40話
でもでもだって。
言わない、訳には、いかない。
だってウトゥの手がズボンに触れてる。
それは番う為だから。
そして約束したし、自分だってしたいし。
だけど、でも。
ええいままよ。
「あのなー…うとぅ…」
金の双眸は相も変わらず優しいから、僅かに勇気が湧いた。
「…如何した翔颯」
その視線から不安を感じ取ったのか、ウトゥはズボンから手を離し翔颯の頭を優しく撫でてくれた。
ちゃんと話せばちゃんと待ってくれる。
そして優しくしてくれる。
それがわかった翔颯は、長く息を吐き出し頑なに待ってって言った理由を口にした。
「お、おれ、せーつー、して、ねぇの…」
翔颯は本当に、本当に恥ずかしくって顔を真っ赤にしながら、自分の身体の異常を口にした。
少なくとも翔颯は異常だと思ってた。
何故か精通してなくて、その気配がなくて、この歳にもなってまだとか、異常だと。
翔颯は自分がおとし子だからそうなのかも、とさえ思っていた。
しかしウトゥは言われ、そうだろうな、と思っていた。
だから優しく翔颯の頬のキスをした。
「そうなのか、気にする事は無い」
責めない咎めない口調に翔颯の心が軽くなる。
だって誰にも相談出来なかったんだもん。
施設の職員には言えなかったんだもん。
「け、とか、はえ、てなくて」
さっき見たウトゥの下半身まわりと自分が全然違くて本当に違くて、いざってなったら不安で恥ずかしくて。
だからみられるのが、いやだった。
そして、子供じゃないか、と。
あきらめられたら。
あきれられたら。
いやだった。
「翔颯はまだ成長期中、故にこれから生える、心配無いよ」
ウトゥはそんな不安気な翔颯の頭を優しく撫で続ける。
信頼してるひとから心配ないよってはじめて言われた翔颯は、涙目になってしまう。
「あのね、さわっても、へんかも…おれの、へんかも」
以前触ってみた時、どうとも感じなかった。
普通は感じるらしいのに、何にも思わなかった。
それ以降怖くて不安で意識の外側に置いていた。
その弊害が今ここに。
「…見てもよいか?」
ウトゥが優しく問うてくる。
同意なくば何もしない、という風にも聞こえた。
翔颯はもじもじ、覆い被さる褐色の肌をチラ見しちゃう。
本当に見ちゃいけない感じがする身体だ。
こんな身体のひとに見られるの、こわい。
でも、それじゃ何もはじまらない、から。
「…ん…いい、よ…」
翔颯は勇気を出した。
ウトゥならきっと大丈夫だ、って。
やめてって言ったらきっとやめてくれる。
ウトゥはそういうひとだって、知ってるから。
翔颯はズボン握っていた手を胸の前に置いた。
でも恥ずかしいから顔を背ける。
なんとなく、古い木の床、古びた絨毯が視界に収まる。
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