第18話 ミコちゃんだから

「だって、考えてもみて。子供の五歳差は結構、絶望的なんだよ。出会いが、のぞみちゃん小一、僕が小六で」

「ああ…。すぐ卒業ですものね。兄弟でも年の差あると、ほぼ親戚くらいの年月しか一緒に居られないし…」

 隣の席を見遣ると、ミコト先輩が嘆いている。

「本当は大学なんて行きたくなかった。のぞみちゃん、京都の中学に転校してきそうな勢いだったけど、家族が駄目だって。大学はいいけどって…」

「でしょうね」

 何で、この人たち、こんなに相思相愛なのか。

「まあ、僕らがおじいさんになったらどうでもいいんだろうけれど」

 ちらっと、こちらを窺う。

「たとえば、のぞみちゃんが二十歳で、僕が二十五歳で、一つ屋根の下に暮らしていたらどう思う?」

「えっ、つきあってるのかなあって」

 ぷいっと、そっぽを向く。

「だよね。いやさ、本当にカップルならそれもいいだろうよ。でも、つきあってないから!!」

 涙目。

「ええ~、う~ん、はあ…」

 まあ、そうか。そもそも小学生同士じゃなあ…。普通に、お兄ちゃんと弟か。

「まあ、でも、のぞみちゃんも高校生ですからね」

 頬を赤らめるミコトさん。

「いや…。いやいや…?」

「貞操の危機は、全員にあるのですよ」

 耳元で、囁く。上目遣い。

「これでも、のぞみちゃんの婚約者だからと思って、手を出さずにきたんだけど」

 小声。

「いや、思いっきり、キスしましたよね?」

 思い出して照れる。

「あれは、ミコちゃんだから」

「何言ってんだ、この人」

 ミコトさんは、狸寝入りした。


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