【悲報】妹を養うために努力する中卒底辺配信者の俺、SSランクのダンジョンで美人姉妹を助けたら、とんでもないヤンデレインフルエンサーだった

なるとし

第1話 俺は底辺配信者

SSランクのダンジョンにて


「グアアアアアアアア!!!」


 最上級ランクであるSSランクのモンスター・キングワイルドボアが地面を引っ掻きながら俺を狙っている。


 俺の頭の上にはスマホが浮かんでおり、このキングワイルドボアが織りなす物々しい光景を写しているところだ。


 やつは涎を垂らしながら獰猛さを露わにし、俺の方へ一瞬の迷いもなく走ってくる。


 やつの牙は赤く光り始めた。


 おそらく一撃必殺を使ったのだろう。


 日本国内に数名しかないSランクの探索者でも、あれに当たれた即死だ。


 だが、俺は……

 

 目を大きく開けてキングワイルドボアのツノを軽く避ける。


「ぐ、ぐえ?」


 15メートルは悠に超えるすばしこい巨体は175センチほどの身長の持つ俺にダメージを与えることはできない。


 恐らく普通の冒険者なら、避けるどころか、この巨体を前にパニックを引き起こすのだろう。


 俺はすかさず、唱える。


「ミスリルの槍」


 と唱えると、上から長く巨大なミスリル製の槍が現れた。


 そして俺が目で合図すると、


 ミスリルの槍はものすごいスピードで落ちていき、キングワイルドボアの体に突き刺さる。


「グエエエエエエ!!!」


 大きな体はあっけなく倒れ砂埃を上げる。

 

 だが、やつの息の根は完全に断たれた訳ではなくまだもがいている。


 さすがキングワイルドボア。


 急所を狙っても動くなんてものすごい生命力だ。


 だけど、止めを刺そう。


 そう思った俺は目を瞑って唱える。


「雷よ来れ……」


 そして俺はキングワイルドボアの方を指差すと、上から凄まじい威力の雷が落ちてきた。


 キングワイルドボアの動きは完全に止まってしまう。


「はあ……よく撮れたかな」


 そう満足気に言って俺が浮遊スキルで浮かせたスマホを手に取り画面を確認する。


『視聴者:1人』


「おお、一人入ってきた!」


 俺は嬉しかった。


「えっと……初めまして!ゆうちゃんねるのゆうです!えっとよろしくお願いします!今はSSランクのキングワイルドボアを倒しましてですね!!」

 

 と興奮しながら懇切丁寧に言うと、すぐさまコメントが書かれる。


『CG乙w』


「なっ!違う!違います!決してCGとかじゃありません!これはリアルだから!」


 俺は猛抗議するも時すでに遅し。


 視聴者は俺のライブ配信から出て行ってしまった。


「クッソ……またかよ」


 としゅんと落ち込みながら、俺はキングワイルドボアのところへ行き、ミスリルの小さなナイフを召喚し、肉を切り取る。


 そろそろ妹が学校から帰ってくる頃合いだ。


 早くこのキングワイルドボアを使って妹が大好きな豚の生姜焼きを作ってやろうではないか。


 俺の名前は岡田裕介。


 17歳。


 いわゆる中卒底辺配信者だ。


 なぜ中学校しか卒業できなかったのかというと……


『お兄ちゃん……もうお父さんとお母さん帰ってこないの?』

『理恵ちゃん……』

『お兄ちゃん……裕介お兄ちゃん!!』

『理恵ちゃん!』

『ヤダヤダヤダ!!私を……私たちを置いていかないで!あああああ!!』


 俺が小学校を卒業した時に両親が事故で亡くなった。


 葬式の時、俺の妹である理恵は両親の遺影を見ながら俺に抱きついて切なく泣いていた。


 俺は涙を必死に堪えて理恵を抱きしめてあげた。


 とても小さな理恵のか細い体からは震えが伝わってきて、俺の心を締め付けてきた。

 

