第24話 二人は涎を垂らす

 いくら100万円を投げたとはいえ、この内容は流石にいけない気がする。


 100万人を超える人たちが見ているんだ。


 中には幼稚園児や小学生らもいることだろう。

 

 子を孕むとか、奴隷とかNGに決まっている。


「えっと、名無しYさんと名無しNさん、スパチャ本当にありがとうございます!でも、みんなが見ているので、表現には気をつけてくれると助かります!」


 相手は100万円をというとんでもない額を投げてくれた人たちだ。


 不愉快に感じないようにオブラートに包んで言わないと、これからスパチャを投げてくれない可能性がある。


 俺には高砂さんからの借りがあるんだ。


 ちょっと癖のある視聴者かもしれないけれど、それを丸く収めてこそプロの配信者だ。


 理恵、お兄ちゃん頑張るぞ。


 友梨姉、奈々、見てみろよ。


 俺、立派な配信者になってみせるぜ!


 お、意気込んでいると、早速名無しさんたちがまたスパチャを投げて来た。


『名無しYさんが150万円を投げました』

『名無しNさんが150万円を投げました』


ああ……


 なんていう額だ。


 二人合わせて500万円じゃないか。


 口座に振り込まれるときの手数料を除くとしても、それなりの額が入ってくる。


『名無しNさんからのメッセージ:じゃ、直接言うのはいいんですね?』

『名無しYさんからのメッセージ:でんこ様のいうことなら、なんでも聞きます』


「っ!」


 鳥肌がたった。


 直接いうということは、待ち伏せでもするつもりだろうか。


 ていうか、なんでも聞くって……


 だんだん怖くなって来た。


 もしかして、友梨姉と奈々も同じ恐怖を感じながら配信活動をして来たんじゃなかろうか。


 だから、二人は守られることを望んでいたのだろう。


『投げ銭の額すげー……』

『次元が違う』

『会社の社長?』

『話し方が完全に女性のアレだけど、でんこ様早速大ピンチ!?』

『いや、男である可能性もあるぞ』

『でんこ様のお尻が危ない!』


 いや……なにを言ってるんだ。

 

 俺の尻が危ないなんて、そんな怖いこと言うなよ!

 

 俺は口を開く。


「名無しY様、名無しN様、本当に……本当にありがとうございます!これからも応援よろしくお願いします!」


 正直に言って冷や汗が出ている。


 だけどなんとか笑顔で誤魔化すしかない。

 

 これを乗り切って、みんなに挨拶をしてから終わらせよう。


 と、心の中で計画を立てていたら、


 また投げて来た。


『名無しYさんが200万円を投げました』

『名無しNさんが200万円を投げました』


「ああ……」


 俺は開いた口が塞がらなかった。


『名無しNさんからのメッセージ:ずっとあなたを見てます』

『名無しYさんからのメッセージ:ずっとあなたを見てます』


「あははは……ありがとうございます。ほほほほ、本当に嬉しいです……」


 驚愕したのは俺だけじゃないようで、100万を超える視聴者も二人の羽振りの良さにショックを受けたような反応だ。


「そ、それじゃ、これからもSSランクのモンスターを倒すためのライブ、いっぱいやるので。今日はこの辺で終わりたいと思います!またお会いしましょう!」


 俺はライブを切った。


「なんなんだこの気持ち」


 物凄いプレッシャーがのしかかった気分だ。


 ミノタウロスを倒した時と比べて数十倍、いや、数百倍は疲れた気分だ。


 この二人がどれだけ強い人なのかは知らないが、こんなに俺を精神的に追い込むことができるなんて、すごい人たちだ。


「家に帰ろっか。いっぱい稼いだし、美味しいものをいっぱ買おう」


 お金を稼ぐのは決して簡単なことではない。




美人姉妹side


躑躅家


 タンクトップと短いパンツという部屋着姿の二人はリビングのソファーに横になって恍惚とした表情をしている。


「ねえ、お姉ちゃん」

「なに?」

「私、ホストに貢ぐ女の子の気持ち、初めて知ったかも」


 妹ははちきれんばかりの自分の胸をぎゅっと鷲掴みにして、熱い息を吐く。


 そんな妹の姿を青い目で捉えながら、妖艶な顔をする友梨。


「奈々、祐介くんはホストじゃないわよ。ホストはいろんな女の子に貢いでもらっているけど、祐介くんの場合はね……」


 友梨は自分の胸にそっと両手をのせる。


 横になっているにもかかわらず、凶暴な爆乳は自分の存在を主張するよう健在だ。


「私たちで足りるから。


 自分の姉の妖艶な姿を見た奈々は、自分のお腹をこすりながら、糸を引いている唇を動かす。


「そうね。これからは今まで以上に


 頬をピンク色に染めた奈々はお腹を擦っている自分お手により一層力を入れる。


 友梨は自分の手を自分の太ももの内側に乗せて


「ふふ。パーティー、とても楽しみだわ」


 潤った目で明後日の方向へ視線を向けた。






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