7.くそくそくそ、やっぱり金が欲しい。
朝食を終えて部屋に戻ると、目の前にホロウィンドウがポップアップした。
《自宅警備員がレベルアップしました》
《〈隠れ家〉のクラススキルを習得しました》
自宅警備員のレベルが七になった。
どうやら奇数レベルでクラススキルを習得していくようだ。
〈経験値4倍〉様々である。
さて早速、起動してみようか〈隠れ家〉とやらを。
《警告。〈隠れ家〉は壁に触れた状態でなければ使用できません》
ほほう、そうなのか?
では壁に手をついて、再び〈隠れ家〉を起動してみる。
すると扉が現れた。
おい、これ隣の部屋に影響ないだろうな?
……まあいい、とりあえず開けてみるか。
扉を開けると、宿の一室に似た部屋に出た。
ただしベッドすらない、何もない空間である。
大きさは宿の部屋より広いから、隣の部屋に繋がったわけじゃなさそうだ。
多分、亜空間とかそんな感じのどこにもない空間に部屋ができて、そこに隠れられるというスキルなのだろう。
……うん、使い道がないな。
宿から出ない俺に、もう一室増えたところでなあ。
そもそもお金が欲しいのだ、お金が。
〈隠れ家〉を解除して、ベッドに腰掛ける。
〈通信販売〉を起動して、ウィンドウショッピングと洒落込もう。
暇なので、このくらいしかやることが……ってああああああ!!!?
なんと『魔法の基礎』の在庫が消えている。
どうやら何者かが購入したらしい。
この〈通信販売〉のスキル、リバーシが売られていたことから考えて、このガエルドルフの街で実際に売られている物が販売リストに載っていると考えられる。
この街で金貨数枚もする『魔法の基礎』を購入できる人物は?
……恐らくリバーシを売り上げたタクミだろう。
くそくそくそ、やっぱり金が欲しい。
なんとかして金儲けの算段を付けないと、一ヶ月後の宿代すら危ういぞ。
〈新聞閲覧〉を起動する。
さて今日のトップニュースはなんだ?
殺人事件が起こったらしい。
凄くどうでもいいな。
俺には関係ない……いや、待て。
「昨日の夕刻、ガエルドルフのある宿で旅商人の一家が惨殺された。旅の間の護衛は仕事を終えて、冒険者ギルドに戻っていたところを狙われたと衛兵は考えている。旅商人の一家の宿の部屋からは現金および商品がゴッソリと盗まれており、犯人は〈アイテムボックス〉のスキルを持っていると考えられている。最近、〈アイテムボックス〉のスキルを所持している旅人が各地に増えており、衛兵は関連性を調べている」
犯人は地球人か、これ?
新聞には肝心の犯人については書かれていない。
とはいえ、犯人について書かれていたとしても、それをどうやって知ったのか説明できない以上、衛兵に通報できないし意味はないのだが。
しかし他の地球人の動向を知ることのできる〈新聞閲覧〉はなかなかに役立っている。
一面には他にも記事がある。
「昨日、新人冒険者エミコがゴブリンエリートを討伐した。ゴブリンエリートの強さは銅ランクパーティと互角程度の実力があり、エミコの強さは銀ランクに近いという噂が冒険者ギルドに流れた。エミコが鉄ランクから銅ランクに昇格するのは近いかもしれない」
エミコ、強いなあ。
写真が載っているので顔も分かる。
割りと可愛い。
経済面ではタクミのリバーシが完売したことを知らせる記事が載っていた。
他にめぼしい記事はないかな、と目を皿にして新聞を読んでいて見つけてしまった。
お悔やみ欄に、訃報が出ている。
「カオル(
おいおい。
コイツ、地球人だよな?
死んだってマジか。
…………あれだな、俺は無理して外に出ない方がいいのかもしれないな。
◆
《名前 コウセイ 種族
クラス 自宅警備員 レベル 7
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈聞き耳〉〈通信販売〉〈新聞閲覧〉
〈隠れ家〉〈アイテムボックス〉〈経験値4倍〉》
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