 なので、俺は決心したのだ。


 俺が死んだ両親に代わって理恵を立派に育てると。

 

 だけど道のりは険しいばかりだった。


 両親の遺産を後見人という形で親族のおじさんが全部持って行って、俺たちに全くお金をくれなかった。


 俺がお金の件で電話をしても、無視するか悪口を言って誤魔化される。


 おじさんと電話する時、いつもパチンコ屋独特のピコピコ音が聞こえてきた。

 

 なので、俺はボロボロな小さなアパートに引越して、中学校には登録だけしといて金を稼ごうとした。


 だけど、当時小学校を卒業したばかりの俺は幼すぎたため、雇ってくれるところは一ヶ所もなかった。


 だから必要に応じてスーパーマーケットに入って物を盗んだりしながら、それを家に持ってきて妹と共に空腹を満たした。


『理恵ちゃん!美味しい弁当持ってきたよ!』

『わあああ!お兄ちゃん大好き!』


 妹の笑い顔のためなら、俺はなんだってできる。


 どんな汚れ仕事でも。


 だけど、


 いなくなった家族を蘇らせることはできない。


 理恵は寝相が悪い方で、いつも俺を抱きしめながら『家族……ほしい。お兄ちゃんと私に幸せをくれる家族……欲しい』と口癖のように言ってくる度に、俺の心は張り裂けそうに痛かった。


 時間が経った。


 結局、俺はスリがバレてしまい、大人たちにこっぴどく叱られてしまった。


 だけど、俺の事情を説明すると、大人たちは俺を責めることをせず、スーパーマーケットの職員と社長とお客さんたちは俺と妹が住んでいるところの家賃を肩代わりしてくれた。


 俺は涙を流した。


 悪いことをしたのに、助けられたんだ。


 もう二度と悪いことをしないと誓って、俺は食材を確保するべくダンジョンにやってきた。


 最初はFランクのダンジョンから。


 幸いなことに、俺には探索者として才能があるらしく、能力に目醒めて1日にしてFランクを攻略することができた。


 だけど、Fランクのダンジョンで獲れる食材は非常に不味かった。

 

 スライムとかゴブリンの肉を食べた時は、俺と妹は二日間ゲロを吐いた。


 ネットで調べたけど、上位ランクのダンジョンに行くに連れて、そこで獲れるモンスター肉と草などは美味しくなるという。

 

 ダンジョンで採れたものは全部自分のものになるから貧乏である俺からしてみればうってつけだ。


 だから俺は妹に美味しい物を食わせるべく、死に物狂いで頑張った。


 近所に住む方々のお使いをしながらお小遣いをもらいつつ、俺は暇さえあればダンジョンへ行ってモンスターを狩りながら強くなることだけを考えた。


 狩りをしながら俺はに目醒めることができ、さまざまなスキルを覚えることができた。


 気がついたら俺は16歳でAランクのダンジョンを攻略できる力を手に入れることができた。


 なので、俺は強くなった力で上位モンスターを倒し、アイテムをダンジョン協会に売ってみたらどうかなと思い、ダンジョン協会へ赴いたことがある。


 そこで、


『無能力者がこんな高価なもの一体どこに手に入れたんだあああ!!!』

『い、いや!俺が倒したモンスターから取ってきたものなんですよ!』

『そんな嘘が通じるわけないだろ!Aランクのモンスターを未成年者のお前が一人で倒す?ふざけんな!今すぐ警察を呼んでくるから、待っていろ!ったく最近多いんだよな。アイテムを盗んで、それを売ろうとするクソガキどもが』

『し、失礼します!』

『お、おい!待て!!このクソガキ!』


 俺は全力で逃げ込んだ。


 そう。


 中卒の俺は一応無能力者ということになっている。


 探索者といて認められるためには、高校へ行く必要があるのだ。


 中学生までは能力やスキルではなく、数学や英語といった基礎学問を学ぶのだが、高校では無能力者と能力者で行ける学校に違いが出る。


 俺はそのどちらかにも属さない落ちぶれた人だ。

 

