49話
おとし子とはなんぞや。
次元の穴とはなんぞや。
そんな研究は密かにされている、されていた。
けれど、結局分からずじまいのスピリチュアル。
人間には到底理解出来ない理外の理。
大体の機関がそう結論付ける、結論付けた。
だってほんとに、答えなんて今の人間にはだせないんだもの。
おとし子ってなんなの?って。
もしかしたら杖化け物なら知ってるんじゃないかって、思ったのだ。
けれどその時のウトゥの反応から翔颯は二度と聞かないと決めた。
だってこの世の終わりのような顔を、あの、ウトゥが浮かべたんだもの。
杖化け物に、ウトゥにそんな顔させてしまった。
それが翔颯には重要だった。
ショックだった。
傷付けたくないのだウトゥを。
決して傷付けてこないウトゥを。
だから何か言おうとする口にキスをいっぱいして、何も言わなくていいと訴えた。
ウトゥの、話さなくてもよいのかという安堵の息に、翔颯は杖化け物でも手の施しようがない現象なんだって、理解した。
もしも杖化け物が原因だとしたら、ウトゥの反応は真摯に丁寧に教えてくれたはずだ。
そして翔颯に心より謝罪してくれただろう。
否、翔颯がおとし子だと分かった瞬間、何か言ってくれただろう。
ウトゥはそういう存在だ。
優しい存在だ。
だから、翔颯はもう聞かない訊ねない、ううん、どーでもい。
大事なのはウトゥとの時間だったから。
次元の穴を通過した影響で、翔颯の虹彩にはほんの少し虹色が混ざっていた。
明度低めな虹色だ。
翔颯はそんな自分の目が好きじゃなかった。
普通のひとと違う証拠だったから。
おとし子なんだよって、宣伝しているものだから。
でもウトゥが可愛い言って瞼にキスをしてくれるから。
綺麗な色合いだって褒めて眦にキスしてくれるから。
其の瞳此方だけ見よと、言ってくれたから。
翔颯は虹色の虹彩がたちまち好きになってしまった。
「なぁ」
翔颯が声を掛けると、ウトゥの金の双眸がついっと動く。
金色に褐色に、艶やか。
はぁきれーだなー、と翔颯はウトゥに擦り寄った。
そんな仕草に目を細めたる杖化け物に、翔颯は「なぁなぁ」ご飯欲しい猫的な擦り寄りで答えを求める。
だからウトゥが翔颯の顎の下をすりすり掻く。
本人は身体をごんごんぶつけているつもりだった。
なのに顎の下いつも掻かれ謎、だったが深くは考えない。
翔颯はウトゥが抱き好きだから。
今さっきもそれを確かめ合っていた。
激しく絡み合っていた。
だから、翔颯とウトゥの体にはお互いが付け合った痕が真っ赤に咲いている。
消えない内に愛し合うから、ふたりの体はいつまでも赤が咲き乱れていた。
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