第7話 蛍火
蛍火の 湧き上がる田の 水鏡
瞬く間に 命は燃ゆる
毎年、梅雨明け間近のこの季節になると近所の田んぼに蛍が舞う。
ふらりと夜の散歩に出てみた。月のない夜。真っ暗な道を街頭を頼りに歩く。
虫の囁き、夜露に濡れた夏草の香り。毎年変わらない風景である。
しかし田んぼは変わっていた。今年から稲は育てないのだと、持ち主の方は言っていた。でも、蛍のために水だけは張っておくのだと。稲の無い田んぼ。風がない今夜はまるで鏡のよう。
そこに、無数の蛍火が映り込む。糸を引いて絡みあう、恋人を呼ぶ光の瞬きが、水面から湧き上がる。遠く、近く。それは見事な、今までにみたことのない数である。
頼りなく、ふぅっと現れては消える蛍火。
そうして1回、2回と、瞬く間にも、彼らの短い命は終わりに向かって燃えているのだった。
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