第18話 次はハンバーガー屋

 宿屋のコウタの部屋に集まって私達はミーティング。


「これが、ハンドミシンだ。糸も5本付いてた」


 コウタはスキルで買ったハンドミシンを私達に見せてくれた。


「買ってすぐ壊れなきゃいいけどネ」


 突如不吉な事を言う紗耶香ちゃん。


「買ったばかりですぐ壊れたら泣くしかないな」

「あ、サヤの買ってる生地で試し縫いしてもいい?」


「どうぞ、どうぞ」

「か、カナデっち、これの使い方知ってたら教えてくれる?」

「あ、うん。いいよ」


 なるほど、使い方を知らないから不安なんだね。

 私は紗耶香ちゃんのスカートをハンドミシンを使って代わりに縫ってみた。

 ホチキスのように片手で扱える重さだった。


「え〜〜やばい、早い! 手縫いの比じゃない!」

「おお、わりとしっかり縫えるもんだな」

「ただの直線縫いで良かった。ほら、紗耶香ちゃん、この側面は終わったよ、この長方形の布、あと三箇所縫うとこ残ってるから、試してみて?」

「ありがと! よし、やる!」


 ただの直線縫いなので、ハンドミシン初心者の紗耶香ちゃんでもなんとかなった。


「後はこの安全ピンで留める」

「お試しで今から着替えて着てもいい?」


 紗耶香ちゃんは早速着てみる事にしたようだ。

 ワクワクしてるのか、瞳がキラキラだ。

 やはりオシャレが好きな女の子だね。


「「いーよー」」


 紗耶香ちゃんは一瞬女子部屋に戻って着替えて来た。花柄のスカートだ。


「ほら、カナデっちとオソロになったよ!」

「うん、巻きスカート仲間だね! 可愛い!」

「水木さん、完成おめでとう」


 そこは似合ってるとか可愛いとか言うとこでしょ! コウタ!

 朴念仁〜〜。


「ありがと!」


 紗耶香ちゃんは特に気にしてないみたいだけど。




「じゃあ次にハンバーガー屋をするならハンバーガーのタネを仕込む必要があるな。

自分でオーブンとか持って無いし、パンを焼く手間は省いてパンは買ってしまおう」


「あ、次は私がスキルで食材買うターンだね」


 私はスキルでハンバーガー用の食材を注文した。


「どうする? サヤも口紅も買って売り物を増やす?」

「そうだね、貝殻口紅せめて15個くらい並べようか。あんまり少なくて限定商法かとキレられるといけない」


「あ!!」

「紗耶香ちゃん、どうかした?」

「今この口紅と化粧水が魅力数値80以上の人は200円引きだって!」


「え、じゃあ水木さん、チャンスじゃん!!」

「じゃあいくつ買えばいい?」


「とはいえ、口紅7で化粧水5とかで良くない? 慎重に行こう。

市場の客層は貴族じゃないもん」


「そうだな、まだ夜の街に営業かける訳じゃないし」

「割引適用にして日本円で合計9800円だけど、全部銀貨で払うけどいい?」

「良いよ」


「来た! ガラス瓶可愛い! メーカー名とか無いから良かった!」

「じゃあ口紅を貝殻に移す作業とハンバーグのタネ作り、どっちを先にする?」


「そういや売り物用のスカート分はまだ生地を買って無いな。

俺が市場でハンバーガー作ってる間に、市場で巻きスカート用の布地を二人が買って来るといい。

ハンバーグの種は俺が今から作るから、化粧品の方を頼む」


「ハンバーガー屋の方はコウタ一人に任せていいの?」


「なるべく早めに戻ってくれたらいい。

あ、売り物のハンバーグはすぐに焼けるように薄めに作るつもりだ。

鉄板かフライパン買わないとな」


「まあ、鉄板が無駄になる事は無いはず……よね」

「だよね〜〜、焼きそばやお好み焼きも作れるじゃん」


 コウタは鉄板、金属バットトレー、ボウル、フライ返しなどの必要な物を買った。

 女子組は貝殻口紅の準備を、コウタは明日のハンバーグの仕込みなどをした。




 * *


 翌日の市場。 

 晴れてて良かった。テントの設営もスムーズで客足にも影響あるだろうから。


 鉄板の上で美味しそうに焼けるハンバーグの匂いに釣られて、道行くお客さんが振り返る。

 ソースは照り焼き味、マヨネーズとレタス追加でパンに挟み込む。

 チーズとピクルスは経費削減で今回はついて無い。


 チーズのお安い業者でも見つかれば、豪華版としてそのうち売っても良いけど。



 早速お客様が来た。先日の冒険者風の男性だ。


「あれ? 今日は串焼きじゃないのか?」

「そうなんですよ、申し訳ありません、でもこっちのハンバーガーも美味しいと思います。

パンもついててお得!」


 コウタはガッカリ顔の客に謝罪しつつも、ハンバーガーも美味しいとアピールをした。


「じゃあそれ一つ」

「毎度!」


 しばらく心配で見守っていたけど、そろそろ行こう。


「じゃあ私達は布屋に行って来るね」

「コータ君、頑張ってネ〜〜」


「ああ、行ってら」



 私と紗耶香ちゃんは布屋に行って10着分くらいの布地を購入して来た。

 値切り交渉もそこそこ上手くいった。


「ただいま! コウタ、一人で大丈夫だった!?」

「ただいま〜、乙〜〜」


 私は小走りで帰って来てコウタに状況を訊いた。


「お帰り! お客さんにはめちゃくちゃ美味いって言われたよ。

ハンバーガーを食う前はなんで串焼きやって無いのって何回か言われたけど」


「串に刺す作業がきつかったから……」

「それをバカ正直に言う訳にはいかないから、毎回同じで飽きられ無いようにって言っておいた」


「ははは」


 根性無しで笑うしか無い。


「ここか、パンにすげー美味しい肉が挟まったもの売ってる店ってのは?」

「はい!」


 わ! 冒険者風の団体客が来た!

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