 そりゃ怪しまれて当然か。


 なので、俺はもうダンジョン協会に行くことはなかった。


 俺は続けて美味しい食材のためにひたすら頑張った。


 結果、俺は15歳でSSランクのモンスターを倒せるようになり、もっとを操ることができるようになった。

 

 最近は配信が流行っているらしく、俺も時代の流れに乗っかって花凛のための食材を確保しつつ副業って感じで配信を始めたのだが、この有様だ。


 やらせだの、CGだのという野次を飛ばす始末。


 チャンネル登録者数は一人(妹)だけだ。


 DランクとかEランクを攻略する配信動画なんか、綺麗な女の子が登場すれば再生回数は数十万も行くのにな。


 まあ、顔出しじゃなくてしかも男の俺なら人気でなくて当然か。


「はあ……」


 深々とため息をついて、俺は入り口目指して歩み始める。


 いつもはスキルを使ってあっという間に入り口の方へ行くけど、今はゆっくり歩きたい気分だ。


「今日は入り口に行くまで配信続けるか。まあ、どうせ誰も見てくれるはずがないんだけどな」

 

 と言って、俺は浮遊スキルでスマホを頭の上に浮かせて歩む。


 薄暗い中、魔素をいっぱい含んだ光の塊がこのダンジョンを密かに照らす。


 おそらくこの光景は俺しかみれないのだろう。


 今まで、ここで人を見た記憶はない。


 だけど、重い現実が俺の心にのしかかる。


「妹の学費、稼がないとな。妹が入った学校、めっちゃ名門だから学費えぐいよな……バイト増やすしかないのか……」


 と呟いていると、


 モンスターと人の声が聞こえてきた。


「ん?」


 俺は声がする方へ走ってゆく。


 そこには、


「ムオオオオオオオ!!!!!!」


 SSランクのモンスターの中でも上位種に属するミノタウロスが暴れながら、人たちを攻撃しようとしている。


 私服姿の男子二人、制服姿の女子二人。


 女子二人が着ている制服は、俺の妹が通っている学校のものと同じだ。


 男のうち一人は金髪の爽やかイケメンっぽい感じで、もう一人は太っているオタクって感じだ。


 爽やか金髪イケメンは、どこかで見覚えがあるけど……

 

 男二人は横になって血を流すとても綺麗な女の子の上に覆いかぶさるようにして女の子らの服を脱がそうとしている。


「もうすぐ僕の防御幕はミノタウロスに破壊される!どうせ僕たちは死ぬんだ!うへへへ!絶世の美人姉妹と言われる二人とヤれるなんて……最高オオオオオオオ!!!死んでも心残りないほど犯してやるぞ。まず姉の友梨ちゃんからね。やば、胸デカすぎ……」

「アニキ!俺、まじ死んでもいいっす!ミノタウロスの攻撃を受けたこの二人はもう抵抗できないはずですから!!!うっひひひひ!!単なるカメラマンの俺がこの子らと……妹の奈々ちゃんのおっぱいも姉に負けず劣らずだね!うっひひひ!!」


 男二人はどうみても、キチガイのような顔だ。


 死が迫っていることを自覚して正常な判断ができなくなったのだろう。


 男二人は女の子らの上着を脱がせて、女の子二人の胸を揉み始める。


「やっぱり男はみんなクズだわ!嘘しかつかない卑怯者!やることしか考えてない悪魔!!!いっそのこと舌を噛んで死ぬわ!」


 姉と思しき少女は涙を流しながら叫ぶ。


「お父様……お父様……私たちを助けてください」


 デブのカメラマンに襲われている妹は目を瞑って祈るように言っている。


 俺は動いた。

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