 まだ動くのは災害用ソーラーパワーバッテリー様のおかげ。


 *


 私と紗耶香ちゃんは停留所で乗り合い馬車を待った。


「こうなると制服は売らずに取っておくべきだったかな?」

「まあ、既に売ってしまったんだし、仕方ないっしょ」

「そうだね、切り替えて可愛い服探そう」

「やった──っ! 買い物、買い物ぉ〜〜。

カナデっちはデートもあるから、男ウケしそうなの選びなよ」


「え!? 男ウケって、露出の多いのを着ろって事!?」

「いやぁ〜〜ピンクとか水色とかシャーベットカラーがお見合いとか合コンでも清楚かつ優しそうに見えていいみたいに本で読んだ事あるって話」

「あ、そっち系ね、びっくりした」


 淡いパステルカラー系ね。



「いらっしゃいませ」


 私と紗耶香ちゃんは乗り合い馬車と徒歩移動で婦人服のお店に着いた。

 華やかな可愛い服がいっぱいある。


 また雑談をしながら服を選ぶ。


「途中までは乗り合い馬車でも、やっぱ店までテクるのしんどいね、車か専用馬車が欲しい」


「車はないし、そうなると馬屋と御者も必要になって来るよ」

「うーん、やっぱ高嶺の花かぁ」


「金持ちの嫁にでもなればついて来るとは思うけど」

「その手があった!」

「でも悪い人に騙され無いようにね。変な男にホイホイついて行っちゃダメだよ」

「ママみたいな事言う〜〜」


 紗耶香ちゃんはケタケタと笑ったけど、私は日本にいる母親を思い出し、ちょっと切なくなった。


 心配……してるだろうな。


 異世界転移とか転生ってブラック企業で酷使されてるとか、前世病弱だったとかの、現実世界が辛かった未練の少ない人ばかりが来る訳じゃ無いのよね。


「あ、見て、この服やばい、可愛い。ボンネットまでついてる。ゴスロリ系」

「そう言うのドール系アニメや漫画で見た。

似合えば死ぬ前に一回は着てみたい気がしないでもない」


「化粧と髪型いじればいけるんじゃ?」


 でも鬱ってる場合じゃないから、元気にやってかないと。


 私は紗耶香ちゃんに淡いピンクのワンピースをおすすめされたけど、汚れが目立ちそうなので結局は上品な色の濃い、藍色の服にした。



「濃紺とかリクルートかよ」



 鋭いツッコミもいただいた。



「ある意味面接に受かる系が強い気がして来たのよ」

「うーん、じゃあサヤはこのエンジ色のスカートにしとく」


 ウエストの細さ、スタイルの良さを強調出来る服だ。

 どっかのギャルゲーにありそうな服でゴスロリ系の制服にも見える。


「そっちも濃い色じゃない」

「サヤはデートじゃ無いからいいんだよ」

「でもスタイルの良さを強調できるから、何気に男ウケはしそうだね」


「でしょ? この服さりげ地雷系で童貞をタゲれるよ。

その点ではカナデっちのもウエストキュッとしてるからいいよね」


日本では地雷系女子が着てるような服でも、こちらの貴族女性は普通に着てる服だと思う。

 


 * 



「お買い上げ、ありがとうございます。またのお越しを」


 店員さんに見送られ、私達は店を出た。


「買ったね〜〜」

「備えあれば憂いなしだもんね」


「カナデっち、家帰ったら何食べる?」

「店員さんによれば今夜は月が綺麗らしいから、白玉だんごでも用意しようか?」

「でもススキが無いよぉ」


「団子と綺麗な月があれば十分じゃない?」

「それもそうか、いやでも、それはオヤツだよね。お昼ご飯は?」

「じゃ、その辺の店に入ってみる?」

「外食だ、やったぁ〜〜!」

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